金融政策で白黒付けようではないか、黒田総裁ではダメ、では白川前総裁ではどうなっていただろうか。安倍政権下で黒田さんはリフレ派による「異次元の量的緩和」を推進したが、物価上昇率の2%に覚束ない。一方の白川さんは「緩やかな量的緩和」を継続していたが、野田政権末期から安倍政権にかけての「もっと量的緩和を」の要求に抗しきれず任期途中で辞任した。
白川さんの量的緩和策は世界に先駆けての非伝統的金融政策で、アメリカが金融政策に悩んだとき、白川さんは国際会議で「日本を見習え」とアドバイスしたところアメリカから「口出しするな」と批判されたが、FRBも量的緩和に踏み切った。
ところが日本より遅れて量的緩和策を取り入れながら、日本より早く縮小、出口戦略をとり今は利上げで金融政策の正常化へ向かっている。一方、日銀は物価上昇2%が達成出来ず異次元の量的緩和を継続中だ。
日銀とFRBの違いは何だったのか。FRBは物価と雇用増20万人を基準に考えていた。経済は好転、雇用も20万人を切った事もあるが出口戦略に向かった。日本は安倍政権との関係で「2%目標」が優先だ。政権と中央銀行との距離感が政策の違いになっている。FRBは自立性を謳っているが、最近トランプ大統領からは「利上げ」反対の攻撃を受けている。
安倍政権になって白川さんは「言うことを聞かない」と見て、リフレ派を政策委員に送り込むと同時に白川さんを任期途中で辞任させた。
安倍、黒田ラインは、アベノミクスの3本の矢の第1の矢に「異次元の量的緩和」を訴え黒田さんにして「2年2%」の語呂で「2%物価目標を2年で達成する」と記者会見で豪語した。
市場にカネを流すマネタリーベース増は、当初円高から円安へ展開し輸出産業を中心に景気がぶり返した。
アベノミクスのシナリオは「マネタリーベース増」→「長期金利低下」→「投資増」→「景気回復」→「消費増」→「物価上昇」、家計収入、税収増も期待したが、家計収入増のトリクルダウンは発生しなかった。この辺が安倍政権のつまずきだ。海外の著名な経済学者が「トリクルダウンなんて今まで見たこともない」と呆れかえったほどだ。
黒田総裁は「2%」が達成出来ないとみると更なる緩和策を打ち出した。他の資産の買い入れ、デンマークで始めた「マイナス金利」等だ。目立ってきたのは副作用で銀行の経営が悪化してきたという。金融システムの安定が日銀の仕事の1つであるが狂ってきた。
一方、物価は2%を達成していないが、低率で安定しているではないか。物価の安定は保っていることになる。雇用も内容に問題はあるが改善している事は確かだ。
そこでリフレ派で異次元の金融緩和の旗振り役だった浜田顧問が「雇用が改善しているのだから良いじゃないか」と言い出した。アベノミクスの第一の矢は折れたのか。
ところで白川さんだったらどうなっていたか。経済は予め実験をやって効果が出れば採用すると言う事が出来ないので一概に判断できないが、「2%物価目標」が達成出来ないと見た時に異次元の量的緩和を縮小し、出口戦略に移ったのではないか。
何故、達成出来ないのか真剣に検証したはずだ。
「異次元の量的緩和」である金融政策であるが、どんなときでも新しい政策を導入するときは「止めるときの条件」をきちんと決めておくことだ。皆知っていることだが、始めるときの判断は楽だが、「止めるときの判断」は難しいと言う。だから当初からきちんと決めておくべきだったのだ。それが出来ていないからダラダラ効果のない金融政策を継続し傷を深くしている。
白川さんは、日本経済の問題は金融政策ではなく、政権の財政政策などにあると言う。
曰く「少子化、高齢化、人口減少」など若者の将来不安を払拭する政策が必要なのだ」と。
異次元の金融政策、非伝統的金融政策は「一時の時間稼ぎ」、政権の財政政策などが重要になると言う事は黒田さんも白川さんもコメントしていた。
国、地方あわせての借金は1050兆円ほどになり対GDP比245%で先進国一悪い。GDP世界第2位の中国が対GDP比255%と言われている(中国のGDPは1000兆円ぐらい)。
欧米先進国は赤字財政をGDP比3%以内に抑える努力をしているが日本はどうなのか。安倍政権になっても赤字は積上がっている。
所信表明でPB黒字化を2025年に達成すると言うが、安倍さんの任期を遙かに超えている。誰が約束を守るのか。出口戦略も含めて自分が任期中に何とかすると言う。
日銀の役目である「物価の安定」は2%までは未達だが、今でも安定しているではないか。どうして今のままではまずいのか。「本当に今デフレなのか」というとデフレではないはずだ。安倍総理はデフレに逆戻りしないようにしたいという。
日本の経済状況下で2%を達成出来たとしても、高い物価は逆戻りする危険をはらんでいる。
景気下振れの要素は一杯ある。消費税10%へ上げたとき、出口戦略に移ったとき、東京オリンピック後のバブルの弾け、トランプ大統領の対日攻勢、世界経済をけん引してきた中国経済の失速、韓国の政変など挙げれば切りがない。外国人労働者の受け入れは日本人労働者の賃金を下げる圧力にもなる。
金融システムの安定化では既に量的緩和継続のため銀行経営の悪化が伝えられている。それ以外に国債市場、株式市場にも少なからず影響を与えている。「市場の見えざる手」も働かない局面を生み出しているのだ。
そして最後に国民、市場との対話が必要と言われている。
日銀の金融政策決定会合の度に市場は憶測で動いている。儲けの糸口を探っているのだ。
しかし黒田さんのコメントは何時も同じで「物価。経済に何かがあれば更なる緩和を考える」という。2%目標も先送りばかり、日本経済は「緩やかな拡大」とみている。
黒田日銀は安倍政権と距離を置き、独立性を発揮しなければならない。安倍政権が認めるリフレ派で政策委員が固まった状況だが、今は量的緩和政策に慎重派が増えているようだ。
「黒田総裁よ 安倍と共に去りぬ」で良いのか。
白川さんだったら「時の政権と距離を置き日銀のスタンスを確保」したはずだ。
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