2019年1月17日木曜日

他人事ではない、英国のEU離脱国民投票:「合意協定案」を230の大差で否決とは


他人事ではないのだ。日本だって安倍総理が前のめりの憲法改正も国民投票の多数決で是非を問うのだ。どんな多数決を考えているのかわからないが、イギリスと同じ過半数なのだろう。国を二分するといわれているのだ。EU離脱で混乱しているイギリスの二の舞にもなりかねない。

民主政治の先進国として日本からも多くの政治家が見学しているが、そのイギリスで多数決が大きな問題になっているのだ。3年前のイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票は52vs48の僅差で賛成になったが、今EUとの「合意した協定案」が230票の大差で敗れたのだ。

離脱反対かと思ったらそうでもない。メイ首相が「合意した協定案」を否決したのだ。だから3日以内に代替案を出す必要があるがEUの態度も強硬だ。「合意なき協定案」ではますます混乱するという。

EU圏の市民、経済にとっても大きな影響がある。その見通しが立たないために混乱が起きているのだ。世界経済の成長の足を引っ張ることにもなる。

EUからの離脱問題は多くのEUで抱えている問題だ。移民問題でその受け入れを容認するかどうか。国民の生活だって苦しいのだ。そして財政問題に絡み緊縮財政を強要される。「主権」はどうなったんだ。「自分の国のことは自分たちで決める」という根本問題に発展している。

そしてイギリス特有の問題としてアイルランドと北アイルランドとの国境管理、税関をどうするかという問題を抱えている。

離脱を巡る再投票の動きもあるが、3年前の失態は何だったのか。

国民投票の結果がわかってから「こんなはずではなかった」「やってしまった」と反省の声が大きかった。国民は十分な情報を与えられていなかったようだ。それでも「この辺で変わった方がいい」という考えが多かったのだろう。

そもそも「52vs48」の僅差でも多数決は多数決と言うことになるのか。

投票率が50%で賛成票が50%だったら有権者の25%の賛成でもの事が決まるのだ。安易な多数決の民主政治と言えるのではないか。

直接民主主義である多数決による住民投票が理想的な民主主義なのか。

「本当にそれでいいのか」、朝日新聞(2015.6.14)の読書欄に「多数決を疑う・・社会的選択理論とは何か」(坂井著 岩波新書)に対する評論家武田さんの書評が目についた。

それによると多数決は必ずしも多数の意見を反映していないと憲法改正での国民投票を例に多数決の正当性を論じている。

多数決の賛成条件は64%だという。

そして住民投票で重要なのは「情報の公開」だ。いま、沖縄では辺野古移設の是非をとう県民投票に「参加するか、しないか」でもめている自治体がある。政府から強い圧力があったのかどうかわからないが、地方自治の最重要課題ではないのか。

橋下さんが大阪都構想で是非を問うた結果、51%で否決されて例があった。メデイアの調査で否決が多数だったことに危機感を感じ橋下さんは裏で数々の多数派工作をやったことがメデイアで報じられたが、これではだめだ。

信を問う自治体は中立的でなければならないし、情報の公開を渋ってはいけない。イギリスの例のように「やってしまった」ということになりかねないのだ。

我が国の憲法改正での国民投票を考えてみよう。

自民党案では自衛隊表記など4項目ほど改正が予定されているが、一括投票なのか個別投票なのかわからない。

多数決と言うことになると過半数の賛成で成立するのか。

投票率×賛成(反対)率だ。投票率50%、賛成率51%でもOKとするのか。それとも投票率75%、賛成率65%で多数決とするのか。

そこが大事なのに一向に国会では論じていない。このままいけば低投票率に加え51%の賛成で決まるのか。そうなると安倍総理の思うつぼだ。

イギリスのEU離脱の国民投票は他人事ではないのだ。

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2016.7.1掲載
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