2019年10月18日金曜日

台風19号被害を考える(3):数々の想定外の「失敗」から何を学ぶか

今回の台風19号による被害は想定外の要因で甚大な被害をもたらせたが、これらの「失敗」から何を学び、教訓として生かしていくか。私たちの知恵にかかっている。17日の夜のNHKの放送番組は台風19号の検証だった。その中で「災害のステージが上がってきた」という発言は記憶に残る。ハザードマップで地域の災害情報は提供されていたがそれが十分に活用されていなかったのだ。「あることは知っていたが開いてみたことはない」という。被災者は「こんなの初めてだ」と河川氾濫による被害の大きさに驚く。

今回のいろんな失敗が今後教訓として災害対策に活かされるか。寺田寅彦博士が随筆で、「今回痛い目に会って対策が講じられるが時間がたつに従い風化しすっかり忘れてられて数10年、数百年経って再び同じ憂き目にあうことの繰り返しだ」と。

でも、その失敗を克服すれば成功に結びつけるということを今年にノーベル化学受賞の吉野先生は言う。先生は企業の研究で3回失敗し、4回目の今回成功したというのだ。でも失敗した時の教訓が生きているらしい。

災害も同じだ。しっかり要因を検証し、対策を講じれば後世の災害回避に役に立つというが、その検証が難しく、失敗が生かされないケースが多いのだ。

NHKの放送番組(17日NHKスペシャル)で「流域型洪水の衝撃」「フェーズが変わる災害」と言うが、いい表現に聞こえるが具体的にどういうことか(

ガンの判定でステージ○と言い、ステージⅠは初期の段階で発見が速かったので治癒するという。

災害ではどういうか。Ⅰ~Ⅴを考えるとすると「V」は政治的にも経済的にも大混乱をきたす状況になると考えると首都直下地震、広範囲に被害が及ぶ南海トラフ巨大地震、富士山噴火などが考えられる。では今回の19号はどうか。「ステージⅣ」とでもするか。

そんな時に朝日新聞2019.10.18 オピニオン&フォーラム「「失敗」を直視せよ」と言う失敗学の専門家で東電・福島第一原発政府事故調査・検証委員会の委員長を務めた畑村先生のインタビュー記事が目に止まった。

先生は失敗学の専門家らしく事故調査に厳しい目を向けているが指摘されることは納得のいく内容ばかりだ。ただ、失敗学的考え方を持たなければ、検証もあいまいになり教訓も生かせないのだ。

東電・福島第一原発事故の政府調査委員会の委員長だったが、仕事は30点の出来と言う。調査は責任問題、刑法からの観点だけ見た「幼稚」なもので失敗学的考えを委員全員が共有できなかったことが最大の要因だと言い、先生が目指した再現実験で事故を検証することができなかったのだ。

事故を機に原子力問題は規制のルールも変えたが「安全神話」という体質は変わっていない。その安全神話を脱却できなかった要因は「自分の目で見て、自分でちゃんと考える国民がいなかったこと」が最大の要因と言う。「危うさを知って利用するその覚悟があるのか」と問う。

これは何も原子力発電に限らず、最近の災害でもいえることだ。今回の台風19号の被害と要因を検証することも同じことだ。

先生は事故や災害は起きるものとして被害を抑えるための方策を考え実施する。こんなことが起きたら大変だという危惧感に基づいて事前に対策を取ることが、費用対効果から見ても一番効果的なのだという。

今回の19号被害で何が要因で何に欠けていたのか。国、県、地方自治体、自治会、町内会、そしてマンション管理組合(特にタワーマンション)は何をすべきだったのか、これから何をすべきか、しっかり検証すべきだ。

ハザードマップで情報を提供されていたがそれが生かされていたのか。被災者は身に染みて対応を考えるかもしれないが、そこまで被害のなかった人はある意味で他人事で終わるかもしれないがそうであってはいけない。次の安全を保障されたわけではないのだ。

NHKや畑村先生の話から失敗例、成功例を上げることができる。

NHKは千曲川の氾濫で新幹線基地が浸水し車両に甚大な被害をこうむった件で、ここは低地で水が溜まる地形だった。だから計画では2m盛り土して建設したが実際には4mの浸水になったという。基地として広い場所を確保するにはここしかなかったようだ。

成功例として畑村先生は、2004年の新潟県中越沖地震で時速200kmで走っていた上越新幹線が脱線したが死傷者は出なかった事例だ。兵庫県南部地震で山陽新幹線の高架橋が落ちた失敗から、JR東日本は8万本の橋脚を調べ一番危ないところから補強していったそうだ。ここも7補強していなければ大惨事になったという。

今こそ国民一人一人が変わる時なのだ。「安全とは危険であることを知っている.ことだ」。危険であることを知っていれば人的被害を最小限にすることはできるはずだ。



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