2018年10月16日火曜日

東電強制起訴裁判(1):旧経営陣3人を業務上過失致死傷罪で有罪に出来るか


東電福島第一原発事故をめぐり東電旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴され公判中だが、被告人質問が始まり、「予見可能性」があったかどうか、その認識が問われる局面に入った。

15.7mの津波が押し寄せ主要設備が浸水すれば電源確保が出来なければメルトダウンなど甚大な被害が発生することを旧経営陣3人がどれほど認識していたかだ。

若手研究者らが15.7mの津波を予測し報告しているにも関わらず対策を怠り甚大は被害を及ぼした経営者の責任は大きい。今の惨状を見れば尚更だが、当時、経営者はどう考えていたのか。

当時の東電社内では権力者だった勝俣会長、武黒副社長、武藤常務それぞれの業務上安全配慮義務があったかどうか、提案があれば積極的に対策を講じる義務がなかったのかどうか。

新聞報道を見ていくと、土木調査グループが「最大で高さ15.7mの津波が来る」と報告を上げている。

武藤常務(当時)は一度は「対策に必要な行政上の許認可を調査する」よう指示している。

しかしその後、「研究」と言う事で保留、土木学会に試算の根拠の分析依頼を指示した。これにより対策を取れず甚大な事故につながった。

武藤さんは、一度は対策を進める意思があったのだろうが、後に先送りする結果になったのは何故か。

恐らく防潮堤をかさ上げすれば当時80億円近い費用がかかると言うことでトップ陣にも相談したはずだ。

ところが勝俣、武黒さんは「福島に大きな津波は来ない」と考えていたようで「事故を予見することは出来なかった」ことを主張しているようだ。しかしそこは土木調査グループの若手技術者を信用していなかったと言うことか。
絶体権力者の勝俣さんがそう考えたことが武藤さんの積極的対応から先送りに考えを変えた理由ではないか。

地震調査研究本部が公表した地震活動の「長期評価」を信頼するかどうかもポイントになるだろうが、これは信頼するしかない。

重要な事は日本原子力発電が東海第2原発では長期評価を考慮し重要機器の浸水対策を独自にやったことだ。

長期評価を信用し対策を立てた原発は被害を逃れ、長期評価を無視した東電は甚大な被害を被った。経営の屋第骨もぐらつく結果になった。

今までの公判では分からなかったが、武藤さんがこの点をどう証言するかだ。「勝俣会長の意向」と言えば一気に経営トップの責任になる。注目だ。

しかし、経営者に安全配慮義務を要求するのは難しい。今までの裁判では部門の上司と担当者が責任を問われ、経営者まで責任が及ぶことはなかった。

原子力事業、交通機関など危険な業務に携わっている企業の経営者には他の企業とは違った特段の安全配慮義務を要求すべきではないか。

そして経営トップにも業務上安全確保の義務がある事を判例で認めるべきだ。

担当者やその上司が責任を取って終わっていては重大災害を防止することは出来ない。そういう判例を今回の強制公判で築いていけないか。

今回の福島第一原発の反省は、長期評価→15.7mの防潮堤建設→重要機器、設備の浸水防止→重大事故防止だ。

「安全とは危険であることを知っていること」なのだ。危険であることを知らない東電の経営者に原子力事業を任せていたことが最大の問題だったのだ。

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