2019年4月24日水曜日

今日の新聞を読んで(241):財政政策の失敗、「公の再創造」とは


長く地方財政審議会会長をやっていた財政学者の神野直彦東大名誉教授は、平成を振りかえり経済成長を目指し減税したのは失敗、今後は「公の再創造」が必要と言うが、何のことか。

日本の財政政策は減税→経済成長→税収増→財政再建のパターンを狙っていたが、成長も期待できず、税収増もわずか、それでも成長を期待して財政出動するので借金は増える一方だ。「大きい政府」から「小さい政府」へ、支出削減をしたが社会保障制度はいびつになり貧富の拡大を招く結果になった。

アベノミクスで狙ったトリクルダウンなど当初から正統派学者は否定していた。

思い出してみよう。レーガン大統領の唱えた「レーガノミクス」は減税すれば税収が上がるという内容だった。放物線を逆にした逆放物線でx軸を税率、y軸を税収とする(南カリフォルニア大のラファ―教授が提案したのでラファ―曲線と言い、当時出版までされた)。凸の部分が税率、税収がベストの点だ。

今の税率がピーク時の右側にあれば税率を下げれば税収は上がるが、ピーク時の左側にあれば税率を下げれば当然に税収も下がる。

問題は税率が税収がピーク時の右側か、左側かが問題だが、当時はどちらともいっていない。

レーガン大統領は税率を下げれば税収が増加するといったのだから当然に右側を想定していたのだろうが実際には税収も下がった。左側に税率があったのだ。当然に税収は減り、財政は赤字の積み上げになった。

当時は税率を上げることで税収増が期待できたのだが、増税はいつの政権でも回避したいところだ。それは日本でも同じだ。

「減税すれば経済は成長する」とは間違っていたのだ。所得税、法人税の課税ベースを他の先進国と同じようにもっと広げるべきだったと神野先生は言う。

財政再建で支出を減らし「大きい政府」から「小さい政府」を政策の最上段に掲げたが、財政規模では「大きい政府」でも生活保障機能では「小さい政府」だと神野先生は言う。

サービスは抑制され、貧富の差が拡大した。安倍総理はいろんな経済指標を掲げて成果を主張するが、街かでのアンケートでは「実感がない」と否定的だ。

借金が増えれば返済公債費が増え、公共サービスも支障が出る。悪いことに悪性インフレを指摘する専門家もいるのだ。

神野先生は所得税や法人税の控除や優遇措置には抜け穴が多い一方で、消費税だけが上がる。これでは誰だって財政のありがたみがわからないのは当然だ。

国民自身が参加し、財政を有効に機能させ、経済を活性化させ「心を豊かにする」ことこそ大事なのだという。民主党政権になり自民党の硬直化した財政政策にくさびを打ち込んだと思ったが「コンクリートから人へ」、「事業仕分け」と理想は良かったが中途半端に終わってしまった。

将来の生活不安を払しょくし、貧富の格差を是正し「豊かさ」を追及できる財政政策には法人税、所得税など大企業、富裕層などへの優遇税制の見直しなど「富の再分配」政策を積極的に取り入れなければならない。

企業、富裕層だけが生き残る日本社会をどう考えるか。


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