2009年7月5日日曜日

地球温暖化起因説:自然変動説を残したまま、人為説の独走か




 2050年までにCO2排出量を半減させるという目標は決まったが、各国はそれぞれ国内事情があり、そううまくは行きそうにない。国内の政策もうまく行かないのに、世界的課題に向かって、各国の代表が集まり、協議したってうまく行くはずがないと言った事が思い出される。
 
地球温暖化対策は、そのもっとたる課題だ。

 国中が、地球温暖化防止に向けて、CO2排出量の削減、省エネを訴えることは良いとしても、その対策には莫大な予算が必要になる。しかも我が国は相当に省エネなど対策がとられた上での、更なる削減目標である。産業界あげて不公平だと反対する気持ちも分からないわけではない。

 ピョルン・ロンボルグの「環境危機を煽ってはいけない」という本は、私達にCO2原因説を本気で考える機会を与えてくれた。その著者は多くの文献、研究者に当たってその拠り所としているデータの真偽、読み方をデイスカッションした功績は大きい。わたしも一読したが、説得力のある内容で、IPCCの人為的CO2原因説に疑問を呈している。

 その後IPCCの報告書は第4次までになり、ここでは日本のスーパーコンピューター「地球シミュレーター」が大きく貢献し、「平均地上気温の変化は太陽変動や火山噴火など自然影響のみでは、説明できないが、自然影響と人為影響を加味すると説明がつく」として変化は人為起源と断定した。
さらには、「不都合な真実」でゴアもと大統領とIPCCの報告がノーベル賞を受賞したことは、何か政治色を感じざるを得ない。

 その一方で、人為説に疑問を呈する意見が続出し、環境問題と取り組んでいる人達と論争を起こしている。
私も人為説に疑問が出ている以上は、「環境省は政策を進める前に、トコトン議論すべきではないか」とネット新聞で提案した。今まで環境省が人為説か自然変動説で議論する場を作ったことはない。万一、人為説に不利な状況が現れでもすれば、地球温暖化政策は混乱すると思っているのだろう。
 このまま曖昧にして、政策を進めた方が関係者は幸せなのかも知れない。

 ところがここに来て「エネルギー・資源学会」がやってくれた。異論が出ている地球温暖化起因説について専門家達が議論をしようというのだ。その機関誌で新春e-mail討論「地球温暖化:その科学的真実を問う」を開催した。
 アラスカ大の赤祖父先生(北極圏研究の第一人者)、横浜国大の伊藤先生、東京工大の丸山先生、海洋開発機構の草野さん(地球シミュレータセンター・プログラムデイレクター)、国立環境研究所の江守さん(温暖化リスク評価研究室長)の5人の研究者がそれぞれ持論を展開している。
 
 赤祖父先生はご自分の研究から、「温暖化は止まった」という。1975年からの気温上昇は自然変動によるモノで、今は「小氷河期」からの回復にある。2001年ごろから気温上昇が止まっているのに、CO2放出は続いている。このことはIPCCの報告の仮定が大きく崩れたことになると自然変動説を主張。
 確か私が大学生の頃、1962年頃は気温が下がっており、「これからは寒さに向かう。就職するのであれば繊維メーカーが良い」と真顔で言われたモノだ。

 江守さんは、IPCCの報告の仕事に関わったのだろうか。他の先生方が文献やそのデータの見方、処理の仕方に疑問を呈すると、必ずIPCCの報告に則った擁護を繰り返していた。

 他の先生は、研究者らしく、多くの文献を例示しながら、データの取り方、見方、処理の仕方、さらにはIPCCが軽視している気候現象についても論述している。例えば、温暖化には水蒸気が大きく影響する。エアロゾル→雲の発生、性質、寿命の検討が重要な要素になるが、IPCCの報告は実施していないという。しかし、江守さんは実施していると反論する。

 疑問に思っている一つであるが、気温測定にも言及している。地上2mでの気温測定は、気温の変化を過大に評価している危険があるし、観測環境も劣化して誤差が大きくなっている(例 田舎のミニ都市化)。

 それから、気温測定値がない時期は、氷床コア、鍾乳石、湖底堆積物などの代替指標を使用しているが、人為的錯乱など、この質が問題なのだ。ホッケー・ステイック曲線と言って20世紀後半に急激に気温が上昇しているのは、この人為的錯乱が影響しているのではないかという。

 IPCCの報告が上昇していると主張する気温傾向にも問題がありそうだ。

 議論を見てみると、それぞれが文献を上げながら、データを読んで説明している。同じデータでも読み方が違う。IPCCが軽視していると言われた課題も、江守さんに言わせれば誤解のようだ。
 この議論に呈されたデータを十分に読む能力はないが、草野先生が指摘されるように「未だ経験的手法に頼る試行錯誤の段階」ではなかろうか。
 人為説にいう温室効果ガスによって、未来の気候変動が支配され、今後単調に気温が増加し続ける可能性が高いというIPCCの報告は一つの仮説であるとする考えに賛成である。

 IPCCの報告は、各分野の学者が十分に議論されないまま、政治が入ってきた最悪の例だ。不確実性が高いとは言うが、自然変動説を残したまま人為説が独走する地球温暖化対策に異議ありだ。

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