2013年1月27日日曜日

2%物価目標へ:日銀は、何故変節したのか


22日の決定会合で日銀は、賛成7vs反対2で2%目標設定へ舵切りし、共同声明となった。日銀は何故変節したのか。「組織防衛のため」との憶測も出来るが、25日の日本記者クラブでの日銀・白川総裁の講演「中央銀行の役割、使命、挑戦」で、その訳を知ることが出来た。

それによると、金融政策が経済活動に波及し、物価に波及するには相当な時間がかかる。そのためには金融面での不均衡を含めた様々なリスクを点検しながら、柔軟な政策運営が必要だ。

そう考えると「目標」と表現するのもわかりやすいし、日本銀行法の「物価の安定を図ることを通じて国民経済に健全な発展に資する」と言う理念に基づいて新たに設定された物価安定の目標のもとで、金融政策を運営していくというのだ。

要するに金融政策が物価に波及するには時間がかかりタイムラグがあるので、様々なリスクを検証しながら、物価安定、持続的成長の実現を目指すという。柔軟な物価目標であり、日本銀行の枠組みもそう理解できるということなのだ。

もどかしい言い訳をしなければならないところに日銀の苦悩がありありだ。

品質管理で言うと、目標は「2%物価上昇」、P→D→C→Aを繰り返しながら「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展」を実現することなのだ。ただ目指す過程で好ましくない事象(たとえば急激なインフレ傾向)が確認された時に、どう対応するのかがはっきりしていない。デフレからインフレに転換していくのにインフレ・ターゲットを設定するのは世界でも始めてのケースなのだ。


そして、2%目標達成の時期は明確になっていない。ここはチョット品質管理と違うところだが、海外の中央銀行も同様の考えだと正当化している。安倍総理の意向で「出来るだけ早く」と言うことなのだろう。

しかし、この目標達成は容易ではないことが分かる。

現在の日本経済は、潜在成長力が徐々に低下していることを指摘している。経済成長率=就業者数の伸び率+付加価値の伸び率と考えると、最近の状況は就業者数の伸びは-0.6%、付加価値の伸びは1.5%で成長率は0.9%で1%をきっているのだ。

白川総裁は、低成長が不可避とは言わないが、規制緩和などを積極的に進めて行かなければならないと従来の考えを繰り返している。日銀だけの努力ではどうしようもないことは誰だってわかる。

それにしても、どうして日銀はたたかれ続けるのか。金融政策の面で、非伝統的政策を駆使しているが、未だ経済の回復は不満足で失業率は高く、物価上昇はゼロ近辺だ。そこに日銀の責任があると思われているのだ。

そこで、白川総裁は中央銀行としての日銀の組織、仕事にも言及している。

メデイアの日銀に関する報道が金融政策に集中しているが、それは中央銀行としての仕事の一部であり、日々行っている銀行業務、銀行実務が大変重要なのだとメデイアに理解を求めている。

もう日銀たたきは止めたらどうか。

安倍総理は、今回の共同声明を画期的内容と評しているが、民主党・野田政権時の共同文書と内容は大して変わらないじゃないか。

これからは「痛み」を伴う財政改革、競争力強化などによる構造改革が必要になってくる。ここは政治の仕事だ。

そして経済界も「ああしてほしい」、「こうしてほしい」の「おねだり」ばかりでなく、企業の立場で何が出来るか提案すべきだ。

先の記者会見で「日銀、政治、企業がそれぞれの立場で努力する」ことの必要性を説いたのは日銀の白川総裁だ。

安倍総理、経済界はどう考えているのか。経済財政諮問会議でも、もっと核心に触れた議論をやって欲しい。

国民に日本経済再生の道筋を示すのは安倍総理の仕事だ。日銀のせいにしてはならない。

[後記]
28日の安倍総理は所信表明演説で「2%物価目標達成の責任は日銀にある」と述べたという。

ちょっとおかしい。

日銀の当初の1%目処を拒否して、2%目標を強制しながら、その達成責任は日銀にあるとはどういう論理か。

こうすれば、こういう筋道で2%目標が達成できるということを説明することが、今の安倍総理に必要ではないか。 

自らの責任を横に置いて「強い経済を取り戻す」では、民主党政権と変わらない。参院選など戦えないのでは。

地に落ちたとはいっても、民主党の代表は経済評論家だ。国会での審議に期待したい。
                             (2013.1.28)

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