2016年5月15日日曜日

引くに引けない日銀?:市場の期待を裏切る勇気、日銀の独立性をどう確保するか

日銀の異次元の金融緩和策も手の打ちようがない状況だ。今後も市場の期待を裏切る勇気を持ち、政府から距離を保ち、独立性を確保する必要があるのではないか。 

当初からリフレ派以外の経済学者が低金利下では金融緩和策はあまり効果がないと指摘していた。だから非伝統的金融緩和なのだ。でも一時の円安による株高の効果があった事は確かだ。

先月28日、日銀は市場の期待を裏切り(?)現状維持を決めると市場は円高へ、上場企業は今期は最高益の決算だが来期は大きく減益を見込むらしい。

黒田総裁は「必要なら躊躇なく追加緩和」を打ち市場の期待に応えようとし、市場はカネ儲けの糸口に追加緩和を期待する。でも考えてみよう、市場に300兆円を越えるカネを流しても思うような効果は上がっていないだろう。

消費税増税が景気の足を引っ張っていると言うが、そもそもは内需が不足しており、企業が設備投資する気になれないのだ。

各国が輸出で海外市場を頼らざるを得ず、為替安競争が出てくる。米国は輸出を確保するために為替安の監視を強化した。一方、麻生財務相は「急激な円高」を警戒し為替介入を匂わすが、我が国単独での介入は効果がないことは今までの経験から分かっている。

米国が利上げすれば円安も考えられるが、雇用増も思うように行かず先送りの様相だ。

日銀のマイナス金利政策導入後3ヶ月が経ったが、金利も低下し効果もあったと言う見方もあるが、実際の貸し出しは増えていないらしい。一方で、巨大銀行の経営は悪化しているという。マイナス金利導入で賃上げも見送ったのだ。

欧州ではマイナス金利導入に抵抗があるようだ。

安倍総理が議長を務める伊勢志摩サミットで世界経済成長に向けどういう政策が提案されるのか、注目だ。
各国が協調し財政出動する提案をするために安倍総理は根回しの外遊を行ったが肝心のメルケル首相は判断を見送った。財政健全派だから折り合いは付かない。

安倍総理は国内の経済主導にももたついているのにG7を主導することなど出来ない。

世界経済を成長路線に持って行くには不安要素が多すぎる。テロ、難民、経済制裁を受けているソ連、南沙諸島問題で近隣諸国と紛争状態の中国、そして格差拡大、原油価格、新興国、中国経済減速など構造的要因が大きすぎ各国共に手の打ちようがない。

又、日銀は独立性をどう保つかが重要なテーマになる。

審議委員などの人事権は官邸にある。今度新しく審議委員になった人は、学歴に偽証があると週刊誌に出ていたが、官邸の意向を受けた人事だったのだ。

だから安倍政権の経済政策には逆らえない。アベノミクスが頓挫したと言って見直しを提案すると、政権は一変にぶっ飛ぶ。だから引くに引けない日銀なのだ。

2%物価安定目標も4度目の先送りで「17年度中」という事になった。約束では岩田副総裁、黒田総裁は既に責任を取って辞任していなければならない人間だ。

安倍政権の経済政策を先導する経済財政諮問会議も安倍総理のYES MANの集まりだ。日銀にしろ、経済財政諮問会議にしろ反対意見を言う人間がいない。勿論日銀には2人ほどいるが。

だから安倍総理はサミットに向け、世界の著名な経済学者に意見を聞いたが、その著書や新聞報道で既にわかりきった事なのだ。

でも、その消費税10%への増税は皆、先送りを提案した。増税しなければ社会保障と税の一体改革からするとまずいことになる。自民党も2分しているし、公明党は軽減税率を主導した手前、何だったのかと言うことになる。

安倍総理はサミットまでに決断と言うが、どちらにしても政治生命をかける事になりそうだ。参院選を控えて増税はどうなるか。会期末まであと半月、国会審議はどうなるのか。

安倍総理の任期は18年秋まで。それまで持つかどうか知らないが、ポスト安倍がどうなるのか。黒田総裁、岩田副総裁の任期も含めて経済政策の大転換は容易ではない。

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