2013年5月31日金曜日

市場にカネがダブついているのに何故、量的緩和を継続するのか

どう見たって市場にカネがダブついているのに何故、量的緩和を継続するのか。今方向転換すると市場は一気に円高、株安に転び「2年で2%物価目標」が達成不可能になり、責任問題が発生するためか。

とにかく混沌とし、市場は戦々恐々となり、先行き不安なのだ。政府、日銀、一部のエコノミストは「調整局面にはいった」というが、100円台前半まで円安になった為替、15000円台半ばまで上がった株価をどう調整しようとしているのか。もっと円安、株高に進む途中の様子見なのか、異次元の金融緩和前の状態に戻ろうとしているのか。

このような経済状況下であっても政府は6月にまとめる成長戦略、第3の矢に期待を持たせるし、「アベノミクス」を評価する国際会議では、ノーベル経済学賞受賞者が3本の矢を評価する。もちろん政府が招いたのだろうから、ほめてくれるのは当たり前だ。

市場にカネがダブついているのは確からしい。日銀当座預金残高も2013年3月29日時点で58兆1300億円にまで膨れ上がった。これでは日銀が国債を買い上げても市場に出るカネは増えない。物価も押し上げないのだ。

おまけに日銀は0.1%の金利を付けている。これではこのまま置いておいたほうが銀行としては得なのだろう。定期預金の利息が0.025%を考えると、異常な高さで日銀と市中銀行、金融機関はもたれないの関係だ。

投資先だって見つからないので、大都市圏は地価が高騰しているという.。株高で儲かったカネが不動産投資に回っているのだそうだ。そのうちに販売価格が上がり、金利も上がるので購買意識はおちることになる。

株価の大変動にはこまったものだ。1週間で2000円も下落している。22日に15627円だったのが30日は13589円に下落した。「日本株を買え」から逆転し流出が始まった。海外ファンドだけ大儲けして逃げ切られるのか。

とにかく量的緩和で市場に流そうとするカネの使い先を実体経済へ向け成長分野に投資しようというのだが、その成長分野も第3の矢の成長戦略にかかっている。

円安を機に国内経済への投資(内需拡大)で賃上げ、雇用の創出に期待したいが、円安だけでは海外から国内に呼び戻すことは難しいらしい。製造業は中国、韓国から東南アジアへ展開している。

1兆円以上の営業利益を記録したトヨタだって、設備投資は抑えて、生産台数を確保することにより雇用を維持するという。

黒田総裁の異次元の金融緩和以降、予期せぬ金利の上昇など予想外の展開(日銀だけ?)もみられるが黒田総裁は「長期金利のコントロールはできない」と弱音を吐いたり、国債の信認を維持するために政府に財政健全化を要求している。

財政健全化は白川前総裁も常に政府に要求していたことだ。

財政健全化には、消費税増税が必須の状況で、国際会議に出席した経済学者も増税を含め税収増の必要性を説いている。

ところが、消費税増税を先延ばしする考えも出てきている。経済顧問の浜田内閣参与を始め確か石破幹事長も言っているようだ。消費税増税は景気回復の腰を折る危険があるのだ。

しかし、消費税増税を先送りすると、財政健全化は遠のき市場は一気に円高、株安に動く危険もあり政権は難しい判断を迫られることになる。

市場におカネがダブついているのに、なぜまだ量的緩和を継続するのか。黒田総裁は異次元の金融緩和、2年で2%物価目標を約束して総裁の座を射止めた。まだ就いて数カ月だから方針転換するのは無理だろうし、ここで量的緩和を引き締めると市場が一気に円安、株高から逆転するだろう。

このまま量的緩和を継続し、好ましくないインフレを招けば、どうしようもないことになってくる。

ポール・ボルカー元FRB議長が、大規模な量的緩和を進め、大量のおカネを市場に流しこんで、その影響でインフレが起きる可能性があるとし、中央銀行は「物価や通貨の安定に集中すべきだ」と警告している(朝日新聞2013.5.31)。

市場の動向が気になって、必要な手を打て難い状況になっているのではないか。2%物価目標まで不都合な事態が発生しないことを期待して、量的緩和を継続するのだろうか。




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