2021年8月4日水曜日

東京オリンピックは別世界?:世界は五輪で浮かれている時ではない

 東京オリンピックが始まると状況は変わってくると菅総理が言ったらしいが、その通りになって来た。国民は金メダルに声援を送る。メデイアは勝者の涙のストーリーを仕立て上げ、高揚を煽る。

私は当初から五輪中止論者だったので、現況のオリンピック報道、成果に素直には喜べない。メダリストは決まったように喜びを表現する。しかしすべてが自分の立場で語っている。

ベテランのメダリストの一人ぐらいは「今回の大会は国民の半分以上の人が中止を希望する特殊な環境下にあり、素直には喜べない」ぐらいの発言があってもよかったのではないか。

目を世界に向けてみよう。テレビ画面で喜んだり、悲しんだりしている一方、世界では「平和の祭典」とは思えない事態が発生し、直接オリンピック選手にも禍が降りかかっているのだ。

ベラルーシでは強権独裁政治が蔓延り、オリンピックに参加した女性陸上選手が帰国すれば拘束される恐れがあるとして亡命した。大統領はオリンピックでの成果を強要し選手に圧力をかけていた。独裁政権にあっては国力アピールのためにオリンピックを利用することは十分に考えられることだ。

台湾は「中国の一部」と人権問題、民主主義問題で中国から圧力がかかっているが、大会での台湾の扱いにSNSでは称賛の声が上がったという。オリンピックでも何かにつけて反中国だ。

中国は何を思ったか、金メダリストが胸に毛沢東のバッジをつけて表彰式に臨んでいたことが問題になっている。「政治利用か」、IOCは調査するという。

独裁体制と言えばミャンマーだ。クーデターで最高司令官を首相にする暫定政府は発足したが、背景にに欧米vs中露がある。すぐには解決できないだろう。

アフガニスタンからの米軍の撤退で、タリバンが攻勢を強めている。米軍に協力した人たちが報復をおそれ国外に亡命している。

南シナ海での中国の覇権に対して対中包囲網が築かれ、南シナ海の航行の自由確保で米英独豪印が軍事演習を計画、それに日本も参加する。「台湾有事」が危惧されているが、日本も他人事ではなくなる。

一方、国内に目をやると、新型コロナの爆発的感染拡大が最重要課題だ。IOCはオリンピックと感染者数拡大の因果関係を否定する。広報部長が「パラレルワールド」と言ってのけた。

菅総理も小池都知事も関係を否定するが、感染拡大は医療機関のひっ迫を招き、医療制度が崩壊する。そのために菅総理は「軽症者、中等症の一部を自宅療養にする」と言い出した。このままでは「国民の安全健康を守ることはできない」と認めたのだ。菅総理が主張する「ワクチン接種」だけではどうしようもない状況に来ているのを河野大臣は認めた。

3日の東京の感染者3709人、自宅療養は14000人、自宅療養か入院かの判断が難しいという。自宅療養中に亡くなる事例が増えそうだ。平均陽性率はなんと20%、デルタ株感染者が1049人と言う。

一方、オリンピックが終わればいつも問題になるのが費用の高騰、負担問題だ。当初は7340億円と言われていたが、コロナ前に1.3兆円に、1年延期で1.6兆円、総計3.2兆円の費用になるという。そんな金がどこにあるのか。結局東京都に押し付けるのか。

こんなことを考えると、どうしてもテレビ画面を見て選手の活躍に喜んでばかりはいられないのだ。

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