2019年1月27日日曜日

深刻な金融危機脱出?:日銀の政策転換が実現できなかったことにあるのか


「失われた20年」と良く聞くがバブル崩壊後の金融危機で長い景気の停滞を日本は招いた。海外も同じ状況だったが日本ほど長い停滞期はなかった。金融政策というものは決まっているのに何故だ。誰だってそう思う。何かが違っていたのだ。

読売新聞(2019.1.25)の「金融危機 日銀の苦闘」で白川前総裁とのインタビュー記事が目についた。金融政策の責任者が当時何をしようとしていたのか、何が問題だったのかを知ることが出来た。

白川さんは京大教授を務めた後、日銀の副総裁に就任するが総裁がなかなか決まらずそのまま総裁に昇格した。確かリーマンショックの時だったと思う。

日本経済は長い間の円高、株安で景気回復が遅れていた。自民党が政権を奪取する前から「市場にもっとカネを流せば円安になるのが分からないのか」と問われるようになり当時の民主党・野田政権の末期には「更なる金融緩和」を要求されるようになった。白川さんは急激な金融緩和にはウンと言わなかったが、政府は日銀法改正まで持ち出しけん制した。

そのうちに政権が変わり安倍政権になって政策委員2名の任期終了で新たにリフレ派の委員を日銀に送り込んだ。その結果、白川さんは任期を6ヶ月ほど残して辞任したのだ。

その後、安倍総理の意を汲んだ黒田さんが「2年で2%物価目標」を掲げて総裁になり日銀は今も2%物価目標達成まで異次元の金融緩和継続策を執っている。

「日銀は何をやっているのか」と批判される立場だったが、日銀だって既に「緩和な金融緩和をやっている」という立場だったと思う。

白川前総裁の苦闘の1つは、論評と政策は異なる。難しいのは政策転換の実現という。日銀はいろんなシミュレーションして金融政策を打ち出すが、政府や大蔵省、エコノミスト、経済評論家に支持されず、政策の転換が出来なかったというのだ。

19891229日は株価38915円を付け景気は空前の活況を呈した、5月に日銀は公定歩合を3.25%に上げたが、利上げが遅れバブルを止められなかった。

しかし日銀は引き締めの修正論、情報発信していたが金融政策の修正に説得力がなかった。各方面の支持が得られなかったのだ。

日銀は孤立無援、政策論議は経常黒字圧縮、国際政策協調の必要性、円高再燃懸念の議論に支配される空気がまん延し怖かったと述懐する。

更に、銀行はいずれ倒産する。経営難に罹った金融機関を処理する枠組みを91年に大蔵省に提案した。日銀が提案したのは公的資金の注入、受け皿金融機関の設立日銀の出資等だった。しかし大蔵省は受け入れなかった。

92年になって地価の下落、信用金庫の破綻が続いた。金融危機が深刻だったのは92年呉から93年春だったと白川前総裁は言う。

白川前総裁の苦闘の2つめは金融と実体経済の相互作用に関するマクロ経済の認識を共有出来なかったことだ。大蔵省を説得できなかったことに悔いが残ると白川前総裁は言う。

それから日本経済は長期のデフレに突入するのだ。

大規模なバブルがおき、崩壊、金融危機により低成長は避けられない。大規模な金融緩和を実施したにもかかわらず欧米だって同じなのだ。唯、失われた20年という見方に白川さんは違和感を覚えるというのだ。

2000年以降、GDPの伸びは低いが、1人当たりのGDPの伸びは他の先進国に較べても低くないのだ。

白川前総裁は問題は先行きの持続可能性だという。ここが今も日銀と政府の考え方が違うのだ。

日銀は金融政策の他に高齢化や労働人口の減少、情報通信革命への対応への取り組みを提言するが、政府は低成長の最大の要因は物価と言い、エネルギーが本来の課題に向かっていないのだ。

日銀の黒田総裁も金融政策一時の時間稼ぎ、財政政策などの必要性を説いているが、安倍政権は相変わらず「2%物価目標」達成を目指す。その安倍総理の意向で日銀も金融緩和縮小より金融緩和継続を目指さざるを得ないのだ。

金融政策は日銀の仕事と言いながら政権が首根っこを縛る。

白川前総裁の話を聞いていて、日銀が自分の判断で金融政策を推し進めていたらうまく行ったのだろうか。バブルの発生を防げたのだろうか。

でも日銀にも負い目がある。誰が総裁の時だったか忘れたが、金融政策の正常化を目指し政府の反対を押し切って利上げに踏み切ったが、景気後退で慌てて修正する事もあった。政府、大蔵省は「それ見たことか」と日銀を敵視したことがある。

FRBもトランプ大統領から利上げに反対されているが、日銀も政府の意向で思うような政策実行が出来ない。政府は人気取り優先なのだ。

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2018.11.04掲載
金融政策 白黒付けよう:黒田総裁ダメ、では白川前総裁ではどうか
yamotojapan.blogspot.com/2018/11/blog-post_4.html




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