2016年2月27日土曜日

進まぬ物価上昇:ケインズは「各国同時協調で減税、財政出動」の必要性を説く

進まぬ物価上昇だが、ケインズは「各国が協調し減税と財政出動せよ」と1933年に訴えていた。安倍総理は「もうデフレではない」というが「脱した」とは言えない。進まぬ物価上昇だが、あのケインズはどう考えていたのか。たまたま購入していた「ケインズ説得論集」を読み返した。

1933年に出版された「繁栄への道」に収録されている。1929年の大恐慌の時代後だから今の経済環境とは大きく違っているが、財政出動に変わりはないだろう。

市場関係者は株が上がれば投資家は「RISK ON」に、国債が買われれば「RISK OFF」になったと繰り返す。それがしょっちゅう変わる。確かに「RISK ON」が減れば需要減で物価は下がる。需要がなければ企業家は投資しないし、雇用も増えない。

ケインズの論評は数段階的に論じているが結論は、「多数の国がほぼ同時に減税を実施し、借り入れによる支出を増やすことだ」という。各国が協調して減税と財政出動とやれと言うのだ。

その協調するところに国際会議の重要性がある。丁度上海でG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれている。中国に構造改革を強く求めているが果たしてどうなるか。

ケインズの「物価を上げる」考え方はこうだ。

通常は需要不足の場合、供給を抑制して価格を引き上げるのだが供給制限は失業を招くのでかえって有害だ。

ではどうするか。供給より早いスピードで商品に対する支出を増やす、需要増を作り出すことだ。

このためには、一つには国民が支出を増やせばいいが貯蓄を減らす場合もある。だから余裕のある人に支出を増やすように奨励することだがこれだけではダメだ。

二つ目は国民全体の購買力を増やすことだ。一部は物価上昇、雇用増になる。購買力を増やすには貿易収支の改善で国内生産者の所得になる部分の比率を上げることも考えられるが、一国の貿易収支改善は他国の悪化を招くことにもなる。

そこで借り入れによる支出をのばすことだという。

借り入れによる支出を世界全体で増やすことだ。そのためには外貨準備を十分に保有、長期資金を低金利で、民間企業が十分な規模で投資を実施することだ。

こうできれば借り入れによる支出の好影響が世界全体に波及するというのだ。

でも富裕国から新興国へ対外貸付には疑問を呈し、借り入れによる支出を国内で増やすことが重要なのだ。そうすれば雇用も増え、輸入も増やせる。

大切なことは、多数の国がほぼ同時に減税を実施し、借り入れによる支出を増やすこと以外に方法はないという。各国が協調しなければならないのだ。

減税と財政出動。G20でも財政に余裕のある国に対しては景気を下支えする財政出動を求めるらしい。

安倍政権もアベノミクスによる税収増分を公共投資に回そうとしている。一方で消費税10%の増税も政治課題になる。政党によっては「消費税を5%へ戻せ」と訴えてもいる。

円安、株高で企業の業績も良くなり家計への再分配、設備投資で消費を上げ、物価も上がる経済の好循環を目指してきた。しかし異次元の金融緩和で市場にはジャブジャブカネを流し長期金利も低く維持してきたが物価は2%上昇にほど遠く、今回の日銀の「マイナス金利政策」で市場は混乱、賃上げも金融機関は先送りを決めた。

マイナス金利の功罪をメデイアは報じるが、内需が好転したというニュースは聞かない。

G20も年中行事になっているが各国が協調して行動する姿勢はなく、自国の経済政策すらままならぬ状況だ。
作家の江上さんがケインズ説得論集の講評に「ものを買えば雇用が増えます。もっとイギリス(日本)製の商品を買わなければなりません。国内の雇用を増やすには国内で生産された商品を買わなければなりません」と書いている。

しかし、これを買って使えば生活も楽しくなるという商品が見当たらないのだ。


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