2016年5月30日月曜日

消費税10%への攻防:「アベノミクスの評価」を前提にすると正しいのは誰か

消費税10%への政権内、与野党の攻防が激しくなってきた。「アベノミクスの評価」をどう見るかによるが、果たして正しいのは誰か。サミットでの世界経済の舵取りを背景に安倍総理は2年の延期を打診している。

14年に続き連続の増税延期は社会保障と税の一体改革、1億総活躍社会、復興事業などに大きく影響し政権の政策運営にも支障を来さないのか。

増税の軌道をひいたのは3党合意だ。当時の民主党の野田総理、自民党の
谷垣総裁、公明党の山口代表だ。だから彼らは増税先送りに反対している。

おまけに野田さんや谷垣さんは財務相経験者で財政規律には厳しい。麻生さんも財務相だ。

それに比べて安倍総理は財務相経験者ではない。財務省との柵がないので消費税増税への思いは薄弱だ。財務省の柵がないことは良いことだが、一方で国家財政に疎いことになる。

だからかどうかは分からないが、デフレ派経済で脱デフレが出来ないとみるとリフレ派経済で突破しようと試みた。「異次元の金融緩和策」を推進、日銀総裁の首を切ったのだ。

ところが期待感を煽ったアベノミクスの「3本の矢」も成果が出ていない。

異次元の金融政策は円安へ向かい日本経済復活への一歩となったかに見えたが、輸出産業をはじめ企業は円換算による歪な儲けとなり内部留保は350兆円にも登った。

麻生財務相は経済財政諮問会議で日銀の当座預金口座ではカネが増えるがそこから先にカネが流れないのが問題だとし需要不足を指摘していた。民間議員が「そこのところも含めて議論しましょう」と発言していたが、どうなったことか。

2%物価安定目標達成も4度目(民進党・前原さんに言わせると5度目)の先送りになったが、消費が伸びないのは家計の収入が増えないことだと政府は「賃上げ」を経済界に要求する官製賃上げに出た。日銀も何を思ったのか「賃上げ」の重要性を訴えた。

しかし、苦肉の策と打ち出したマイナス金利、世界経済の先行き不透明感から企業は賃上げに悲観的見方を示した。

14年の先送り時に、安倍総理は「2年後は必ず増税する」と約束、最近では「リーマンショックや大震災がない限り増税実施」と言っていたが、安倍総理は本来は増税したくないのだ。

内閣支持率が下がる増税を避けたいのは、どの政権だって思うだろう。

安倍総理は今回、奇策に出た。G7伊勢志摩サミットで「現在の世界経済はリーマンショック時に似ている」と「経済危機」を言いだし各国首脳の同意を取ろうとした。機動的な財政出動で世界経済をけん引したかったのだろうが、首脳の中には「経済危機と言える状況ではない」と反論する首脳も出て来た。ドイツやイギリスは財政出動にも難点を示した。

世界経済危機が認められると「日本も消費税増税を回避」という発想になるが、サミットでは安倍総理の思惑通りには行かなかった。

でも今、増税は日本経済の更なる減速、2%物価安定目標達成の覚束なくなると判断したのだろう、「消費税増税2年半先送り」を言い出した。

自民党内、政権与党の公明党、安倍政権内でも増税に向け攻防が始まった。

麻生財務相は「2度の先送りなら解散して信を問え」という。谷垣さん、山口さんは慎重姿勢を崩していないが、最後は安倍総理の考えに従うだろうとみられている。

そして野党、民進党も「消費税増税2年半延期」の法案を提出、野党は31日に内閣不信任案の提出でまとまろうとしている。

政権与党は多数で否決するのか、それとも解散で受けて立つのか。

「アベノミクスの成果?」「アベノミクスの破綻?」、そこをはっきりしなければ日本の経済政策は間違うのだ。


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