スズキの昨年の排ガス、燃費性能検査不正に続き今回の無資格検査員の検査により202万台のリコールのニュースに接し、国際標準規格のISO9001品質管理マネージメントシステム、ISO14001環境管理システムを取得しながらどうして回避できなかったのかと疑問が出てくる。
スズキのHPを見るとCSRの取り組みが詳細に報告されている。車の安全、品質確保、環境問題への積極的に取り組んでいることが想像できるが、実態はそうではなかったのだ。
ISOの趣旨を十分に理解し経営に生かさず、皆が取得しているので競争上の必要性だけで必要な書類と体制を構築したにとどめたのではないか。
品質保証の最高責任者は多くの場合、事業部長と言うことになるが何の関与もしない。何かあると事業部門の担当者が対応する。品質、検査項目、検査手法もよく見せるために実態を反映しないようになり品質が逸脱する例が多くなる。さらに品質管理に関する教育が徹底できない。本社の幹部は「俺を教育するのか」とクレームを付けるケースがほとんどではないか。検査過程が障害になり車が売れなければ「何をしているんだ」と工場を叱りつける。
確かにISOの取得は大変だ。品質管理体制を整備し、やっていることを記述、定期的な内部監査を実施、外部監査を受けなければならない。本来は製造部門、検査部門、品質管理部門が中心になるが、業務多忙、間接部門の人員削減などが重なり、品質管理担当者中心の管理になってしまう。
おまけに品質管理が各部門で適正に実施されているかどうかを内部監査でチェックするが、お互いに遠慮があり監査する人間も質に問題があり十分なチェックができない。
業務が多忙になると、部内での教育、部内での見直し、目標を逸脱していれば軌道修正することに時間をかけられなくなる。それでも品質管理をやっている姿勢を見せなければならない。いろんな面でねつ造と言うことになる。
ところでスズキの品質管理の実態はどうだったのか。
2018年の排ガス、燃費不正ではトレースエラーにより無効にすべき試験結果を有効にした。測定値も書き換え、無資格者検査では検査補助者が単独で完成検査したため保安基準への適合性の確認ができない。
スズキは国交省に報告するとともに外部専門家による調査検証を実施し国交省に報告したという。
その弁護士事務所に依頼した検証報告書がHPに掲載されている。その中味を読んでみた。
長年にわたり不適切な行為が行われた背景として①検査課の独立性の欠如、②社内規定の整備、管理が不十分・・教育体制の機能不能、実態にそぐわない検査規格、作業手順、③内部統制の脆弱さ・・組織的構造面での要因④経営陣の関与、理解が不十分を上げている。
これは私の経験からしても致命傷だ。ISO取得の意味がない。
更に「完成検査に関する実質的な監査が行われていなかった」と指摘、長年にわたり不適正行為を把握できなかった原因として「実質的監査が行われていなかった」という。
報告書に「ISO監査および工場長による定期監査」の項目が設けられ。
それによると製品品質保証部によるISO監査が実施されているが、全数検査、抜き取り検査、無資格者検査の不正行為が発見されなかった。工場長は検査主任技術者だったが自主的モニタリングの機能不全を起こしていた。
内部監査はするが実態が把握できず不正の見落としがあるということは監査される側は不都合なことは隠し、監査する方は見抜く力がなかったことだ。ただ内部監査をやったという実績を残す内部監査であったことがうかがえる。
最後に内部統制システムの強化、リスク管理に関する取り組みが要求された。
それにしても200万台を超す不正、OEMにも波及する事態に至り800億円かかるともいわれている。検査項目、手法を実態に合うものに見直し、検査装置の更新、検査員の増員、教育の徹底に800億円もかからない。
手抜きをやったために大きな月謝を払わされる結果になったスズキだ。
ユーザー、関連会社の信用を取り戻すことは並大抵ではない。信用は長年の努力で築かれるが、信用を失うのは瞬間のゆるみだ。
ISOへの信頼を失ったことは大きな損失だ。
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