2014年5月23日金曜日

吉田調書:福島第一原発事故のあの緊迫した現場が明らかに

福島第一原発事故での一時退避、ドライベント、非常用復水器(IC)の問題が朝日新聞が入手した政府事故調・検証委員会の「吉田調書」で、当時のテレビニュースでのあの緊迫した状況が鮮明になってきた。問題は、この事故に鑑み「フィルター付きベント」の設置など新基準はできたものの、緊急事態に対する対応が不備なままで政府は原発の再稼働を目論んでいることだ。

朝日新聞・2014.5.20で作業員の原発撤退、2014.5.21でドライベント、2014.5.23で非常用復水器の検証記事が載った。

2014.5.20の記事によると、吉田所長の意思に反して作業員の90%に当たる650人が福島第二原発に撤退したという。問題はその中に部課長級で緊急時に所長を補佐し被害拡大に尽力しなければならない人間が含まれていたことだ。

そのため第一原発には吉田所長を含めてたった69人が詰めており、命令違反と事故対策が不十分だった可能性が出てくるのだ。

当時は、2号機で湯気状のものがで、4号機は火災で放射線量は正門のところで最高値を記録したというのだ。

テレビニュースでは、清水社長が全員撤退を官邸に伺いを立てたと言っていたが、菅総理(当時)は東電本社に乗り込んで「撤退すれば東電はつぶれる」と恫喝したというのだ。しかし、全員撤退でなく対応したがために被害の拡大を防ぎ、東電と情報を共有するために合同対策本部を設置した。いろいろ批判されているが菅総理の功績ではないか。

一方の東電は、全員撤退は言っていないと言っていたが、嘘であることが分かった。

2014.5.21では、圧力容器の圧力を下げるためにドライベントが検討されたという。これを実施するとヨウ素剤飲用基準の100ミリシーベルトをこえ250ミリシーベルトになることが予測された。

3号機の建屋爆発で圧力が下がり人為的ドライベントの必要はなくなったが、保安院はドライベントの情報統制をおこなった。緊急事態下で住民周知に気が回らなかったというのだ。

再稼働に向けて、自治体は住民避難計画を立てなければならないが未整備のところもあるようだ。

企業にも住民に対する「安全保護義務」があるが、情報統制、緊急事態下で住民周知まで気が回らなかった事は問題だ。

当時、菅総理が現場視察を急いだためにベント作業が遅れ重大事態になったのではないかと疑われたが、調査報告では否定された。

2014.5.23では、1号機の非常用復水器(IC)の検証が載っている。中央制御室の運転員がICの機能低下に気づきポンプで水を補給することを提案したが、吉田所長にICの理解がなかったために、気づくのがおくれてメルトダウンをきたしたという。

吉田所長は大いに反省していたようだが、緊急事態に一人で対応することなど不可能だ。部課長クラスがアドバイスすべきであったと思うが、ICの作動は20年で今回が初めてだったというし、訓練、検査も含めてICの作動を経験した者が所内にはいなかったことには驚くしかない。

全交流電源を失っても原子炉に水を注ぎ込むことは極めて重要な局面であり、教育も訓練もされていなかったことは東電の安全対策の不備をさらけ出したようなものだ。

緊急事態の訓練は定期的に行っているはずだが、実際には役立たない内容であったことになる。

当時のテレビニュースでメルトダウンの可能性が指摘されていた時、原子炉の専門家が全電源喪失でも一定の時間原子炉は自動的に冷却されるから安全だと発言していたのを思い出す。

設備はあっても使い方が理解されていなければ何にもならないのだが、今回は現場の運転員から指摘があったのだから自分は理解できていなくても安全サイドで提案を採用すべきではなかったのか。

後からはなんでも言えるが、緊急事態下でのトップの判断は大変だったのだ。

願わくは、この吉田調書を公開し、電力会社、自治体、地域住民が一体となった対策を講じなければ同じことがまた繰り返されるのが災害の特徴だ。

Webニュース(日刊ゲンダイ2014.5.23)によると安倍政権は吉田調書が漏れた犯人捜しをやっているというが、そんなことより再稼働するのであれば、この吉田調書を検証し、類似事故の防止に努めるべきではないのか。









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