2014年3月28日金曜日

青森・岩手県境不法投棄事件:一体何が問題だったのか

「不法投棄150万トンを10年
かけ撤去 残された教訓」
の記事を載せる朝日新聞
2014.3.27
企業で廃棄物処理の仕事をやっていた者なら知っているはずの青森・岩手県境不法投棄事件での不法投棄物の処理がやっと全量撤去が完了したという朝日新聞(2014.3.27)の「ニュースQ3」記事が目についた。この事件は2000年代初めに世間を大騒ぎさせ、廃棄物処理の問題点を浮き彫りにさせた。

埼玉県の処理業者「県南衛生」が首都圏の企業から集めた産業廃棄物を青森県の処理業者「三栄化学工業」に処理委託していたが、経営不振で集めた廃棄物を未処理のまま埋め立て処分し最終的に青森側に115万トン、岩手県側に35万トンが不法投棄されたことになる。

八戸市の三栄化学工業は、樹皮汚泥堆肥製造の中間処理の施設は持っており、県南衛生は当初RDF(ゴミ固形燃料)状の産業廃棄物を搬入していた。しかしそれが食品廃棄物、医療廃棄物、ダイオキシンを含む廃棄物が持ち込まれるようになり未処理のまま谷へ不法投棄した結果、27haの現場は測量をし直さなければならないほど現況が変わったという。

県南衛生 東部クリーンセンター
処理設備も整っている処理業者に
見えたが倒産
2004年9月撮影
両処理業者も2002年に資金が底をつき解散、破産したために県が行政代執行をしなければならなくなり、3月26日に岩手県知事も出席した最終搬出式で36トンの汚泥が搬出されたというのだ。

結局は処理に700億円の国や県の税金を拠出したらしい。私たちの税金なのだ。

勿論、当時から排出企業の責任が問われ、委託処理契約書などで追求していたが「不法投棄の事実を知っていたかどうか」が責任追及の条件であって、知っていた場合のみ責任を問うことが出来るのだが、排出企業から県南衛生には比較的高い処理費が支払われていたようだ。

最終的の撤去措置命令は40社、1000トン、処理費納付命令は6社、500万円に留まった(朝日新聞)。資料の不備などで追求も難しかったようだ。

こういう廃棄物の不法投棄事件は、周辺の住民がいち早く異常に気づき県や町に通報するのだけれど、役所の動きが鈍いのだ。

この青森・岩手県境不法投棄事件でも、立ち入り調査で県も町も地形の変化に大きな注意を払っていなかったようだ。行政検査で指摘がなかったために業者も「これでいいんだ」と思うようになったという(東奥web 2004.2.13)。

谷の現況が大きく違っていたという住民のクレームがあったのだから役所ももっと真剣にやっていればこれほど大きな不法投棄にはならなかっただろうし、これほどの税金をつぎ込んで処理をしなくても良かったのではなかろうか。

毎週、TBSテレビの「噂の東京マガジン」を見ているが、住民と業者のトラブルが話題になるとき、住民が困って役所へ相談しても動きが鈍いのは相変わらずだ。 

そして、もっと問題なのは当時(今もそうだろうが)廃棄物処理業者は銀行もカネを貸してくれない小規模の会社で資金力が弱い。

三栄化学工業も最初はまじめに樹皮汚泥堆肥製造の中間処理をやろうとしたのだろうが、そのうちに経営不振にかかった。資金繰りからヤミ金融に頼ったり、暴力団が経営に口出しするようになり、荒稼ぎのために処理能力以上の処理量を受けるようになったり、まともな処理をせずに不法投棄、埋め立て処分をするようになる。

付近の住民は異常に気づき役所に通報するが動きが鈍い。厳しい要求をすると県会議員などを通じて圧力をかけられることもあったはずだ。

何もしないうちに益々不法投棄量が増え、巨大な不法投棄事件に発展した。

この結果、処理業社は倒産、解散、その経営者は自殺、排出企業は支払った処理費以上に撤去費がかかり企業イメージも落とすことになる。関連企業が処理出来なければ国民や県民が処理費を負担することになる。処理業者の資産を差し抑えても大した金額にはならないのが通例だ。

今回の不法投棄現場も廃棄物を撤去した後も汚染された地下水などの処理に引き続き資金を提供しなければならない。

では、儲かったのは誰か。恐らく途中から経営に参加した人たちだろう。

これを機に、青森県や岩手県では県外から搬入される最終処分量1トンあたり500円の搬入課徴金を徴収するように条例が出来たそうだ。これで県外からの廃棄物の搬入を抑えるのだ。
幸いに、最近は不法投棄事件が報道されないので改善しているのだろう。廃棄物排出企業に自ら処理する責任があることを肝に銘じるべきだ。


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