2013年5月2日木曜日

「アベノミクス」は国民にとって吉か凶か:その観点、時期で異なる評価

「アベノミクス」は国民にとって吉か凶か、その観点、時期で評価が異なり判断をますます難しくしていないか。今までとは違った経済政策で「日本経済を取り戻す」と、リフレ派に飛び付き、安倍総理の「大胆な金融緩和」と第2、第3の矢を、誰が言い出したか知らないが「アベノミクス」とはやし立てる。

ノーベル経済学賞受賞のクルーグマン教授も「経済学をよく知っているわけではないが、金融政策と財政政策を組み合わせたことは間違っていない」とアベノミクスを評価した。

確かに経済は人間の行動、「気分、雰囲気」で大きく変わる時もある。今、リフレ派は空気がガラッと変わった。何もしないほうがリスクが大きいと「何かをやるのは 今でしょう」と意識改革を求める。

確かに雰囲気は変わった。否、何かが変化しようとしている。

とりあえず市場が、期待感だけで反応し、円安、株高基調に大きく変わった。これを見てデフレ派も前段階は「アベノミクス」の効果を認め、リフレ派は狙い通りの結果と満足する。

日本経済活性化のプロセスというと、思い切った大胆な金融緩和で、デフレを脱すれば企業は低金利の資金を利用し設備投資がしやすくなり、個人は消費を増加させる。企業が活発になれば雇用も創出し、給料も上がり日本経済は好循環の経済に入ることになる。税収も上がり年金などの原資にも利することになる。

でも、その観点、時期で評価は異なってくる。

アベノミクスの効果が分かりにくい面もある。日銀の金融政策が、そのまま続いていたらどうなったか。

株価は、すでに世界的に株高の動きがあったという見方が強い。

企業業績が改善すると、給料、雇用にも好影響があることは確かだが、タイムラグがあり今年秋口~2年後だろうという。安倍総理は今回の春闘で経済団体に賃上げを要請した。一部企業はボーナスの満額回答で応じたが、春闘の賃上げ結果は平均で67円という。経営者は、未だ「先行き不透明」感が強いのだ。

大胆な金融緩和で市場には更に資金がだぶつくが、土地や株など金融商品に回れば、バブル経済の再来の危険があるが、給料増には結びつかないという見方が強い。アベノミクスが私たちの生活に吉となるのは、家計への好循環なのだ。

雇用面でも、先の党首討論で安倍総理は「40000人の雇用が創出した」と主張していた。そんなに早く効果が出たのかと疑問に思ったが、求人数が増えたことを言っていたのではないか。

円安で輸出企業の業績が上がっているという。でも数量ではなく円高→円安での円換算での結果だとすると心もとないが、これだってアベノミクスの効果だといえば、そうなるのだろう。

一方で、狙いとは逆の結果も出ている。国債不信で金利が上昇し、住宅ローンの金利も上がっているのだ(朝日新聞2013.5.1)。一時金利が乱高下し、「市場は壊れた」とまで言ったエコノミストがいたが、以前から指摘されていた副作用だ。

時期によっても経済指標の読み方で評価が違ってくる。

2月までは評価も芳しくなかったが、3月に入ってアベノミクスは好循環に入り、消費好調→生産拡大→雇用拡大が見られ、「実体経済へ波及し出した」というのだ(読売新聞2013.5.1)。

それによると、3月の家計調査で、消費支出が2月は26万8099円だったのが、3月は31万6166円で前年同月比5.2%増、3月の鉱工業生産指数は前月比0.2%たかい89.8で4ヶ月連続で改善しているという。

雇用の面では完全失業率は0.2ポイント改善し4.1%、有効求人倍数も0.86倍で08年以来の良い数値らしい。

円安の恩恵は輸出関連企業で業績を伸ばしているが、貿易統計によると数量は前年同月比で9.8%減という。円換算で伸びているのか。

確かなことは、円安で輸入品が高騰し食用油、小麦、ガソリンなどに値上がりが続き、家計への負担増が心配される。リフレ派は、「負担になるって、どのくらい負担になっているのか」、「日本全体の経済で考えればプラスだ」と豪語する。

でも、原油の値上がりでガソリンも値上げになるが、燃料費の値上がりは電気代、輸送費、最近問題が明らかになった漁業にも影響が大きい。

日銀が言う「2年で2%物価目標」となれば金利も上昇する。国債は暴落の危機だ。1%あがれば金融機関は2.6兆円の損失をこうむると国会で日銀が説明していたと記憶している。

財政面でも国債の利払いが11兆円になっているが、金利が上がれば国債費もあがり、予算編成も難しくなると危惧しているエコノミストもいる。

しかし、黒田日銀は2年で2%達成をコミットしたために、ムードを盛り上げようと物価上昇率を高めに修正し始めた。2年後には経済指標を捏造してでも2%を達成するのか。

また、消費税増税の経済へ与える影響を考えなければならない。景気回復期の増税は経済を失速させることは常識だ。麻生財務相もG20で消費税増税を国際公約したらしい。もともと財務省はどんなことがあっても増税はする気なのだ。

民主党政権時、安住財務相(当時)が、国会答弁で「今の経済環境でも増税はGOだ」と言ったことを覚えている。

経済は気分、期待感だけでも動く。新聞が「アベノミクス」を賞賛すれば、週刊誌は「アベノミクスはヤバイ」という。

今の日本経済を「期待だけで実体経済への波及効果なし」と見るか、「実体経済へ波及し始めた」と見るか。判断はそれぞれの観点で違ってくる。

でも、2年後に失望しないためにも、国会でしっかり審議し、好ましくない経済の動きには注視しなければならない。そのためにも野党の責任は重いのだ。


















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