安倍政権の狙いは、消費税率引き上げもさることながら経済成長で税収、財政再建につなげ好循環の経済を目指すことだと言う。13日に開かれた第19回経済財政諮問会議の担当大臣記者会見要旨と民間議員から提出された「消費税引き上げ判断に当たっての論点とその留意点」をHPから開いてみた。
安倍総理は諸々の経済指標を勘案して引き上げの判断をすると言うが、消費税引き上げは社会保障と税の一体改革での中の議論であって、同時に経済成長が大事なのだと主張する。
成長路線に持って行き税収増、企業の儲けを家計に再分配する。消費税増税で社会保障の財源を確保することで財政再建を図り、将来への安心から消費が伸びる。いわゆる昔で言う「上げ潮派」の考えだ。そのためには原発再稼動も前提になるのだ。
アベノミクスの一定の効果を経済財政諮問会議でも認める意見が多いが、世論調査では安倍政権の経済政策を59%の人が評価するも、実感していない人が77%の高率だ(讀賣新聞2013.9.16)。
政府は、企業の儲けを家計に再分配する協議を政労使で開き好循環への道筋をつけたいようだ。「労使で話し合うもの」と財界は警戒しているが、連合は賃上げに良いチャンスと期待している。それぞれ思惑が違っているがうまくいくのか。
会議後の記者会見で、記者から消費税引き上げは家計の負担増になるので、過去には消費税増税と所得税減税の組み合わせの政策をとっていたが、今回は何故、法人税減税になるのかとの質問があった。
確かに、消費税増税とともに、企業活動を刺激するために設備投資減税も検討、中小企業まで拡大しようとしているし、経済界から要望のある法人税減税も企業マインド改善に資すると見ているが、官邸と財務省で考えに隔たりがあるようだ。麻生財務相は「75%の企業が赤字経営で法人税を払っていないのに法人税減税に効果があるのか」と反対している。財務省としては税収減を心配しているのだ。
これに対して、甘利担当大臣は「景気の好転、企業の業績が上がっていく中で、どう賃金に還元していくか、その好循環を作っていくことが使命なのだ」と応える。
今回の会議で民間議員から「消費税率引き上げ判断に当たっての論点とその留意点」の資料が提出された。
それによると、3%増税で家計負担は6兆円の支出増が見込まれるといい、そのほとんどを消費者が負担すると言う。
2%を一時還元するとしても5兆円規模の対策が必要になる。そこで低所得者対策、雇用促進税制、一時的な所得税減税などが必要になるのではないかと言うが、どのくらいの国民が恩恵にあずかるのか。
そして、デフレ脱却、経済再生、財政再建という道筋を見極めて判断すべきであるといい、消費税を引き上げた場合と引き上げなかった場合の対応も提言している。
引き上げた場合は、景気の下振れ対策をとり、その後の成長軌道へ復帰させる道筋が必要で、包括的な財政金融政策が要求され、成長力の底上げ、企業収益向上→賃金、雇用増→好循環の経済を目指すのだ。価格転嫁円滑化、低所得者対策、日本再興戦略、政労使の協力、財政の質を高めことが要求される。
一方、引き上げを変更した場合、日銀の緩和縮小(出口戦略)と消費税増税が重なったときは景気後退に注意しなければならないが、政府としては見解、今後の方針を明確にすること、社会保障改革の進め方、財源確保も改めて明らかにすべきであるという。
安倍総理は消費税引き上げの意向を固めたというニュースが流れているが、最終的判断はまだらしい。
消費税増税は既定路線としても、企業活動を活性化する政策が企業経営者のマインドにどう影響するかが問題だ。
企業が投資したい分野、事業があるのか。「今は、賃上げより雇用の確保が先だ」という経営者もいる。現実に正規従業員より非正規従業員の数が増えてもいるらしい。体の良い人件費削減策ではないか。
人件費を抑えて内部留保に努める経営から儲けを家計に再分配する改革が出来るか。以前内需拡大で前川レポート、21世紀版前川レポートが提言されたが、ほとんど成果はなかった。その要因に企業の儲けを家計に再分配する考えが企業側に受け入れられなかったのだ。
今回も政府の働きかけに経営者がどう応えるか。期待出来なければ安倍政権の経済政策は頓挫する。待っているのは物価高の経済不況で国民の家計は苦しくなる一方だ。
この会議で、日銀の黒田総裁は「緩やかに回復している」として、消費税を上げても2%物価安定目標は実現するし、デフレ脱却も可能だと発言している。まだ量的緩和を継続するのだ。
又、民間議員から「消費税増税は安倍内閣の成長戦略を発動する政策のスペースが広がる」という発言があった。今問題になっている法人税下げも消費税増税によりできるスペースを利用して出来るのではないかというのだ。
チョット待ったと言いたい。消費税引き上げは、社会保障の財源確保など税の一体改革、財政再建の手段なのだ。如何に安倍政権が成長戦略に力を入れようと、大企業や富裕層を優遇する偏重政策は控えなければならない。国土強靱化の御旗の元に無謀な公共投資も禁物だ。
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