経営不振の日産に再建の助っ人としてやってきたのか、本質的には日産を食い物にして個人資産を増やす守銭奴だったのか。高額報酬を隠すための有価証券への過少報告で逮捕された事件に始まりゴーン被告の数々の悪事には驚くばかりだ。
経営再建のため迎え入れたゴーン被告だが、それに対する日産側は負い目もあって取締役会はYESMANで監督機能はなく、権力が集中した。再建中は良かったもののV字回復後は倫理観にかけた守銭奴の本領を発揮し足を踏み外したのか。
2兆円にも及ぶ有利子負債を短期間に返済、5工場の閉鎖と20000人を超えるリストラは人情熱く、柵のある日本の経営者ではできなかっただろう。工場で若者と会話し、部品供給網の整理、不採算車種の整理をする一方で、名車と言われた車種の復活など日産らしい構成に持って行った成果は評価できるだろう。
ことあるごとにテレビで身振り、手振りで主張するゴーン被告の姿に感心させられたものだが、高額報酬の隠ぺい、自己の損失を日産に肩代わりさせて行為、関連国に住宅を購入させ、家族を住まわせる私物化、統合会社を設立し10億円もの報酬を得る業務上横領の疑いなど日産、三菱を食い物にした事件は決して許されるものではない。
監督権限の弱い取締役会、報酬決定権のないガバナンスの欠如した日産の経営をいいことに権力を集中させ、人事、組織を自分のやりたいように動かせたことはゴーン被告にとってはうまみのある日産だったのだろう。
さらに、経営不振で苦しむ三菱自動車にも手を差し伸べルノー、日産、三菱の三社連合で売上高、利益率の向上にも務めた。しかし、現在はルノーも経営不振で、日産の技術、配当なしではやっていけない状況で、ルノーが日産の株43%を持つことから大株主のフランス政府はルノー、日産の経営統合を画策してきた。
これに日産が抵抗している。日産の主体性がなくなる危険があるのだ。当然だろう。しかし、何故43%の議決権を日産はルノーに与えたのか。当時、日本でも日産救済策が出ていたと思うが、それでもルノー案が日産にとっては有利だったのか。
フランス政府もゴーン被告を解任し、新しい体制を構築する動きが出てきたが、ゴーン被告を見限る理由は経営トップの長期不在を上げている。ゴーン被告の不正行為に対しては見て見ぬ振りをしているのか。それとも海外の子会社での出来事でルノー本体での不法行為ではないとみているのか。
先の新聞報道ではゴーン被告の信任が厚く、日産の再建にもかかわった女性副社長が1億円弱の報酬を得ていたことが報道された。ルノー本体にも飛び火が考えられる。
ゴーン被告はいろんな不法行為を冒しているが、その中にはあらかじめ弁護士と相談してやったことも含まれている。この場合のゴーン被告の責任をどうかだ。
会社法でいう取締役の忠実義務に対してはそれなりの配慮を行ったと主張できるのか。相談したのは側近連中である外国人で弁護士資格を持つ要職者だ。日本の法律には疎く、「グレーゾーンもOK」と判断したかもしれない。
でも「日産に実損を与えていない」と無実を主張している案件もあるが、「実損を与える恐れがある場合も犯罪は成立する」のだ。
新聞報道ではガバナンス改善特別委員会が実施されたそうだ。人事、報酬決定権がゴーン被告に集中していたこと、企業の経営者として倫理観にかけること、取締役会の監督機能不全が今回のゴーン被告の不正行為につながっていることが議論されたようだ。
西川さんをはじめ、日産側の経営者の責任も回避できない。司法取引での犯罪事犯ではあるが日産側の責任をどう問うか。
また、国税はどう動いているのか。脱税の疑いが出てくれば新しい展開になる。
海外の優秀な経営者を雇用するとか、国内市場は縮小する中で海外への展開は必要になるだろう。気を付けなければならないのは国内で優遇措置を受け成長した先端企業が経営不振で海外の企業に買収されることだ。当然に不平等な契約になっている可能性もある。
ゴーン被告も「自分はグローバリゼーションの申し子」と言っていたが米国流グローバリゼーションは行きつまった。それに代わって台湾、中国流グローバリゼーションに乗っかっていいのか。
トランプ大統領の「保護主義」は米国流グローバリゼーションの見直しの機会だ。日本も国内需要を喚起する必要があのであれば、グローバリゼーションではなく、日本式経営を取り戻す時期ではないのか。日本にだって優秀な経営者はいるのではないか。
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