2018年10月25日木曜日

第197回臨時国会首相所信表明を読んで:アベノミクスに言及せず、破綻を認めたか


臨時国会首相所信表明を読んでみた。相変わらず与党は評価、野党は批判するが安倍総理の本音はどうなのか。経済政策だったアベノミクスへの言及がなく、やっと破綻を認めたか。「民意」に疎いと批判されていたので原敬元首相を引っ張り出して「常に民意の存するところを考慮すべし」と国民とともに「新しい国造り」に挑戦するというが、今までの政権運営と真逆のことを言っている。

今後5年の政権運営に当たる礎である先の自民党総裁選を見ても、とてもじゃないが民意など反映しそうにない。むしろ石破さんが地方票で45%と確保したことが良識の表れだったのだろう。

あらゆる政策がいろいろ絡み合って影響するので一つ一つを批判することはできないが、苦しい政策運営になるのではないか。どの政策をとってみても成果を得るのが難しい。

その表れが今まで経済政策で言及していたアベノミクスについての記述がなかったことだ。ことあるごとに経済指標の好転、雇用の改善をアベノミクスの成果として挙げていたが、今、顕在化する地方格差、テレビの街頭インタビューでもアベノミクスの成果を得ていないという意見が多くなった。

さらには量的緩和の見直し、出口戦略、2%物価目標にも言及していない。日銀が出口戦略に言及できないのは安倍総理の意向が影響していることは皆知っていることだ。「日銀に任せる」と言うことは責任回避なのだ。出口戦略は国債市場をはじめ金利などへの影響は少なくない。

新しいルール作り、国造りをうたっている。

日本が中心になってまとめているTPPが念頭にあるのだろう。アメリカも一時脱退したが今、また加わろうとしている。RCEPも自由貿易の旗手として新しい世界のルール作りにリーダー的役目を果たそうとしているのだ。

トランプ大統領の「保護主義」が自由貿易の障害になっているが、日本、中国をはじめ先進国はトランプ大統領に批判的だ。しかし、トランプ大統領の二国間貿易は避けて通れない。これに為替条項も加わりどういう影響が出てくるか想定が難しい。トランプ大統領―安倍総理の友好関係もビジネスには無関係なのだ。
「国づくり」では「憲法改正」、「全世代型社会保障制度」、「地方創生」が重要になる。

特に「憲法改正」に安倍総理は執念を燃やすが9条改正で自衛隊を明記し「自衛隊違憲論」を封じ込めようとしているが9条2項を生かしたまま自衛隊明記では違憲論はクリアーしないだろう。

臨時国会で自民党憲法草案を提示するというが「急がず」「改正反対」の民意をどう調整するのか。国会発議を数に任せた強行採決で押し切ることしか考えられない。

その時が安倍総理の引責辞任の時になる可能性もある。

世界のど真ん中でリードする日本を作り上げるのは国を守り、世界の紛争国で治安維持に貢献する自衛隊の存在は為政者にとっては不可欠だろう。自衛隊違憲論がある以上は活動に制限がでる。集団的自衛権行使を憲法改正ではなく、閣議決定の暴挙に出たのもそのためだろう。

消費税10%への増税も「やるか、やらないか」をはっきりさせていない。経済に影響を及ぼさないことが前提では今後1年の経済状況下で中止の可能性もあるだろうが、「増税」しか後がない。社会保障制度の維持、少子化対策、老朽化したインフラ更新のための公共投資など確実な財源は増税しかない。

「おわりに」で原敬元首相が出てきたが、安倍さんの本音は岸信介元首相ではなかったのか。

安保条約締結で「安保反対」の大きな反対運動でアイゼンハワー元大統領の訪日を間際で断念し「声なき声」に耳を傾けると引責辞任した。安保条約でアメリカの傘の元、日本は戦後、経済に重点を置き今の経済大国にのし上がることができた。

国会を取り巻く安保反対デモにかき消されて「安保賛成」の「声なき声」に岸さんは耳を傾けたのだ。その結果、在日米軍の存在が今沖縄県を悩ませている。沖縄に偏った米軍基地問題は日本のアキレス腱だ。

内政、外交に得点を稼げる政策は見当たらない。ポスト安倍政権のために極端な保守からリベラル色を加味した政策運営を行ってほしいと思う。

統一地方選、参院選あるいは衆参同日選挙で国民に信を問うことになるだろうが、安倍政権に不利な状況は変わりない。一日も早く民意の耳を傾ける政権運営が必要だ。

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