2018年3月31日土曜日

今日の新聞を読んで(146):アベノミクスでは経済財政改革の展望なし?


あれだけ安倍総理が所信表明の度に「経済成長と財政再建は車の両輪」とアベノミクスのエンジンを再加速すると言っていたが、そもそも「捕らぬ狸の皮算用」で高い成長率の設定で計画したために計画通りに行かず2020年までに展望が開けないのだ。

2%の物価上昇で脱デフレ、18年度名目経済成長率3.9%も実績は2.5%、65兆円の税収増を期待していたが今は50兆円を越えるぐらいか。確実に税収増になる消費税増税も2度にわたり延期し財政出動するも赤字の積み上げ、補正予算を組むも歳出削減の逃げ道になっている。

今までの3年間の安倍政権の経済・財政一体改革の取り組みで2020年代を見ると「展望は開けない」と経済財政諮問会議は言う。「経済再生なくして財政健全化なし」は安倍総理の経済財政スローガンであり、2015年に経済財政再生計画をたてアベノミクスで大きな成果があったと評価するも更なる構造改革が必要というのだ。

そこで久しぶりに29日開かれた経済財政諮問会議の議事録を見ようとHPを開いたが議事録はまだ公開されず、会議に提出された資料を読んでみた。

経済財政再生計画では3本の柱からなっている。「デフレ脱却、経済再生」「歳出改革」「歳入改革」だ。政府、国民が一体となって制度改革に取り組むと言う。

長い期間のデフレで日本経済は萎縮していると言うのだろう。円高、株安に悩まされていた。円高なんて以前は日本の経済の強さを表現しているものと思っていたが、今は成長の足かせなのだ。

アベノミクスの第一の矢で異次元の量的緩和を主張、白川日銀総裁に変えてリフレ派(?)の黒田総裁を日銀に送り込み、「異次元の質的・量的金融緩和」策に出た。80兆円という巨額のカネを市場に垂れ流したのだ。

黒田総裁や岩田副総裁は「市場の期待感」に訴え、市場は反応し円高→円安、株安→株高で急激に市場が変わってきた。安倍政権はアベノミクスの成果と言うが、専門家の間では欧州の投資家が日本市場を狙っていたタイミングと一致しただけという。
安倍総理は日本経済をいろいろな経済指標の好転で評価して見せたが、アベノミクスが期待する「経済成長」→「税収増」→「財政再建」のシナリオは計画どうりには言っていない。

PB赤字も161718年度GDPの1%に減らす計画だったが今は2.9%、2020年の黒字化は無理なようだ。

歳出改革では歳出抑制が進む。社会保障費は伸びを5000億円に抑える。75才以上の医療負担も1割から2割に増えそうで弱者に厳しい改革が進む。高齢化対策の予算を少子化対策に振り返ると言うがどうなっているのか。

歳出抑制を進める一方で、景気刺激に毎年度補正予算を組み取り組んでいるがこれが歳出抑制の「逃げ道」になっているというのだ。

一方、歳入改革も歳入増加に向け方策が検討されているようだが経済成長の下振れで税収も4.3兆円不足するという。消費税増税も先送りすれば約5兆円が吹っ飛ぶことになる。最近政府は増税分の使途を変更すると言い出した。

経済財政諮問会議ではこれではいけないので、構造改革を進めると言う。その内容は戦略的情報発信、合成サービスにAI、ICTなど、規制緩和だがよく分からない。Alやロボットが成長分野に挙げられているが、今まで人間がやっていた仕事にAlやロボットが進出してくると雇用減に繋がり、消費は更に伸びなくなるのではないか。

ある本で「テクノ社会主義」が台頭してくるかも知れないと予測する専門家もいるが新しいンテクノロジーが社会を変革している時に人間をどう守っていくのか。必要だろう。

規制緩和、戦略特区構想で従来の厚い利権者の岩盤に風穴を明けることも大事であるが安倍政権では森友学園、加計学園疑惑で見るように権力者(安倍総理)の友人に利権を与える公正、公明な行政に逆行する事態も出て来ている。

従来の利権者を押さえ込んだと思っていても新しい利権者が生まれてくるだけなのだ。

今、アベノミクスを推進しようとしているのは安倍総理に黒田総裁ぐらいか。ポスト安倍の候補者は見直しの発言をしている。

そもそも異次元の量的緩和策は「市場の期待感」に訴えるだけなのだ。おカネを市場にばらまけば実質金利は低下する。企業は低金利で事業を拡大することが出来ると言うが、物価も上がるとなると私たちは生活に困るので支出を抑える事になる。いろんな立場で考え方が異なるのだ。

そもそも国内需要が不足している。だからいくら金利が低いと言っても手を出す企業家はいない。テレビである経営者が言っていた「需要が高ければ借金してでも投資する」と。

「金利が低ければ投資に向かう」という実証があるのか。日銀はどういう根拠で「異次元の金融緩和」を継続しているのか。

確かに2%物価目標はグローバルスタンダードになっていたが、今先進国の中央銀行は拘らず縮小、出口戦略に向かっている。FRBは利上げのタイミングを狙っている。金融正常化に向かっているのだ。IMFの専務理事も「各国で事情が異なるのは仕方ないこと」と発言していた。

日本は何故2%に拘るのか。それには安倍総理の意向が大きい。国会審議でも「まず2%物価目標の達成」を主張している。安倍政権の目玉政策であり達成に拘るのだろうが「諦める」と言う事はアベノミクスの破綻に繋がり安倍政権の経済運営の責任が問われる。

専門家の間でもアベノミクスの評価は低い。「アベノミクスの見直し」が喫緊の課題だ。「捕らぬ狸の皮算用」で国民の期待感ばかり煽っていてはいけない。


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