日銀「金融緩和の強化について」 日銀HPより |
2ヶ月連続で追加緩和されるか注目されていた日銀の金融政策決定会合は、11兆円の追加緩和と低金利で無制限に貸し出す新たな制度創設を決定し30日発表した。市場は10~20兆円を予想していたため、その効果はなく、発表後の株価は87円安、為替は19銭円高の株安、円高に終わった。
新しい資金供給の枠組み創設はあったとしても、11兆円は中途半端な結果だった。私だって20兆円増やし100兆円の枠になると思っていたほどだ(2012.10.25 日銀追加緩和:100兆円枠でインパクトがあるか)。
日銀の「金融緩和の強化について」(2012.10.30)によると、長期国債、国庫短期証券の買い入れにそれぞれ5兆円、CP,社債、上場投資信託、不動産投資信託などの買い入れに1兆円が増額され、2013年12月末に完了するという。全員一致の決定だそうだ。
「資産買い入れなどの基金の規模」(金融緩和の強化について 別紙1)によると、10月20日現在の基金残高は62.7兆円(枠は12月末65兆円)になっており、日銀は様子見の考えもあったろうが、市場や政府の要望が大きかったために渋々の11兆円という中途半端な金額になったのだろうか。
また、新たな融資制度の創設と相まって20兆円になるだろうと考えたのだろうか。
案の定、30日の株価は87円36銭安の8841円98銭、為替は19銭円高の79円46~48銭の円高、株安だ。市場にインパクトはなかった。
デフレ脱却に向けた取り組み 日銀、政府共同文書 日銀HPより |
さらに今回は、日銀、政府が早期のデフレ脱却、持続的成長経路に復帰するために一体となって課題達成に最大限とりくむとして「デフレ脱却に向けた取り組みについて」という共同文書を発表した(金融緩和の強化について 別紙3)。
デフレ脱却に向けてのそれぞれの姿勢を示した。
それでも日銀は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくモノであると認識しており、政府が成長力強化の取り組みを強力に推進することを強く期待すると言う。
従来からの日銀の考えを繰り返したことになる。金融緩和に過大な期待は禁物で、規制緩和など政府の政策が欠かせないというモノだ。
一方政府は、デフレ脱却が確実になるまで日銀が強力な金融緩和を継続することを強く期待するという。
これも従来からの政府の主張の繰り返しだ。
そして「デフレ脱却など経済状況検討会議」を設置して経済状況、経済運営、物価動向について定期的に点検、報告するという。お互いに相手に責任をなすり合うのではなく、問題意識を共有し取り組むことはいいことだ。
結果をHPで公開してほしい。日銀も言っているように、金融政策運営の考え方を市場にわかりやすく説明することも大事だろう。
景気動向では、海外経済の減速傾向、欧州債務問題、輸出減少、内需の陰りで「景気は弱含み」と判断された。消費者物価指数もおおむねゼロ%となっている。
2014年4月に消費税引き上げが予定されているが、そのGO判断に景気条項がある。ここでデフレ脱却しなければ消費税増税も覚束ないという危機感から政府が動いたのだろう。
日銀の白川総裁は「14年度以降、遠からず1%に達する」との見通しを示してきたが、今回は「14年度には1%に着実に近づいていく」と表現を変えた。舵とりに自信がないのだ。
誰も今の経済状況では、景気は好転するとは思っていないだろう。責任の擦り合いをするよりもしっかり議論するべきだ。政府も日銀の緩和政策に頼るのではなく、規制緩和など強力に進めるべきだ。
国会でも通り一遍の質問、答弁ではなく関係者が集まって議論を戦わせ政策の妥当性を検討することも重要ではないのか。日銀と在野エコノミストの考え方の相違も気になるところだ。
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