日銀をはじめ、中央銀行の総裁はどうして上がりにくい物価を無理してあげようとしているのか。読売新聞(2019.5.30)の「脱デフレ「官民と一体で」というトリシェ前ECB総裁とのインタビュー記事が目についた。日本銀行が2%の物価上昇率目標を掲げている意義を強調している。
当然だろう。日銀主催のシンポジウムに招かれての来日なのだ。日銀を批判することなど出来っこない。
トリシェ前総裁は、人口減対策は政府と企業が一体となって取り組む必要があるが、人口減は日本特異な問題であり、賃上げや女性登用が問題になると指摘する。
FRB,ECBも2%物価目標を掲げて中・長期的に安定することが重要であるが、日本は他国以上に困難なようだと見ている。
デフレ脱却には強力な緩和が必要であるが日銀の金融緩和は低金利を維持し銀行収益も悪化し副作用をコントロールする必要がある。
世界的に見ても競争が激化し物価は上がりにくくなっているが、FRBも2%物価目標を達成したが持続できず、従来の金融政策再構築へ乗り出している。日本も今後どのような経済政策の舵取りを進めるかが問われているという。
概ね今まで中央銀行の金融政策でいわれていることの繰り返しだ。しかし日本は他国以上に困難さがあるというコメントにはうなずける。日銀が出口戦略に遅れを取っている間に国際経済は従来の金融緩和を再び必要とし出したのだ。
指摘されているように「人口減対策」、「賃上げ」は最大のテーマだろうが、いろんなことで批判される機会が多い安倍総理だが、安倍総理なりによくやっているのではないか。逆にこれからは日本企業の経営者の意識改革が必要ではないのか。
人口減は日本の市場を縮小、内需拡大どころか輸出に頼るようになり貿易不均衡、経済摩擦の原因になる。トランプ大統領が「公平な貿易」を要求しているのもそのためだ。
一時は人口爆発が社会問題になったことがあるが出生率を1.4から急に1.8に上げたところですぐには効果が出てこない。
若い男性が結婚し子育できる環境整備が大事だが、その若者が非正規労働で安い賃金では結婚の決意もできない。当然に女性が家計を助けるために社会復帰するが、幼児教育、待機児童問題が出てくる。政治は対応しようと努力するが、問題は企業にある。海外の労働を受け入れようとするが同一労働同一賃金では低賃金の意地にならないか。
「賃上げ」も時間給1000円、安倍総理の経済界への度重なる賃上げ要請が続くが、経済の好循環での賃上げではない。地域格差も合わせアベノミクスの成果が実感できないという。
先の経済財政諮問会議で民間議員が時間給1000円を提言したが、さっそく日本商工会議所は時間給1000円反対を言い出した。中小企業がやっていけないというのだ。
中小企業の賃上げに必要な請負単価、サービス単価はいくらぐらいなのか。大企業が請負金額を抑えていないのか、消費者が行き過ぎた安いサービスを求めていないか。
中小企業やサービス業の従業員の賃金を守るためには、本当の価格はいくらなのか。ただ安さを求めているだけでは解決できない。
消費者の中でも割合が大きい年金生活者にとって、支給額の削減が続く。「安さ」は魅力だが、中小企業、サービス業の従業員の賃金を守るためにはどの程度支給額を上げる必要があるのか。
これが家計への所得の再分配ではないのか。
大企業、富裕層への優遇税制、法人税の見直しも喫緊の課題ではないか。タンス預金に課税など考える前に、儲けを偏に内部留保に回すことこそ経済の好循環に支障となっているのではないか。
大企業、富裕層はそれなりの社会的責任を果たすべきだ。
2%物価目標を論じる前に税制など諸制度の洗い出しが必要ではないのか。自民党政権でできなければ他の政権を樹立すればいいだけの話だ。参院選がその第一歩になる。
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