2013年1月6日日曜日

物価上昇率2%目標:安倍総理は設定要求、日銀は従来の枠組み?


物価上昇率2%の目標設定検討を安倍総理は要求するが、日銀は従来の枠組みで検討するという。自民党は経済再生を訴え政権奪還した。安倍総理の言う経済政策を「アベノミクス」とメデイアが囃し立てる。その中での喫緊の課題は、デフレ脱却に向けて物価上昇率2%の目標設定を安倍総理は要求するが、日銀は従来の枠組みで検討するとして、安倍総理の要求とは別物と見ている。

物価上昇率2~3%は世界の趨勢で、安倍総裁(?)もそれを受けて2%を掲げたのだと思うが、日銀だって既に2%に言及している。

改めて総裁記者会見要旨(2012.12.21)を読んでみた。

2012年2月に「中長期的な物価安定の目途について」で、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断し、当面1%を目途」としているのだ。日銀は中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇を示したのだ。

そして当面は1%を目途にしているが、成長力強化の成果が高まれば、目指すべき物価上昇率は高まっていくこと、そして1年ごとに点検していくというのだ。その場合の原則は「中長期的な物価安定の目途」なのだ。

これを発表したとき、「「目途とは何だ。インフレターゲットか」と議論になったが、日銀はあくまでも目途で目標ではないという。

「インフレ目標」と言う言葉は、物価上昇率と関係づけて機械的に金融政策を運営することと同義語に使われていたが、今は「インフレーション・ターゲッテイング」とは「フレキシブル・インフレーション・ターゲッテイング」でフレキシブルな運営で使われてきて「目途」か「目標」かと言った議論は意味がなくなって来ていると白川総裁はいう。

当然だろう。辞書を引けば目途も目標も「目標」なのだ。

日銀は、安倍総理の言う物価上昇率2%目標をすでに設定(?)し、「中長期的な物価安定の目途」について、今は「当面1%」であるが、ほぼ1年ごとに点検しており、2月の決定会合でも物価安定の検討自体は従来の枠組みで検討するというのだ。

安倍総理の検討要請とは別物だという。

日銀の独立性が云々されているが、それは最低限保ちたいようだ。新聞報道で日銀OBが総裁、副総裁人事と絡めて組織の危機を訴えて白川総裁はうろたえているようだが、2月の決定会合で日銀の真価が問われるのではないか。

また、デフレ脱却で通貨供給量が少なすぎると言う批判があるが、マネタリーベースで資金供給額を先進国と比較したとき、資産買い入れなどの基金、貸し出し支援金の残高は120兆円を超え、名目GDP 対比では約27%で先進国で最大になっている(米国は確か約19%?)と言い、今後50兆円をくわえると、GDP対比で40%に近づくという。

通貨供給量は十分で、不足しているという批判は当たらないことを主張するために、会見場ではフリップボードを用意しての説明だったが、テレビで見る限り「どうして理解されないのか」と白川総裁の苦渋の顔だった。

専門家の一部には、日銀は学者肌の秀才が多く、外部に向かっての情報発信が下手だという。

「来月、2%と言う物価目標を設定する方向で議論するのか」という記者の質問に、議論は行うがどういう結果になるかは、これから1ヶ月間しっかり考えると言うにとどめた。

メデイアは目標設定の言質を取りたいらしいが、日銀は慎重な言い回しだ。

「当面1%」の目途をいきなり2%に持って行った時、「長期的な物価安定」にどんな影響が出てくるか。物価の安定を第一義的に考える日銀としては、頭の痛いところだろう。

安倍総裁の言う目標も日銀の言う目途も同じことなのだ。日銀は段階をおいて上げていくつもりだったのではないか。

早く結果を出したい安倍総理とは姿勢が違う。

又、日銀に物価安定ばかりでなく、雇用の確保にも責任を持たせる意見もあるが、この会見では質問が出なかったようだ。

日銀は象牙の塔ではない。政策推進に責任を持たせることには賛成だ。

一方で、安倍総裁側は日銀の政策を理解しているのか。日銀に責任を負わせようとばかり
考えているようだが、 物価上昇率2%を目指す経済政策、道筋が出来ているのか。

「政府におかれても、デフレからの早期の脱却のため、日本経済の成長力強化の取り組みを強力に推進することを強く期待しています」との白川総裁のメッセージにどう答えるのか。


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