2018年9月26日水曜日

伊方原発差し止め取り消し:阿蘇山噴火リスクを「社会通念上」で過小評価か

朝日新聞 2014.12.1
「カルデラ噴火の脅威」より

昨年12月の伊方原発「差し止め」に対して同じ広島高裁で「差し止め取り消し」の判決が出た。阿蘇山噴火のリスクをどう見るかが争点になったが、「社会通念上」の観念からリスク発生を過小評価したことになる。

事業者である四国電力は裁判で「安全のお墨付き」を得たと喜ぶが、本当に周辺住民、国民の安全、安心が確保出来たのか。何時もこの種の裁判では気になることだ。

伊方原発から130km離れた阿蘇山で大規模噴火が発生し日本列島が火山灰で覆い尽くす事態が9万年前に発生し、九州から山口県まで火砕流が流れ阿蘇山に大きなカルデラを形成した。噴出した灰は600km3、今心配されている富士山噴火での火山灰の量は0.7km3と言われているのでその規模は想像を絶する。

何時起きるか分からない大規模噴火の際に運転中の原発の安全をどう確保するか、周辺住民、国民の安全をどう確保しうるかと言う事になる。

1つは「前兆」を捉えて「事前に停止」する方法だ。

これが難しい。九州電力の川内原発でも「前兆」を捉えて「原子炉停止」を事業者の九電は主張しているが、前兆を掴まえるのが難しいのだ。何時起きても不思議ではないのに観測網が圧倒的に少ないのに異常=前兆とは言い切れないと京大・石原先生は言う。2~3回経験しないと解き明かせないのだ。

もう一つは9万年前に起きたことだが、原発施設の寿命である40年以内に発生するとは思えないという「社会通念上」の観念がある。しかも原発と阿蘇山は130kmも離れている。

今回の広島高裁の差し止め取り消しの判決は、事業者などが提出した資料に基づき、この考えに裁判長は心証を得たのだろう。

火山噴火、巨大地震は「何時起きても不思議ではない」と言われているが「何時、何処で、規模は」と言う事になると科学的予知は出来ない。そのことは分かっているが、最近ではGPS観測で「この辺が危ない」という事は分かりだした。

誰だって「今から40年以内に阿蘇山がカルデラ噴火を起こす」とは期待していない。「先に発生したのは9万年前じゃないか」と言う事になる。

阿蘇山噴火よりも切迫している首都圏直下地震だって誰も今日、明日ではないだろうと思って生活している。「すっかり忘れているのだ」、そして防災の日が来るとその危険が繰り返し叫ばれている。

私もいつも出かける時は、歩いて帰ることの出来るJRの駅まで来ると「ホット」する。一度、東京・日比谷公園から歩いて帰ることもやってみようと思っているが、まだやっていない。

原発再稼働に向けて国民は自分の安心、安全を確保するために裁判に訴え、救済を求めることが多いが、同じ裁判所でも裁判長が替われば判断も変わってくる。真逆の結果になる事が多いが、裁判官には一人一人の心証にまかされている。

言えることは下級審では原告の主張が通りやすいが、上級審に行く程に通りにくくなる。政府の政策に合致させる必要があるからだろう。再稼働を認める理由をタラタラ述べる。

最後は最高裁の判断だろうが最高裁まで争った事案はない。最高裁の判断が出れば今、全国で提訴されている原発関連の訴訟も片付くのだけれどそこまで入っていない。

伊方原発は南海トラフ巨大地震による津波は21mとも言われている。その対策はどうなっているのか。以前の新聞で万一の時の住民の退避方法が問題になっていたが解決したのか。

原発再稼働にはいろいろ大きな問題を抱えているのだ。



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