2018年11月5日月曜日

米中貿易摩擦の行方?:共倒れか、中国譲歩でトランプ大統領の思い通り?


米中貿易摩擦の行方が見えてきたか。中国が譲歩しトランプ大統領の望み通りになるか、それとも共倒れで世界経済危機の勃発か。これにはアメリカの対中国貿易では赤字体質が常態化していたこと、中国の目立つ覇権主義に米国が警戒感を強めていることが関連し易々と解決はしないはずだ。

最悪の場合は共倒れで世界経済危機を引き起こしリーマンショック後が再現しそうだ。

米中間の懸念事項としては

中国の覇権主義に米国が警戒していることだ。南シナ海の人工島建設で周辺の領海、領空圏を得ようとしている。一帯一路は海のシルクロード、中所得国の経済成長をうたっているが内容は軍事化する港湾建設でおまけに大きな負債を抱えさす結果になりそうだ。

中国のGDPは2030年には米国を抜いて世界第一位となり世界のGDpの23%を占める。そして世界機関への拠出金を増やせばIMFの本部がワシントンから北京に代わることも想像できる。

そして今回の米中貿易摩擦は、中国から米国へ約5000億円、米国から中国へ約1300億円とトランプ大統領が指摘する歪さが出ている。

このほかにトランプ大統領が「保護主義」「2国間貿易」を主張すれば習主席は「自由貿易」「多国間貿易」を主張しことごとく対立する。

習主席が「中国もアメリカと対等な関係を主張すること」は米国に警戒感を与えるからと長老が批判する場面もあったようだ。

とりあえずトランプ大統領は中間選挙前に実績を支持者に訴えるためには米中貿易摩擦の解消がわかりやすいと判断したのだろう。

それが米中による高関税戦争、報復措置のやり合いになってきた。

米国は7月6日関税引き上げ第一弾、8月23日第2弾、これで合計約27.5兆円、9月24日には第3弾で約22兆円、さらに第4弾として約30兆円
これで全輸入品に高関税をかけるというのだ。

これに対して中国も負けてはいない。3回の報復措置で計1100億ドルに相当するというが、米国からの輸入額は1300億ドルで「弾切れ」の状態だ。

クルーグマン教授も確か言っていたが、中国は部品や設備を日本や韓国から輸入し安価な労働力で組み立て最終製品を輸出しているのだからトランプ大統領が言うほど儲かってはいない。

中国にとっては不利であるが経済指標も悪化している。

GDPの8割を占める個人消費も9%から8.8%へ、投資も0.5ポイント減少、そこで積極財政へかじ取りし公共投資を増やすという。中国が発表する指標だから信頼性には問題がある。

米中貿易摩擦は世界のGDPも0.5%下げ、米国のダメージは0.8%だが中国を含めたアジアは0.7%ダウンするらしい。

リーマンショック後中国は約57兆円投資し世界経済をけん引したが中国の債務は対GDP比255%で金融危機の可能性まで出てきた。

生産年齢人口も減少、労働力不足で輸出競争力も損なう状況だ。

しかしそれでも2030年の米中の名目GDPは中国23%、米国20%、欧州15%インド5%、日本は4%だ。米国と中国が逆転するのだ。

一方、米国だって痛手だ。

トランプ大統領の支持基盤である農業団体は中国への輸出が減ることで不満を持っている。クリスマス商品などの注文も半減しているらしい。日常品の物価高は米国民の生活を圧迫する。

米国の消費者負担は638億ドル、長期化すれば生産活動、個人消費、さらに投資にも悪影響してくる。

経済界も黙ってはいられない。トランプ大統領の制裁強化でフォードが逆輸入の手に出た。

いつまで関税の掛け合い戦争が続くのか。中国の報復措置も「弾切れ」の状態だ。さらにトランプ大統領が思っているほど中国は儲かってはいないのだ。

でも中国の対米黒字は続いている。9月は約3兆9000億円の黒字、一方で成長率は6.5%に減速している。人民元は10%も下げ、中国は放置していたのでアメリカは「為替操作」を疑ったが、為替操作国と認定はしなかったようだ。

習主席も「今ほど多くの試練と困難があった期間はない。保護主義が悪化、自力更生の道を進まざるを得ない」と言う(2010.10.2)。

一方のトランプ大統領は、制裁開始以来中国経済にダメージを与えている。中国は何らかの合意をするだろう。「合意できる。誰にとっても公正な合意」と11月末のアルゼンチンでのG20首脳会議の折にトランプ、習首脳会談を予定しているようだ。

この混乱で株価は14%下落、米市場も失速している。それにFRBが利上げを目論んでいる。トランプ大統領はFRBを形成した。

このほかに米中戦争は知的所有権の在り方、通商以外にも中国系新聞を使っての米中間選挙への干渉、覇権国としての警戒「封じ込め」、軍事面での圧力強化だ。

注目記事が新聞に載った。中国に「弱腰」と批判され辞任した国務次官補だったスーザンソーントンさんが「トランプ大統領の対中強硬姿勢は「米国自身も破たんする」と警告した(朝日新聞2018.11.3)。

政権内で中国との対話重視派を排除していることにも警告している。

トランプ政権内は主導権争いの権力闘争で混乱している。米国の対中貿易赤字5300億円もしっかり精査すればどうなるか。意外に習政権内の方がしっかりしていたということにもなりかねない。

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