2017年5月3日水曜日

朝日新聞「憲法GHQ草案」を読んで:昭和天皇「いいじゃないか」で幣原総理は決断

朝日新聞2017.5.3 と法律学全集「憲法Ⅰ、Ⅱ」
5月3日の朝日新聞「憲法GHG草案 昭和天皇「いいじゃないか」、幣原首相「腹決めた」」を読んで、自民党が改憲理由に挙げている「押しつけられた憲法」「国民自ら制定する憲法の必要性」が適した理由であるとは思えない。

確かに現憲法が制定されてすぐに「外国製」「押しつけられた」自由を欠く憲法が成案されたと自主的に作り直そうとする動きはあったようだ(憲法Ⅰ 清宮四郎 法律全集3 有斐閣 昭和32年)が、自らの憲法制定を党是とする自民党は今も憲法改正を訴えている。

その清宮先生の法律書の中で新憲法について次のような記述がある。55年ほど前の学生時代に法律を勉強していたときは、そんなに気にしなかったが「押しつけ憲法」が話題になって読み返した。

それによると、ポツダム宣言受諾で日本は基本的人権、民主主義の復活、平和的政府の樹立が喫緊の課題になった。外来的要因だ。

そこで連合国の指令でマッカーサーは10月11日幣原内閣総理大臣との会談で口頭にて憲法変革指令を受けたという。文書での指令かと思ったら簡単に作ってみろと言われたようなものだ。

内的問題としても他国との要求とは別に自主的立場から過去の行為を反省し再建を考えたとき自ずと憲法改変はわき出す問題だという

我が国では2系統で調査されたが、その1つである政府調査で松本大臣を主に憲法問題調査委員会が設置され昭和21年2月に草案が出来、連合国へ示したがマッカーサーは不適と判断し連合国が草案作成に着手、日本政府に提示した。マッカーサー草案という。

このマッカーサー草案に若干の修正を加えて憲法改正草案要綱となった。その後は旧国会を解散し新しい国会で審議し正式に制定になり今に到っている。

連合国側に作られたと言う事でマイナス面を強調する意見もあるが、民主主義、基本的人権の尊重、平和主義はプラス面としてしっかり認識すべきであろう。

清宮先生は、再検討を加えるのは良いが重点は制定の経緯ばかりでなく、内容において考えるべきだと重要な指摘をされている(前書)。

ところが朝日新聞でその制定時の幣原総理の言動が故宮沢俊義・東大教授のノートにメモられていたのだ。

それによると、幣原首相が宮沢氏ら貴族院特別委員会のメンバーを官邸に呼び当時の天皇とのやり取りを内輪話として聞かされ、宮沢教授がノートに記録したという。昭和天皇に会って憲法草案をお目にかけたとき、天皇は「これで良いじゃないか」と仰せられ、この一言で幣原総理は「これで行こうと腹を決めた」というのだ。

又、何時も問題になる憲法9条の戦争放棄も幣原総理がマッカーサーに直接願い出たのだ。終戦直後で日本の世界での立ち位置は戦争放棄しかないと考えての提案だったようだ。日本の将来を考えての選択だったのだ。

当時幣原総理は相当のプレッシャーを感じていたことだろう。天皇の一言が決心させた事は十分に想像がつく。

ところで私の使った憲法の専門書に「憲法Ⅱ 宮沢俊義 法律学全集 有斐閣」がある。もし宮沢先生が憲法Ⅰを書いていたら、この辺の事情を解説していたのではないか。

自民党の改憲論者の安易な主張に乗らず、一人一人が改憲の必要性を考えるべきである。憲法記念日に当たり憲法を読み返す余裕があってもいいと思うが。

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