2019年10月16日水曜日

台風19号被害を考える(1):まず大事なのは一人一人の「危険予知」意識の向上では


今後巨大地震や再びこのような強烈な台風もやってくる。私たちは如何にして人的、物的被害を最小限にするか、「待ったなしの戦い」が続くが、まず大事なことは一人一人が「危険予知」の意識を向上させることではないか。基本に返ってできることから始めるべきだ。

今回の台風19号は広域に甚大な被害をもたらし熱帯低気圧になって日本から去っていった。残された被害の現状が日々に詳細にわかってくると驚くことばかりだ。

多摩川、千曲川、阿武隈川など各都県の主要河川の決壊、氾濫による濁流で人的、物的被害が大きい。家や農場などの被害で被災者は「これからの生活が・・」と涙ぐむ姿は他人ごとではない。今回はたまたまよかった場所も次も安全の保障は決してないのだ。

自然災害を土木技術で防止などできないが、何とかして人的、物的被害を最小限にする努力はしなければならない。寺田寅彦博士も「文明や技術が発達すると被害も大きくなる」と言う意味のことを書いていた。技術が進み地震、台風の解析情報が入ってくることは確かだが、それを生かすのも地方自治体、県、国そして我々国民一人一人なのだ。

少しづつテレビの情報番組が検証番組を流している。どのテレビ局も同じようなコメンテーターをそろえるが、各地方大学にそれぞれ気象学、地質学、災害の専門家がいることがわかった。

知恵を出し合い、防災に努めるべきだ。台風ばかりではない。巨大地震の発生も危惧されている。人の知恵、対策は同じことなのだ。

各自治体が配布している「ハザードマップ」を開いて、自分の住んでいる場所、付近がどうなっているのかマップを持って周辺を確認してみないか。

どの範囲にどのくらいの水位か確認できる。今回もテレビではハザードマップが話題になっている。しかし現地でのレポーターの質問では、「あることは知っているが開いてみたことはない」と言う。

今回もテレビで「命を守る行動を」、「危険は場所は国土交通省、各自治体のHPで確認を」と繰り返すばかりだ。だからかどうか知らないが国土交通省のHPにアクセスしにくい事態になったという。

地域の自治会、町内会、そしてマンションなどの管理組合、管理会社の対応も重要だ

今回問題になっている川崎市の武蔵小杉の被害も参考になる。決して他人事で済ましてはいけない。

マンションで電気設備が浸水し停電、断水、エレベーターは使えず、修理にも時間がかかるという。2009年に完成した22階建てのマンションでタワーマンションになるらしいが電気系統の障害は大問題だ。

テレビや新聞によると、地下に電気設備や駐車場があるらしい。この付近の内水氾濫で地下室へ濁流が入り電気設備がダウンしたという。2011年の東電・福島第一原発で津波により非常用電源が確保できずメルトダウンを起こした事例が分譲会社、管理会社、管理組合の人たちに教訓として頭に浮かばなかったのか。

起こってしまえば何でも言えることだが、「危険予知」の訓練を受けた人間がいたら電気設備の浸水対策も話題になっていたのではないか。テレビで住民と管理会社の集会が報道されていたが、企業の工場とは違って一般社会での「危険予知」は難しいのか。

管理会社も通常のマンションの管理の延長ではなく、そのマンションに特有の事情も勘案してそれぞれのマンションに適した管理をすべきではないのか。マンション管理の適正化にも問題はないか。

内水氾濫についても、この辺は低湿帯、多摩川の近くにあり万一の氾濫も可能性はあった。排水能力を大きく超えていたというが、原因は多摩川への生活排水の排水にあるらしい。排水門があっていざと言うときはゲートを閉めることになっていたようだが、この判断が難しかったようだ。多摩川の増水で早めに閉めると街中に水がたまる。逆に閉めなかったら今回のように多摩川の濁流が逆流し下水道から濁流が逆流する。

近くには中原区役所もあるが担当者はどう判断したのか。

また、自治体に災害対策の専門家が不足している。専門ではなく兼業で当たっている役所が多くないか。

新聞報道では自治体の職員がピーク時に比べ約60万人減ったという。その一方で、インフラは老朽化し、財政難もあって政府は国土強靭化と言うが現場は進まない。橋が危険なために通行止めになったままになっている報道を見たことがある。

恐らく平成の大合併での出先機関の廃止、要員削減は災害時の対応に支障をきたしていないか。

気象庁も早くから警告していた。記者会見で「命を守る行動を」、「大雨特別警報」で注意喚起していた。交通機関は早々と運転計画を公表した。連休中ともあって旅行者をのぞけばうまく行ったのか。

情報は乱れ飛ぶほどあるが、その中から重要な内容を選び出すことが大事だ。

まず、一人一人が「危険予知」の意識向上するることだ。「自分にどんな危険が迫っているか」、「被害を回避するにはどうしたらよいか」。

「危険予知」によってあらかじめ危険の芽を摘み取り、起こるであろう危険を回避するのだ。

また、オペラビリテイー・スタデイーという手法もあった。

今やっているかどうかは知らないが安全工学の一手法だ。「異常事象」として「電気が来ない」、「原因」は「電気設備の不能」、「電気配線の障害」などが考えられ、「放置すればどうなるか」では「照明なし」、「エレベーターの停止」、「断水」などが挙げられ、「回避する」には「電気設備の浸水対策」「電気設備の地下からの移動」などが挙げられるのではないか・・ただし結果論だから何でも言えるが。

今回は台風19号と言う特異な台風の日本上陸だったが、災害は巨大地震もある。一人一人がしっかり「危険予知」の意識を持つべきだと思うが。

「安全」とは「危険であること」を知っていることだ。思い出そう。3.11東北地方太平洋沖地震発生時、普段から教育を受けていた小学校で高学年の生徒が低学年の生徒の手を引いて整然と高台へ避難しているシーンを見ただろう。一人の老女がひたすら高台を目指して登って行った姿も。親から聞いていた教訓をひたすら守ったのだ。

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