国民投票は直接民主主義の理想的な手法と思っていたが、今回の英・EU離脱か残留かを問う国民投票は、本当に民意を反映する内容だったのか。その後の英国の大混乱を見ると間接民主主義で代表が議会で議論を尽くす手法の方が優れているのではないか。
今回の結果は僅差での離脱決定だった。国民投票は過半数を取っていれば良いと言うことなのだが、本当にそれで良いのかという疑問を投げかける。
離脱派は「やってしまった」「自分の行動がこんな結果になるとは」と反省の弁が多い。スコットランドは英国離脱の住民投票をすると言うが無理なようだ。
一方、EUは離脱ドミノを警戒して「早く離脱手続きを」とせかすが、英国は取引を有利に進めるために先送りしようとする。
一番驚くのは、離脱を先導したジョンソンさんが党首選に立候補せず、残留派のメイさんが立候補し離脱の手続きを進めることになりそうだ。
英国って成熟した政治制度の国ではなかったのだ。政治制度を勉強に日本からも多くの政治家が英国を尋ねているがバカみたいだ。
日本でも識者が「直接民主主義である多数決による住民投票が本当に理想的な民主主義か」と疑問を投げかけている。
我が国でも廃棄物処理場建設、防音公舎のエアコン設置、大阪都構想の賛否、佐久市の総合文化会館建設の是非を問う住民投票が見られた。大阪都構想は投票率は50%を超えたが、1万票差で否決されたと言うから橋下さんも悔やむだろう。
「本当にそれでいいのか」という書評が目についた。
一つは、朝日新聞(2015.6.14)の読書欄で「多数決を疑う・・社会的選択理論とは何か(坂井薯 岩波新書)」の評論家武田さんの書評だ。
それによると、多数決は必ずしも多数の意見を反映していないとして、2000年の大統領選でゴアさんが負けた例、そして96条による憲法改正での国民投票を例に多数決の正当性を論述している。
そして多数決の賛成の条件は64%の支持が必要だという。
もう一つは、朝日新聞(2015.6.7)のGLOBE「住民投票 それは良薬なのか」で2010年に実施された佐久市の総合文化会館建設の是非を問う住民投票に触れている。
それによると、投票率55%、70%以上の反対で建設中止が決まった。64%を越えているので民意を反映しているとみるのか。
こう言う住民投票では「情報公開」が大事になる。
失敗した大阪都構想では51%で否決された。メデイアの調査では否決が多数だったので危機感を持った橋下さんが支持に向けて数々の裏工作をやったと報じられていた。それじゃまずいのではないか。
一方の佐久市の場合は役所も中立的な立場で情報公開し、賛否には触れず「投票所へ行こう」の運動を行ったという。
英国の話に帰ろう。
英国は十分な「情報公開」をやったのか。「こんなはずではなかった」、「政治家は噓をついた」では不十分すぎたのではないか。
我が国では憲法改正の国民投票の制度があるが、運用を間違ってはいけない。多数決のハードルを高くしなければ民意は反映されないのだ。
憲法改正の国民投票では75%の投票率、65%以上の支持で賛否を問うべきだ。
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