ケインズの「一般理論」を理解しようと解説本、訳本を買って読んだが、合っているような、間違っているような理解に苦しむ面が多いが、その中でも「美人投票」だけは頭に残っている。
ケインズは資本市場での投機に関して揶揄した「美人投票」だが、投資ばかりでなく、政治の世界でもいえるのではないか。
ケインズは資本市場の投機性と不合理性に触れ、不合理になるたとえ話として「美人投票」をあげ「美人投票は、自分が美人と思う人に投票すると言うものではない。1位になると女性を当てた人に賞金が出る。だから賞金をもらうために自分が美人だと思う人ではなく、他人がどの女性に投票するかを憶測し、そこに投票しなくてはならない」と説く(超訳 ケインズ「一般理論」山形浩主訳・編集 東洋経済新報社2021.3)。
これは経済だけで言えることではなく、政治の世界でも言えそうだ。
朝日新聞の世論調査を見ても、政党支持の設問では自民党35%、立憲6%、国民1%だ。衆院選での投票先の設問でも自民40%、立憲14%、国民2%で、内閣支持率は支持40%、不支持39%で拮抗しているにもかかわらず圧倒的に自民党が優位だ。
でも広島の参院補選は自民候補が不利らしい。「美人投票」の考え方からすると、自分は自民党支持で自民候補に投票しようと思っているが、他の人は河井事件などを考えると野党候補の支持が多いだろう。そう考えると今回は野党候補支持だ。
結果は、他人の支持が多かった野党候補者に投票し、野党が一議席獲得したことにならないか。
先の東京都知事選はどうか。多数の候補者が立候補したが実質は自民の増田さんと小池さんの一騎打ちになった。増田さんは東京一極集中対策の「増田レポート」をまとめた人、「高齢者は地方へ行け」と言った。だとしたら東京都知事になって東京をどうしたいと言うのか。
一方小池さんは知名度は超抜群、自民党内では居場所がなくなり活躍の場所を東京都知事に求めた。自民党は推薦してくれなかったので無所属、いじめられたかわいそうな候補者を主張、自民党東京都連を「ブラックボックス」と批判した。
自民支持者の中にも他の人たちは小池さんを支持するだろうと考え小池さんに投票した有権者もいるのではないか。結果は当たった。しかしその後の小池都政を考えると正解だったかどうかは疑問だ。
最近の国政選挙は、他人も安倍支持、自民党支持だろうと考え自民党に投票し国会で自民党が多数の議席を獲得した。しかしその結果は、安倍、菅の民主政治の根幹を揺るがす政治を許す結果になった。
国政の分野では、他人が誰を支持するかなど考えずに、国政はどうあるべきかを考え自分の思った候補者を支持すべきだ。「他よりもマシ」という消極的理由での内閣支持では心もとない。
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