2019年4月30日火曜日

今日の新聞を読んで(243):市場デザインを忘れた規制緩和を過大評価していないか


規制改革を声高に言うが規制を減らすのではなく市場(業界)をどう育てていくかというデザイン構築をおろそかにしていないか。安倍政権に限らず既得権益者のもつ強固な規制岩盤に風穴を開けようとしているが、逆に新たな権益者を作る規制改革が横行していないか。

大事なのは規制数を減らすのではなく、市場(業界)をどう育てていくか。グランドデザインの大切さをカリフォルニア大ステイイーブン・ボーゲル教授が朝日新聞2019.4.30「私の視点「規制緩和の罠」」で指摘している。同感だ。

身近な事例ではタクシー業への参入をしやすくした規制改革が実施されたが、いろいろな弊害が出て来て再び規制強化の方針に代わった。問題は「タクシー業界」をどう改革すれば「業界も利益」になり「国民の利がかなえられるか」ということが十分に検討されていなかったのだ。

ボーゲル教授は、「生産性向上」という点から考えると規制緩和との相関はなかったと言うし、自由市場への障壁を取り除く規制緩和も「規制が増えるか減るか」ではなく、政策目標を達成できるかどうかだと説く。

競争を促進するなら規制を減らすだけでなく、競争を促進するための規制が必要なのだともいう。実際に免許や許認可の規制数は0210621件だったのが17年には15475件に増え、規制を減らすことになっていないのだ。

逆に市場競争の推進には規制が必要なことがわかる。

タクシー業界への参入を自由化した。規制を減らし参入をしやすくするはずだった。確かに業者数は増えたが、過当競争のために運転手の収入は減り生活が苦しくなった。サービスも低下、いろいろあった末に再び規制を強化した。

当時、小泉政権(?)だったと思うが政府は「失業率を低く抑えることが出来た」と評価したものだ。タクシー業界のグランドデザインが描かれていなかった。

最近ではモリカケ問題だ。

森友問題では、小学校開設に異業種の幼稚園経営者が参入しようとした。籠池さんはなかなか進まない申請手続きに安倍総理夫妻と懇意で事業に協力されていることを説明、夫人を挟んだスリーショット写真を役所に見せたら、トントン拍子に計画が進んだ。官僚が「安倍総理事案」として忖度したのだ。

いろんなことがあって、国有地の格安払い下げになって国会で追及された。記録資料は改ざん、破棄され民主政治の根幹を揺るがすことになった。計画はとん挫し、土地は国に買い戻しされた。その後のテレビ映像を見ると小学校建設は完成をまじかに止まったままだ。

一方、獣医学部新設では加計学園が50年ぶりに新獣医学部新設を申請した。獣医学会、獣医業界の反対もあったが政府は規制緩和では遅々として進まないと判断、戦略特区構想で強引に進め、新獣医学部は校舎も完成、新入生を迎え入れることが出来た。

しかし、設備、教員など不十分なことが指摘されている。こんなことで優秀な獣医を育てることが出来るかということなのだ。

ここでも愛媛県と文科省、農水省でいろんな問題が指摘されている。

いずれのプロジェクトも目指すグランドデザインがかけているのだ。とりあえず作れば実績として残るということなのだろうが、特記すべきはいずれも安倍総理の友人に便宜を図ったことだ。

公平、公明は行政の在り方が問題になっている。

こういった規制改革は折角、既得権益者を打ち破っても新たな権益者は蔓延り、自民党支持者になるのだ。

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