読売新聞 2018.4.27 |
問題は予見可能性だろう。たくさんの子供を預かる学校、危険である原発事業者には特段の注意義務が課せられるが、今までの例では責任を問われるのは現場の担当者であり課長クラスの管理職だった。しかしこれからはそうはいかないのだ。
大川小学校の児童、教職員のうち23人の児童の親が賠償請求した裁判で仙台高裁は防災対策の不備、教育委員会は指導を怠ったとして14億4000万円の賠償を命じた。原告側勝訴だ。
判例では高い防災意識と経験、ハザードマップを信用せず独自の検討の必要性を問うた。
一方、今係争中の東電の旧経営陣に対する裁判では15.7mの津波予測が政府機関から発表されており若手技術者が検討した結果、防潮堤の強化が必要となり社内会議で何度も提案したが武藤副社長(当時)は先送りを決定、おまけに他の事業者にも伝達したという。
どういう理由で最終的には誰が決定したかわわからないが、技術者は「必要性はあるが、やらなければならない合理性はなかった」という。政府機関が発表した予測に当時は合理性が見いだせなかったというのだ。
しかも防潮堤の増強には80億円の建設費がかかるとみともられていた。この費用を経営陣は渋ったのか。
実際には、3.11東北地方太平洋沖地震が発生、巨大地震は巨大津波を伴い襲い掛かった。貞観地震の再来で対策を怠っていた東電・福島第一原発がメルトダウンで甚大な放射能事故を拡大させた。
あの時、80億円かけて防潮堤を強化していればこれほどの被害は出なかったかもしれないという悔やみが起きる。
でも東電旧経営陣は事故を詫びながらも「知らぬ存ぜぬ」で責任を回避しようとしているのは裁判上のテクニックなのか。
巨大地震→巨大津波を予測し、避難計画、避難訓練の必要性は当然だ。自治体の予測であるハザードマップも鵜呑みせず独自の検討が必要であるということは多数の人命を預かる機関にとっては安全対策の必須条件なのだ。
また、学校、教育機関とは違って原発設備を運転する事業者には特段の注意義務が発生するのも当然だ。
東電の福島第一原発は甚大な被害を受けているが隣の福島第2原発、東北電力
女川原発は被害も少なく、女川原発は儒民の避難所の役目を果たしたという。
その違いはどこにあったのか。
教育機関にも大きな刺激にあるだろう。
「いじめ問題」が発生してもなかかなそれを認めない。保護者から厳しく追及されると渋々再調査し、「いじめがあった」と認めるだらしなさだ。校長、教育委員会が裏でどう打ち合わせしているかわからないが、そういう教育現場に防災対策を要求するのだから大変だ。
おそらく最高裁まで行って、「差し戻し」か、「破棄してやり直し」になるだろう。
検察官には一体の原則があり日本中で同様の事案は同じように処理されるが、裁判官には「それぞれ裁判官の心証に頼る」ことになり判決内容も違ってくる。
「裁判官の数だけ判例がある」のだ。他人事ではない。注目だ。
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