2020年1月1日水曜日

密出国のゴーン被告から何を学んだか


昨年末から今日の年始にかけてテレビ、大新聞の一面は日産前会長のゴーン被告が海外逃亡を企てレバノンにいることを報じた。強要された保釈を検察の反対を押し切って裁判所が認め、辣腕弁護士で名高い弁護士陣は名声を博したが残念ながら今回の「密出国」でそれぞれ汚名をかぶることになった。

そして日産再建のための工場閉鎖、大量の人員整理で犠牲になった人たちは今回のゴーン被告の密出国をどう感じただろうか。

今回の日産前会長ゴーン被告の事件は私たちに何を教えたか。

外圧に弱い日本は政治面で証明されていたが、裁判でも「人質司法」批判に屈したのか。

辣腕の評判が高かった弁護士たちもゴーン容疑者の拘置所出所時の変装はお笑い者だったし、今回の保釈でも被告をしっかり管理すべき立場にあったが、肝心のところで無視され赤恥をかかされて「無罪請負人」の評判は台無しになった。

「人質司法」と悪評判だが保釈に対する考え方が変わるだろう。むしろ厳しくなるのではないか。でも今回の事例を挙げて説明できるのではないか。

グローバリゼーションで海外の経営者も日本企業の役員に就任する機会が増えているが、中東出身となると悪事のネットワークにも注意が必要になる。

出入国管理など一般国民とは違って権力者、政府間外交でルールが簡素化されている。権威を見せ付けるのもいいが、決められたルールを地道に守る努力も必要だ。

ゴーン被告はなんだったのか。

日産が経営不振に陥ったとき、日本企業はもちろんのこと海外からも支援の手がさし伸ばされたようだが、ルノーが一番日産にとっては有利だったのだ。そしてゴーン被告が日産の再建に乗り込んできた。主力の村山工場などの閉鎖と大量の首切りが断行され、2年で多額の借金を返済し再建に成功、カリスマ経営者としての名声をゴーン被告は勝ち取った。しかし内実はゴーン被告の再建案ではなく、日産が作成していた再建計画を大胆に遂行したまでだ。しがらみが無かったことが決断に拍車をかけた。

2年で目標を達成した後、ゴーン被告はその後の目標をなくした。しかし、丁度そのころアメリカでもGM社などが経営不振に係り再建を目指していた。そこへゴーン被告が名乗りを上げたようだ。「自分ならできる」と。しかし、さすがはアメリカだ。日本とは違う。

ゴーン被告は再建という時点では力を発揮できるが、平常時の経営力には期待できないことを見抜いていた。

ゴーン被告はそれ以降、目標を失い興味は私利私欲に走る結果になった。日産を食い物にすることだ。

その結果金融商品取引法違反、会社法違反の特別背任事件を起こした。そのスケールは大きく日産社内調査委員会の調査で「経営者特有の事件」とまで言わしめたほどで、担当役員もこれ以上加担できないと司法取引でゴーンの悪事をばらす結果になった。

当初は弁護人に特捜部の内情に詳しい特捜部長OBを選任し、保釈請求を何度も試みたが、かなえず、出所したいがために「無罪請負人」との異名を取る弁護士に代え強力な弁護団を結成した。

執拗な保釈請求と海外からの「人質司法」と批判される結果、裁判所も検察の反対を押し切って保釈に応じた。住居は東京、海外渡航禁止、妻との接見も条件付など15ほどの条件がつけられ、弁護士事務所が仕事場になった。

時々ゴーン被告の姿をテレビで見ることはできたが、「公平な裁判を受けられない」「有罪ありきの裁判」と不満たらたらで、「自分は無罪」「すべて会社のため」と強弁する始末だ。公判前整理手続きも進み弁護団も「控訴棄却」を言い出した。

そんな時、今回の「密出国」を企て全世界に衝撃が走った。「無断出国」「保釈条件違反」「レバノンに」と文字は躍った。一方弁護士は「ニュースでしった」「寝耳の水」と正月休みの隙をつかれたようだ。

辣腕弁護士どころか保釈での責任を追及すべきだ。保釈を強要するが自分たちには責任はないとは調子が良すぎないか。

1日のメデイアの電子版で今回の密出国の内容が分かってきた。

レバノンにいる妻がある組織と綿密な計画を練ったそうだ。トルコの航空会社のプライベートジェット機が関空に回され、東京からゴーン被告が楽器箱に入れられ関空に運ばれたが、出国手続きがどうだったか不明だが簡単な審査で終わったか、外交特権を使ったか。

関空からトルコに飛び、別のプライベートジェットでレバノンに正式入国したそうだ。

何故、レバノンを選んだのか。本籍地だろうからか。ゴーン被告は「レバノンで裁判を受けたい」意向も持っているらしいが虫が良すぎないか。

年末に裁判所は保釈を取り消したという。正式出国ではなく密出国だ。今後の裁判はどうなるか。初公判は被告の出廷が義務付けられているということは、再入国しなければ無理な話だ。レバノンでメデイアに説明するというが自分勝手は言い分でボロを出すのではないか。

三が日が過ぎればテレビの情報番組も詳細を報道するだろう。一番得をしたのは不利と見られていた地検特捜部ではないか。ゴーン被告はすでに十分に社会的制裁を受けている。


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