2019年4月25日木曜日

ゴーン被告の特別背任(9):無実の主張、巧妙な手口、経済事件、そして保釈闘争か


自らの報酬を少なく見せる金融商品取引法違反、そして日産の資金を私物化し流用した会社法での特別背任事件そして経産省も絡む経済事件は数々の問題を提起しながらオマーンルートでの5.5億円の流用での追起訴を受け、一区切りするらしい。

追起訴後保釈請求され25日、5億円の保証金を振り込んで認められたが、検察が準抗告するらしい。保釈請求時ゴーン被告は「保釈条件を守っている。体調がすぐれない」と訴えたと新聞は報道する。5億円を即振り込むなど驚きだ。

これでゴーン被告に課せられた「典型的な経営者不正」事件捜査も5か月で終わり捜査体制は縮小、後は公判前手続きに進むという。

今回のゴーン日産前会長の捜査、拘留過程でいろんな問題が明らかになった。それが海外のメデイアまで動かしたのだ。

まず、「司法取引」、半年前に制度化された。それを利用してゴーン被告の不正行為に関連する資料を検察に提出した。検察は家宅捜索しただろうが日産から必要な証拠を難なく手に入れたはずだ。

それでも事件を立証するため身柄拘束して取り調べを続けた。「推定無罪」の欧米から長期の拘留に批判がわいた。日本の司法の時代遅れが明らかにされた。被疑者の権利をないがしろにすると批判されたが、裁判所が拘留の是非を審査するのだから人権蹂躙の批判は当たらないが、「無罪」を主張している限り拘束されるのは無理かもしれない。

ゴーン被告が日産の「陰謀」「策略」だと無実を訴えている背景に、ルノーと日産の間で経営統合の話が持ち上がり日産の現経営陣らが日産の主体性がなくなると経営統合に反対していることだ。

その背後に経営統合を潰そうとする経産省の意向もあるし、反対にルノー側にはフランス政府の意向が働く。日仏経済事件になってきたのだ。

それを裏付けるかのように今、フランスを訪問している安倍総理がマクロン大統領との会談で、この問題に触れ「相互に納得のいく解決を」と訴えたらしい。

疑惑内容はゴーン被告の巧妙な手口が垣間見られるようだ。特に日産の多額の資金を中東日産を経由してサウジアラビア、オマーンの知人の会社を通じ最終的にはその一部が私的流用された。マネーロンダリングはそレだけの知識がないとやれない。

臨時株主総会で現経営陣の責任が追及されたとき、「少人数で計画し、手口が巧妙で見破られなかった」という発言は本心だろう。そして絶対的権力を持ったゴーン会長には逆らえなかったのだ。

日産の過去を見ると、その時のカリスマに会社が私物化される歴史があるのだ。一時は労働組合の委員長が絶対的権力を握っていたこともある。

ゴーン被告も用心深い。自分は危ないことをやっていると認識していたのではないか。資金を流用する手口は必ず弁護士の資格を持つ部下に検討させていたという。日本の実情に欠ける海外の弁護士だったからグレーも「OK」したのだろう。

ゴーン被告が一貫して無実を主張することの根拠にもなっているのではないか。

そして際立ったのは保釈請求だった。

前主任弁護士に代わって無罪請負人を自負する弁護士になってから急に裁判所が今までの姿勢を変えて保釈を認めることになった。欧米での人質司法への批判、記者会見でのたびたびの保釈請求発言が功を奏したのか。

しかし、オマーンルートでの再逮捕は保釈の在り方に疑問を呈した。弁護人は「一連の行為だから特に身柄拘束する必要はない」と主張するが裁判所は拘留を認めた。弁護団は最高裁に特別抗告したが「抗告に理由なし」で棄却された経緯がる。

だから今回の追起訴後の保釈請求もどうなるかと注目していた。特にオマーンルートは妻や息子への流用が問題になっている。家族が関係者なのだ。自宅に帰って妻と接触することは「関係者との接触」の禁止条件に反しないのか。

公判が始まるまで相当月数がかかる。外国人であるゴーン家族がフランスに帰れない日々が続くのだ。「一時帰りたい」と主張していたがどうなるのか。フランス政府が救済に動くのか。

そのフランス政府もルノーと日産の経営統合をルノー経営者に押しつけている。日産は当然拒否だろう。そんなことをしているからに日産の業績は落ちている。配当が減るので困るのはルノーも同じだ。

ここは経営統合を棚上げにしてグループの信頼を取り戻し、業績を回復するのが一番の課題ではないのか。

そしてこれだけ日産に損失を与えているのだから株主代表訴訟もあるだろう。ゴーン被告、現経営陣の責任が問われる。

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