安倍総理は何故、法人税率引き下げを急ぐのか。今の日本の実効税率は決して高くはなく、驚くことに大企業の税負担率は軽すぎるのだ。新聞報道によると、安倍総理は6日、訪問先のイタリアで「法人税実効税率を来年度着手する」と明言したそうだ。
経済財政諮問会議での議論を踏まえて「骨太の方針」に反映させると言うと、御用議員がそれをヨイショする。政治は貧乏人より「大企業、富裕層のためにある」という政治の典型例だ。
よく聞く話で、現行・実効税率は東京都の場合35%でアメリカの40.75%に次いで高くフランスの33.33%に並ぶが、イギリス24%、中国25%、韓国24.2%に比べれば高い。
ところが実際の法人税負担率から考えると大企業の税負担は驚く程低いのだ。
日刊ゲンダイ(2014.5.20)によると、復興特別法人税3%を含めた法人税負担率38%を納税している企業は少数で、大企業になるほど1桁が続出しているというのだ。住商、ソニー、セブン&アイは払ってすらいないというのだ。
大企業の税負担率を見ると、みずほFG、三菱UFJFGは0.2%、0.3%、ソフトバンク3.7%、史上最高の利益を出しているトヨタ自動車18.5%、新しい経団連会長になった出身の東レ20.2%、三井物産23.4%、武田薬品23.7%、日産自動車33.5%等が例として上げられている。13年3月期、12年度の有価証券から算出されている。
この背景には、欠損金(赤字)を次年度以降に繰り延べできる制度があり、5年間だったのが7年間に延長になった。銀行の負担額が低いのは巨額の不良債権処理が影響しているのだろう。
他に海外子会社の配当金が非課税、研究開発減税などが上げられている。
麻生さんが70%の企業が赤字で税を納めていないのに法人税を下げても効果は無いのではないかとよく言っているが、その通りだ。1%減税すると4700億円の税収減になる。25%まで落とすと4.7兆円の減収だ。
法人税を納めない赤字企業を減らす政策を考えないといけない。
ここに、経済再生と財政再建の両立に向けどうするかが問題になる。2020年度にプライマリーバランスを黒字にする方針が出ているが、今の見方では12兆円の赤字になるらしい。年間2兆円を法人税増分から補完する必要が出てくる。
平成26年度第7回経済財政諮問会議によると、2009年の1億円以上の企業での欠損法人は53.3%、法人税収は6.4兆円だが、2013年は1329企業のうち欠損企業は30%台、法人税収は11兆円とみられている。
民間議員は、安倍総理の言う「世界で最も活動しやすい国」を目指すには法人税改革を明確にすべきで中長期的には25%、取り敢えずは20%台へ持って行くべきだと提言している。
そして経済再生、財政再建を両立させるために、景気上昇で法人税負担率も上昇するので税収が基準を上回る場合は、その分を経済再生、財政健全化に振り分ける「税収中立」を採用すべきだというのだ。
法人税下げに関連し課税ベース確保も検討され、欠損企業への外形標準課税の強化、租税特別措置法などの税制の見直しが上げられているが、経団連は税制の見直しに反対している。
安倍総理は、法人税下げに前のめりであるが、今だって大企業の税負担率は低いのに何をしようとしているのか。新しい事業、設備投資、研究開発をしようと思えば出来るはずだが、その動きが鈍いのは日本市場での需要が見つからないからではないのか。
だから、更なる成長戦略が要求されるが、見直しでどういう案が出てくるのか。大きな期待は出来ない。
逆に経団連など経済界は、法人税下げを主張するが、それなりの効果を出してくれるのか。おねだりばかりの経済界であってはならない。
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