2019年4月21日日曜日

原発と地球温暖化:「長期戦略案」でも共に科学的検証おざなりで政治が前に出る 危険


原発と地球温暖化は深くかかわっている問題だが、ともに科学的検証を十分にしないままに政治的政策が進むことに危険を感じないか。世界中の人間が十分に理解していないために折角調整して進めようとする政策(?)が思うように進まない。そのうちに時間だけ経って成果が表れない結果になる。

地球温暖化、普段は気にせず生活していたが「パリ協定」「IPCC」のニュースが出ると、これではダメと思うが、今回は原発と絡めて政府が地球温暖化対策の「パリ協定」により「長期戦略案」をG20までに正式決定するという。

そこで原発、地球温暖化の抱える問題を考えてみた。大事な問題はほとんど解決していないことに驚く。原発の稼働にしても各国バラバラなのだ。大丈夫か。平均気温上昇も2未満、1.5をめざすのだ。

「パリ協定」に基づく政府の「長期戦略案」

21世紀後半に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にする。原発について実用段階にある脱炭素化の選択肢で安全性、経済性、機動性に優れた炉を追及するという(2015)。

原発に対する政府の対応も廃炉を遅らせて既設炉も有効利用しようとする。廃炉が当初は40年だったのがさらに20年延長され60年になったが、さらなる延長も検討されているらしい。止めたり動かしたりを繰り返す原発施設の安全性が気にならないか。

40年廃炉と60年廃炉での原発ゼロ達成年度
我が国のエネルギー政策の課題は①安定的エネルギー源の確保、②安価なエネルギー確保、③環境への配慮があげられている。エネルギー有識者会議は原子力発電所を将来的に維持するために原発の建て替えを認めている(読売新聞2013.11.29)。

課題も大きい。高濃度放射性廃棄物最終処分場の確保が問題なのだ

地層が安定した候補地に住民説明し、合意形成が必要になる。地下300mの地層に固化体された燃料を鉄製容器に入れ粘土で隙間を埋め最終的には坑道を埋め戻すのだ。フィンランドやスウェーデンではみとめられているという。

日本でも公募方式で募ったら東洋町が名乗りを上げたがのちに取り下げた。財政的面で応募したのだろうが住民の猛反対にあったという。それ以降、国が前面に出るようになった。

読売新聞 2017.7.29
使用済核燃料は17000トンあるそうで、各原発の貯蔵能力も7~16年と差し迫っている。

こういう大きな問題を抱えている原発の発電コストはどうなのか。2011年、民主党政権が試算したところによると、原発8.9円以上(経産省は5.9円)、石炭火力9.5、LNG火力10.7、石油火力22.1、水力10.6、太陽光350~46、風力9.9~17.3という。当初原発は5.9円と一番安価であったが、福島第一原発での大事故で賠償、安全対策などを考慮するとそう安くはないのだ。2015年では原発10.1円、LNG13.7、石炭火力12.3という報道もある。

経産省は原発補助制度を導入し、原発価格の競争力ダウンを回避しようとしているが「原発はリスクが大きすぎて制度支援がなければやっていけないのだ」との批判が出ている(朝日新聞2019.3.23)。

原発に対する各国、経済界の動きはどうか

財界は、再稼働が遅れた危機感があり廃炉の延長を訴えている。日本の電力を支ええるシステムの構築には原発が必要なのだ。太陽光では限界があり炎原発の再稼働、新設増設を提案している。地球温暖化対策にも原発比率をあげる必要があるのだ。

海外の動きはどうか。

原発大国のフランスは、大手アレバが経営危機になったために救済するという。福島第一原発の事故で新設炉の建設が遅れ損失が出たというのだ。これに対して中国が資本参加する報道もあった。

先進国といえども財政難に中国がつけ込んでくるのだ。50基稼働で2014年末で6700億円の損失という。

米国も原発に再び注目しているが、スリーマイル島の事故以来安全対策費もかさみ停滞している。認可期間40年、延長20年で40基が稼働しているらしいが全発電量の20%に当たるらしい。

トルコで23年稼働を目指していた政府、三菱重工のプロジェクトがとん挫した。安全対策費がかさみ事業費2兆円が倍増したのだ。日本がダメになったのでロシアが支援に回った。

ベトナム撤退、リトニア国民投票で反対、台湾凍結、英国離脱、ドイツも原発ゼロを目指していると聞いたことがある。

日本はインフラ輸出を成長戦略に採用し安倍総理が先頭に立って商売しているが各国共に問題を抱えている。

原発は地球温暖化対策の主要選択肢なのだ

2016年の温室ガス排出1位は中国114億トン、23%、2位米国67億トン、13.6%、日本は8位で13.4億トン、2.7%だ。先進国だけに削減目標が設定されたために不公平だと米国は批准せず、中国は一番の排出国だが「発展途上の大国」という位置づけで削減に非協力的だ。

2016年 各国別温室効果ガス排出量
資源エネルギー庁
それでも日本は「約束草案」として2030年度で2013年度比-26%で日本の削減率は他国に比べてもダントツに高い。今までCO2削減に努めていながらさらなる高い削減率を設定していてはかなわないのだ。

さらに、日本が削減率を達成したとして平均気温上昇をどれぐらい下げることが出来るのか。メデイアでは論じられないが専門家が計算したことがある。

京都議定書が検討された時、世界の排出量、日本の排出量、予測される平均気温上昇から計算した結果、IPCCの予測が正しいとすれば日本の削減によって0.004の上昇を抑えられるが、一方対策費には数兆円という巨額な投資がされているというのだ(「本当の環境問題」 池田、養老共著 新潮社 2008.3)。

費用vs効果がなっていないのだ。ちょっと古い資料だが、今計算して間違ってはいないだろう。

それよりも地球温暖化の原因が各分野の専門家を集めてしっかり検討されたのか。そこに疑問を感じる。アメリカだってこの点を突いている。

大気中のCO2濃度と平均地上気温上昇の変化を比較した結果、自然影響のみでは傾向が合わないが、自然影響と人為的影響をあわせて比較した結果気温の上昇傾向に合致するとして、今ではCO2など温室効果ガス主因説が主流である。

でも、地球物理学、宇宙物理学の専門家の間では太陽の影響など自然現象説を唱える人が多い。アラスカ大学の赤祖父名誉教授は気温上昇の要因は1/6がCO2など、5/6が自然現象だと主張する。

地球は寒冷化、温暖化を繰り返している。過去にも今より気温が高いときもあったのだ。主張の違いはデータの読み方、取り方の違いが大きい。都合のいいところだけ取って議論していては判断が間違う。

何故か、今この議論が低調になってきた。

また、IPCCは意味深長なことを言っている。温室効果ガスの濃度上昇は2000年に止めても気温上昇はすぐには止まらないのだ。

原発、地球温暖化、両課題に問題を抱えている。モタモタしている間に世界の平均気温の上昇が止まる。そんなことが起きるだろうか。世界は寒冷化に向かっているのだ。

今の世界の平均気温は14.5CO2濃度は400ppmぐらいか。

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