2018年11月17日土曜日

朝日読書欄「激動の時代 日銀の思想と行動」を読んで


朝日新聞 2018.11.17
朝日新聞(2018.11.17)読書欄で白川・元日銀総裁の「中央銀行 セントラルバンカーの経験した39年」で間宮青山学院大教授が書評した「激動の時代 日銀の思想と行動」が目に止まった。

未だ「中央銀行」を購読していないが、白川さんが野田政権の末期、自民党安倍総裁/総理から受けた仕打ち、日銀の独立性を無視するような圧力には批判的だったので当時の事は良く覚えている。

当時、日本経済は長い円高の時代で不振を続けていた。その時、リフレ派が台頭し「市場にカネを流せば円高から円安になる」とマネタリーベースの拡大を言い出した。

民主党から自民党への政権交代の総選挙でも安倍総裁を始め、自民党の若手候補者まで「そんな事が分からないのか」と野田政権、日銀を批判した。

野田政権末期には日銀に「緩やかな量的緩和からの拡大」を要求したが、白川さんは頭を縦に振らなかった。そのうちの日銀法改正まで持ち出して圧力をかけた。

自民党安倍政権になり、政策委員の任期交代でリフレ派委員を送り込んできたのを見て白川さんは任期を半年残して辞任した。安倍総理は黒田総裁を送り込んで「異次元の量的緩和」を強行、「2年で2%」を黒田総裁は約束した。

白川さんも量的緩和政策をとってはいたが、政府が要求する「大々的」ではなかった。正統派経済学者は非伝統的金融政策と批判したが、「2年2%」はインフレ期待感を訴え経済の活性化を図る目的だった。

しかし、白川さんは目的と手段が逆転し2%達成が至上命令になると主張したが、今考えると2%物価目標達成が至上命題になり出口戦略に向かえない状況になっている。

中央銀行の目的は物価と金融システムの安定だが、2%は達成出来なくても物価は安定していないか。逆に異次元の量的緩和の行き過ぎで銀行経営にも支障が出て来た。金融システムの安定に危険が生じてきた。
日銀内のリフレ派でしめる政策委員の中でも慎重論が出て来たという。

書評では、本書を批判する者はマネタリーベースを激増させても何故2%のインフレ率を達成出来ないのか、何故経済成長率が微々たるものなのか、これらに説得的に説明する義務を負うだろうという。全く同感だ。

恐らく日銀の政策委員、政府関係者も購読しているだろう。「異次元の量的緩和」はアベノミクスの第一の矢でもある。浜田さんが言うように「雇用が改善したから良いのじゃないか」で終わって欲しくない。

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