読売新聞 2021.4.11
15mの津波で甚大な被害が出た東北3県の津波対策は、海抜20mの高台を造成し新しい街つくりの一方で、海岸線に5m以上のコンクリート製防潮堤を構築している。
海岸線は東北3県で1700kmになるが防潮堤の長さは震災前の300kmから390kmになったと言い、5m以上の防潮堤は約290kmにもなるという。事業費も総額で1.2兆円だ。
今までもその防潮堤の巨大さは問題になっていた。当初は14.5mの高さが必要と言われたらしく、地域によっては「14.5mの高さはここ」と表示された看板が立っていたのを新聞で見たことがある。
それが10mとか5mになっている。それで15mの津波に対応できるのか。
住民側でも不満が高まった。海岸線に高い防潮堤を建設すると生活に不便なのだ。今までは海岸で海を見て生活していた。今は高い塀の内側を散歩しているという。
地域によっては住民の意見を取り入れて14.5mから5.6mに変更になったところもある。5mの高さだって異様だ。
役所も困っているのではないか。住民の安全を考えると14.5mだが、それを低くしたことで安全が守れるのか。中途半端な計画に巨費を投じることをどう考えているのか。「避難道を確保するため」とは苦しいいいわけだ。
海底の泥を巻き込んだ津波の破壊力はすごい。震災前に頼りにされた防潮堤も根こそぎひっくり返っている。住民の要望で14mから5mに引き下げて良いのか。
又、防潮堤を構築してもその内側はどうなるのか。住民は高さ20mに造成されたところで住居を作っている。浸水被害地域は災害危険地域と指定されている。住居は建てられないのだろう。
しかも被災地域は過疎化地域なのだ。どんなに被災地を新しくしようと住民が戻ってこないのではどうしようもない。無駄な投資にならないか。
専門家も当初から指摘していた課題だ。「元の戻すより新しく前へ進める」大切さを訴える専門家もいる。将来の復興計画には重要な要素だ。
これらの東北地方の復興計画を検証し、今後発生するだろう首都直下地震、南海トラフ巨大地震、津波対策に活かすと言う。
大事な問題だ。南海トラフ巨大地震は3連動だと東海地方から九州まで広範囲に被害が及ぶ。地域によっては34mの津波が押し寄せると言うが、10mから20mの津波が押し寄せると言うのだ。
考えてみよう。日本の太平洋岸に高いコンクリート製の防潮堤が構築されることを考えると「ぞっと」しないか。幸いなことにそういう取り組みを行っている地域はない。
避難計画、避難道、避難場所の整備、34mが短時間に押し寄せる地域は海岸に高い避難構築物を整備している。
房総半島にドライブによく行く。最近は道路沿いに場所ごとに「津波到達高さ」の表示がされ、避難場所、避難経路が表示されている。所要時間も併記されているが、防潮堤は見当たらない。
南海トラフ地震では房総は8~9mの津波が想定されているのだ。一時、九十九里の「波乗りハイウェイ」が通行止めになっていた。理由を聞くと高潮などで海砂がハイウェイに入ってくるとスリップ事故などが起きるために道路のかさ上げをしたと言う。津波対策にもなるか。
館山近くの海岸では巨大地震で隆起した海岸線を一望できる場所がある。一度言ったことがあるが色分けされていないので良くはわからないが、それらしい景色は残っている。
館山では海岸沿いの道路わきに高いポールが立って、津波到達高さが見上げる箇所に表示されている。
防潮堤の建設までは行かないが、ソフト面で地震対策が進んでいるのだ。
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