2020年1月10日金曜日

ゴーン容疑者密出国を考える(5):メデイアが作り上げた虚像と最後の落とし穴

メデイアが、こんなゴーン容疑者を傲慢にしカリスマ経営者と崇め作り上げた虚像、そして自らの考えを主張し名誉挽回を企てたはずの記者会見も最後にはまった落とし穴だったのか。

日産が経営不振で支援を頼んだのがフランスの自動車会社ルノー、そこの副社長だったゴーン氏が経営者として乗り込んできた。ミシュランで再建し、ルノーでも経営手腕を発揮したという。コストカッターとしてメデイアに取り上げられた。2年で借金を返済しV字回復したが、その内容は主力工場の閉鎖、4万人にも上る従業員の削減だった。

しかし、再建には手腕を発揮するも平時の経営には疑問もあった。それを見抜いていたのがアメリカのGMだ。GMも再建が必要になった。その時ゴーン容疑者も手を挙げたらしいがアメリカは登用しなかったという。その理由は平時の経営能力に問題があると見たのだ。

日本はそれがわからず、再建が終わった2年後からゴーン容疑者の日産を食い物にする経営上の不祥事が始まった。ルノーと日産との統合もさることながら、自らの報酬額、販売代理店との資金の流れで会社法では特別背任、金融商品規正法違反事件が発覚した。

信頼していた外人役員ハハ・ナダ氏が司法取引でゴーン容疑者の数々の違法行為を摘出し検察と組んで暴くことになった。

日産所有のプライベートジェットで日本に入国した際に検察が逮捕、同時にケリー被告も入国と同時に逮捕された。これだけを見ると何か仕組まれた事件に見えるのだ。

自らの報酬を少なく見せる細工をしたり、海外の販売店に流した資金を自ら、あるいは家族の会社に還流させる私利私欲の数々の行為は日産を食い物にした結果だろう。

長い取り調べが始まった。自供しなければ拘留が長引き妻との会えない苦痛を海外からは「人質司法」と批判された。

①8日のレバノンでの記者会見で、数か月の間に2回しか妻に会えなかったという。しかし、妻のキャロル容疑者も日産からの資金を自分の会社に還流させた捜査対象者であり、記者会見の前日に特捜部が妻を偽証罪で逮捕状を取ったと報じた。

日本では妻と自由に会えないことは「女々しいことを言う」と考えられるだろうが海外では重要なことらしい。でも捜査対象者である以上は口裏合わせなどの危険もあり避けるべきなのだ。

②ゴーン容疑者は不法出国で間違いを1件犯したが日本の検察は10件の間違いを犯したと自分に対する罪状を批判する。日本の主権侵害と日本の個別法令違反とどちらが重大か。

日本の主権を侵害してまで何を得ようとしたのか

記者会見では日本の司法制度を批判するのに時間を割いた。海外へ「人質司法」の弊害を訴えた。海外では「推定無罪」だが日本では「有罪ありき」の裁判に恐れをなしたようだ。ゴーン容疑者は本当は小心者だ。公判前整理手続きを聞いているとその傾向が強くなり、国外脱出を決めたのか。人権派弁護団の中には理解を示す発言をする者もいる。

③日本で死ぬか、脱出するか。一審が終わるまで約5年、それから上級審、最高裁まで争うことになると10年ぐらいはかかるだろう。とにかくゴーン容疑者は無実を訴えているのだから仕方ないことだ。

④「公平から逃れたのではない、政治的不公平から逃れた」という。日本では公平な裁判を受けることはできないのでレバノンのような海外で裁判を受けたいという。都合のいいことを言うのではない。「郷に入れば郷に従え」ではないのか。そんなこともわからないグローバル経営者だったのか。日本に来た当初は「郷に入れば郷に従え」「日本を愛している」と頻繁に言っていたではないか。

⑤「日産と検察が組んだクーデター」「事実と違う」と訴えた。会見ではクーデターの首謀者、政府関係者の名前を公表するというので、メデイアも多数集まった。ところが日産の首謀者4人はすでに分かっていることで何ら目新しさはないが、日産の西川さんは「根拠がない」と無視だ。

政府関係者の名前は経産省、官邸関係からの名前は上がっていたが、ゴーン容疑者から公表されることはなかった。記者から「トップが関係しているか」との質問に「安倍さんのことか」と問い直し「関係ない」と言った。

恐らくレバノン政府から口止めされていたのだろう。言うと迷惑がかかるという。

それにしてもゴーン容疑者の饒舌な独演会で終わった。記者の前で自分の意見を言うことを日本では抑えられていたのでうっぷん晴らしにはなっただろうが、集まった記者の感想は厳しい。

⑥「このままでは何の解決にもならないのではないか」と言うニューヨーク・タイムズの記者の質問はすべてを代弁していた。ゴーン容疑者は「今までもミッションインポシブルに対応してきた」と答えていたが、今後の対応に自信があるのか。

日本に再入国し、日本で犯した犯罪は日本の裁判で白黒をつけ密出国も含めてクリアーしてこそ今後の人生に役立つのではないか。それともこのまま密出国者のレッテルを張られたまま余生を過ごすのか。

既に社会的制裁は受けている。もう経営者として雇う企業はないだろう。でも「逃げ得」は許されない。

レバノン政府も日本からの要請でICPO通じ捜査(?)しているようだ。新聞報道ではパスポートを取り上げられ、国外渡航が禁止されたという。でもレバノンはカネが物を言う国だ。日本政府はしつこくゴーン容疑者の身柄引き渡しを要求すべきだろう。何しろ主権を侵害されたのだ。






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