寺田寅彦博士の随筆に「変な話」として「半分風邪をひいていると風邪をひかない話」が載っている(「ピタゴラスと豆」角川ソフィア文庫 令和2年8月)。流行の初期に慌ててかかる人は元来抵抗力の弱い人。そういう人はちょっとした熱でも寝込み軽症で終わる。しかし抵抗力の強い人は少々のことは無理をして、たいていの場合は病気を悪くするという。
私もないかの医者に「何故先生や看護婦さんは風邪をひかないのか」と質問したことがあるが先生は「何時の風邪をひいているからひどくはならない。しかし仕事を止めると大風邪をひく看護婦さんがいる」というのだ。寺田寅彦博士の話に似ている。
博士は、危険線のすぐ近くまで来てうろうろしている者が存外その境界線を越えずに済む、ということは病気ばかりではないという。
犯罪の淵の崖の傍らで落ち込みはしないかとびくびくしている人間jは存外無事に過ごすが、罪悪とはかけ離れた清浄無垢と思われる人間が駆け足で飛んできて淵の中に一目散に飛び込み犯罪を犯すものだ。
戦争でもいえる。
戦争になるかもしれない確率が高くなると各国は一生懸命に負けない用意をして、そうしてなるべき戦争にならないで世界の平和を存続したい念願を忘れないでいると存外永遠の平和が保てるかもしれないという。
今のウクライナへのロシアの侵攻を考えると、米国はロシアのプーチンの機嫌を損なうと世界戦争に発展することを考え及び腰である。EUの周辺国はNATOでの団結を強化している。
米国や周辺国が対プーチン体制を強化していることが戦争への動きにブレーキをかけているのか。
博士も言うように変痴奇論ではあるが、真実かもしれない。
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