2014年5月22日木曜日

大飯原発差し止め訴訟で原告勝訴:経済的自由より人格権が優位という論理

22都道府県の189人が大飯原発運転再開差し止めを求めていた訴訟で福井地裁は経済活動の自由より豊かな国土とそこに根を下ろし生活する国富を維持する人格権の方を優位に置くべきだと考え原告側勝訴の判決を言い渡した。

ご多分に漏れず地裁前には支持者が集まり、「差し止認める」「司法は生きていた」の幕に拍手を送っていた。その後の記者会見で原告側は「画期的」と喜ぶが、これは下級審での判断であり上級審に行くほど現実との整合性が計られる。

今、審査されている原子力規制委員会との関連も薄く、司法としての独自の判断を下したようだ。原発の再稼働を目論む安倍政権は規制委員会が安全を確認した原発から再稼働させる政府方針に変わりはないと官房長官がコメントした。

この判決の要旨を読んでみると、福島第一原発の想定外の巨大地震、巨大津波による外部電源喪失によりメルトダウンに至り想定外の甚大な原子力発電被害を鑑み、想定外の巨大地震、巨大津波でも現実的な危険とみなし絶対安全の「ゼロリスク」の姿勢を取っている。

しかし、これは今まで合理的措置を優先していた原子力行政に波紋を投げかけた。

今回の判決でも「地震の揺れ、想定が楽観的で安全技術や設備は脆弱」と基準地震動1260ガルを越える地震でシステムの崩壊、外部電源喪失による冷却不能になる使用済み核燃料プールの欠陥を上げている。

この基準地震動は、いつも問題になる課題で、関電は申請では700ガルだったが856ガルにあげストレステストで1.8倍の1260ガルでもOKとしたが、裁判所は1260ガルを越えるとメルトダウンを起こす巨大地震さえ現実的には危険と判断した。

そして、700ガルを下回る地震によっても外部電源喪失で冷却水をたたれる可能性があるという。

外部電源喪失は福島第一原発でも被害拡大を招いた根本原因だったことを考えると大飯原発の脆弱性は改善されていないのだろうか。兎に角、新基準との関係でどうなっているのか分からないので何とも言えない。

裁判では原子力発電を止めると重油の輸入が増え、貿易赤字は日本経済への影響も大きいことが議論されたのだろうが、裁判所は国富とは豊かな国土とそれに根付いた国民の生活だという。もっともな考えだ。

万一このあたりで原子力発電所の事故が起きれば、琵琶湖の水も放射能に汚染されるとなると、関西圏の水がめの危機だ。その被害は計り知れないのは容易に想像出来る。

今度、滋賀県知事選でも現知事の「卒原発」を継承する候補者が出るだろう。その陣営を勢いさせる判例にもなる。

上級審での結論が出るまでに時間がかかるが、政府の言う再稼働は目の先だ。関電はもっと真剣に過大と思われる想定にもきちんと答えていかなければならないのではないか。


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