2021年9月4日土曜日

政局を読む(14):1年の短命で終わる菅総理はどこでつまずいたか

 

「もしもあの時」は政治の世界では大きく展開が異なる事態になることが多いが、菅総理はどこで何を間違ったのか。

「コロナ対策に専念する」「コロナと総裁選では莫大なエネルギーを使う」と言う理由で総裁選出馬を辞退した菅総理であるが、何かしら取ってつけたような理由だ。菅総理自身への不人気、党役員人事、内閣改造人事での苦戦が政局スケジュールをことごとく断念せざるを得なかったのではないか。 

打ち出すスケジュールは、どうしたら菅政権が維持できるかの一転であったことは素人でも分かる。国会議員、自民党内でも批判を浴びたことは当然だ。 

更に無派閥の菅総理が最後の判断に頼ったのが無所属で、若手にも人気のある(?)小泉環境相だったことは側近の層の薄さを感じた。裏で電話で話せばいいものをわざわざ何回も官邸に呼び出しての会談は何を意味していたのか。 

4日の朝刊を見ると、「後手後手」で成果が出ない新型コロナ対策、観戦ウォッカ宇内下と思われている東京オリンピック強行、横浜市長選を初め地方選での続けざまの惨敗は「選挙の顔」にあらずと求心力を失った。 

そんな中で何か言いことはないのかと新聞をにらんでいたら、東京オリンピックの有観客に拘っていたのはIOCバッハ会長で、感染拡大を受け無観客の判断をしたのは菅総理だと組織委員会の幹部がコメントしていた。菅総理もギリギリまで有観客に拘っていたが、最後は主権国としての判断をしたのか。 

1年前に安倍前総理の政権放り出しを受けて総理の座に着き62%と言う高い支持率を得たが、4度にわたる緊急事態宣言でも成果は見られず、専門家との考えにも溝が出てきた。ワクチン接種を強力に推進したのは良かったが、一本やりでは無理だった。 

しかし、この緊急事態にあって国民とのコミュニケーション不足は致命傷になったか。昨日でも官邸での囲い込み記者会見で自分の考えを述べた一方、記者の質問もさえぎって逃げる姿を見せ付けた。

(1)国内海外からも「国家観がない」と言われた。だから菅総理自身への評価も低いのだ。しかし本人は「たたき上げ首相」を自負している。何のことはない権力闘争で勝ち上がったと言うことだ。国家観など持ち合わせがない。 

しかも何の用意もなく総理にさせられた。政策もない。だから安倍政権の継承で逃げた。民主政治も根幹を揺るがし、新型コロナ対策では国民の不満が高じる安倍政策の継承とは軽すぎないか。

(2)官房長官時代に権力構造をそのまま受け継いだために「国民に民意」が総理の耳に届き難くなった。官邸スタッフもそのままだったために日本学術会議のメンバー6人を不承認にし今も問題が解決していない。首相補佐官(?)が忖度したけっかだという。

(3)緊急事態宣言は成果が上がらず、今までの政策を検証することもなく4度目の発出となった。酒を提供する飲食業を営業制限するので業界から批判されている。根拠を示せと言うのだ。

(4)政策に整合性がない。不要不急の外出、県境を超えた外出の自粛を要求しながら一方では外出せざるを得ない政策を打ち出している。守るべき外出自粛を官僚や国会議員、地方公務員が率先して(?)破っている。「見つからなければ大丈夫」と言う間隔だ。 

GOTOトラベル」も地方の観光業者の疲弊を考え菅総理も拘った政策であるが、自粛政策には相反している。国民はこぞって旅行に出かけた。首都圏から地方への感染拡大の要因にもなるか。

(5)東京オリンピックの強行は同時に感染の爆発的拡大を招いたが、IOCは「別世界」とパラレルワールドの考えで関係ないというし、菅総理、組織委員会も「無関係」を押し通した。日本のメデイアより海外のメデイアが批判している。

   オリンピック関係者から500人弱の感染者を出しても組織委員会の事務総長は「想定内」と言うし、パラリンピックの選手は入院したが「重症ではない」と問題を小さく見せようとしている。 

   「もし菅総理が東京オリンピック、パラリンピックの中止」に言及していたらどうなったか。IOCからは相当抵抗されるだろう。オリンピックを中止していれば人流も増えず感染拡大を抑える戸尾tが出来た稼動母不明だが、国民の「オリンピックをやるのだから」外出もいいのじゃないかという「気の緩み」は防止できたのではないか。  

   主権国のリーダーとしてIOCへは勿論のこと世界に向けた「中止発言」は菅総理の評価を上げたのではないか。一つのチャンスを失ったことになる。  

   海外ではロックダウンが採用されている。日本では指摘権利の制限につながるから法整備も必要だがオリンピック中止は海外に向けたロックダウンとして認められるのではなかったか。

(6)そのロックダウンも、今の緊急事態宣言では効果が出ないため、法的整備が急がれている。菅総理は「海外でロックダウンが採用された国でも再感染が起きている」と発言し抵抗していたが、各分野で検証を急ぐべきである。

(7)菅総理の熱意(?)が国民に通じなかったか。記者の質問に「私なりに一生懸命やっている」と弁解していたが政治家としては致命傷だ。権力を振り回し戦っていればよかったのだろうが、国民の「安全健康を守る」分野の政策ではそうは行かない。

安倍前総理も菅総理もそこのところを間違っていた。官僚の書くあいさつ文は形式的で前年と同文が多く批判されていた。国民や大会主催者はがっかりだろう。寧ろ大会に出るべきではない。 

思うに、スピーチライターがいないのか。アメリカ大統領の名文挨拶はスピーチライターによると言われている。 

大事なのは自分の言葉で話すことだ。そうしないから漢字の読みを間違えたり、「飛ばし挨拶」をしたりする。

(8)記者会見を安易に見ている。国民に対して話しかける重要はイベントであるが、総理は仕事の一つとしてみている。だから気に食わない質問、記者の質問は無視する。司会者が忖度し、時間制源、質問制限をする。昨日の総裁選出馬辞退の後の記者会見でも自分の言いたいことを言って、記者の質問をさえぎって逃げる姿は相変わらずだ。国民と向き合っていない証拠だ。 

(9)総務省にかかわる許認可、東北新社との高級接待、子息の就職は大臣時代の権力構造を暴き出した。かかわった多くに人が責任を取っている。ワクチン接種促進では総務省の官僚を使って自治体へ圧力をかけていた。

内閣人事制度を悪用し中央官庁に権力を振り回していた。国家公務員は一議員のものではなく、広く国民のために働く組織なのだ。

(10)菅総理は総理の質を欠く人間だったのだ。地元有権者も「国会へ送っても恥ずかしくない」議員を選出すべきだ。

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