2014年10月28日火曜日

アベノミクス、異次元の金融政策は、ただの経済政策、特別視すると判断を誤る

「アベノミクス」、「異次元の金融政策」は単なる経済政策、経済用語(?)に迷わされ特別視するのは止めよう。確かに安倍総理のインフレターゲット設定、強力な金融政策に市場は期待感から円高、株安から円安、株高に展開したように思えるが、今となってはアベノミクスの評価も下落し、本当の経済の姿に直視しなければならない。

自民党の政策マンは本当にうまかった。長いデフレ、円高、株安に苦しめられた民主党政権に対抗し、アベノミクス、異次元の金融政策と新しい用語を使って「日本経済を再生する」のだと国民に訴え政権奪取に成功した。

野田政権でもインフレターゲット設定、更なる量的緩和を日銀に迫ったが、日銀は日銀でそれなりの政策は採っていた。しかし政府の言うことを聞かないとみると日銀法改正をちらつかせて迫ったが最後は白川総裁を更迭し強力な金融政策論者である黒田総裁を任命した。

変わった日銀総裁は、2年で2%の物価上昇、異次元の金融政策として2年で2倍の270兆円を市場に流す量的・質的金融緩和を打ち上げた。

海外ファンドは、野田政権の時から、次は株価の安い日本を金儲けのターゲットに考えていたが、これを機に一気に日本買いに走り株価は上昇、マネタリーベース増加派が通貨量を増やせば円は安くなるという主張通りなのか円高も円安へと展開していった。

しかし、この過程でも成長が滞りがちになると更なる成長戦略を政府に要求するようになる。

安倍政権は「第2の矢」として財政出動を目指すが、ここに大きなテーマとして財政再建という相反する課題も出てくるが安倍政権は両立を選択した。

「第3の矢」として成長戦略を放つが初回の成長戦略は評判が良くなかったとみて、見直し策が出されるが族議員、既得権益者の抵抗は強く、岩盤規制に穴を開けるドリルの刃となると言うが内容は伴わないテーマだけの政策にった。

アベノミクスと言われる経済政策での「第一の矢」金融政策は何とかなったが、「第二の矢」「第三の矢」は根拠に乏しく実現性はないとみられている。

安倍政権は安倍総理の経済政策を「アベノミクス」と大々的に宣伝したが、真実味のない単なる経済策なのだ。

そして、日銀の2%物価上昇もこのところ停滞気味で前回の消費税増税による反動減の回復が思うように行っていない。政府、日銀の見通しの甘さが目立った。日銀は更なる量的緩和などあらゆる手段も辞さないと言うが決め手はない。

量的・質的金融緩和も270兆円を目指し継続中だが、企業の設備投資は目立った増加はなく寧ろ国債などの購入に回っている。最近は「マイナス金利」の状態が出て来たという。

円安は輸入品の原材料、燃料の物価高が生活必需品などの物価上昇になり、実質所得のマイナス成長とも相まって国内消費が停滞している。日銀は今の物価上昇は単なる円安によるものではなく、量的金融緩和の成果だと日銀の政策の正当性を主張する。

国民は「悪い経済循環」とみるが、日銀は「プラス面、マイナス面もあるが全体としてプラスなら構わないのではないか」と強弁する。

しかし、日銀の言うほど「異次元の金融政策」でもない。中央銀行は金利の上げ下げで景気の調整をするのが伝統的金融政策で量的緩和は非伝統的金融政策だ。経済用語(?)に惑わされてはいけない。

政府、日銀のインフレターゲット設定は、インフレにすれば消費も高まり日本経済は活況を呈することになると言うのだろう。

しかし、今回の「経済の悪循環」では賃上げしたと言っても物価高で実質所得はマイナス成長だ。誰だって消費を抑える。第16回経済財政諮問会議の議事録を読むと、若い世代は収入は上がっているが将来の事もあって消費を抑えている。一方、高齢者は収入が減っているのに消費は抑えていないという。

皆が望んでいた円安になれば輸出が伸びる、海外の生産設備を国内に戻すようになると言われていたが、輸出は金額が伸びても数量が伸びない。海外へ移転した生産設備を国内に戻すには時間がかかると言うことか。

国内での設備投資増は、やはり国内需要があってのことだが国内に残ってがんばっていた中小企業がコストアップ分の製品価格への転嫁を大企業が認めてくれないから経営は非常に厳しいという。景気が良くなったのはどこのことかと疑問を呈するのだ。
国内需要については古くから課題になっていた。

前川レポート、21世紀版前川レポートでも内需拡大が大きな課題だった。結局うまく行かなかった問題は、企業の儲けをどうやって家計に配分するかで企業側が抵抗したことにあるようだ。

安倍総理も「アベノミクスの成果を津々浦々まで」と、企業に賃上げを要求しそれに応えた企業もあったが国民皆が恩恵にあずかったわけではない。おまけに賃上げがあっても消費税増税で実質所得はマイナス成長だ。

更にクルーグマン教授が「企業の儲けは労働者の犠牲に上に成り立っている」というように、労働者を搾取しても内部留保に努めている現状に変わりはない。

失業率は改善していると言うが実体は非正規従業員数が増えていることだ。政府は労働市場の改革を進めているが、こういう改革で本当に良いのかと問いたい。

そして少子高齢化で労働人口の減少が危惧されているが、若者が結婚し子育てをするにはそれ相当の年収、正規雇用の企業を確保しなければならないのではないか。政権がどう対応しようとしているのか分からない。自民党政権より民主党政権の方がマシだったと言えるかもしれない。

兎に角、安倍政権の言う「アベノミクス」「異次元の金融政策」の経済用語(?)に迷わされず、しっかり生活を見て政権を判断すべきだ。

朝日新聞(2014.10.27)の本社世論調査によると、「安倍総理の経済政策で経済成長が期待出来るか」との設問に「期待出来る」が37%、「期待出来ない」が45%と「期待出来ない」が初めて「期待出来る」を上回ったという。

国民の目も変わってきたのだ。


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