2018年3月3日土曜日

異論ではなく正論では:GDP(おカネ)では計れない「次の価値」とは


朝日新聞 2018.3.2
異論ではなく真っ当な正論なのです。おカネでは計れない価値とは。朝日新聞(2018.3.2)で佐伯京大名誉教授の「異論のススメ 成長の「その次」の価値観」を読んで私も同感だ。

佐伯先生は黒田総裁続投で異次元の超金融緩和の継続となったがアベノミクスの成否を評価するのは難しい。GDP,求人倍数など見れば表面的には大成功のように見えるがマネタリーベース、100兆円の財政政策をやってもデフレは脱却しつつも2%のインフレ目標は達成出来ず成長率も期待されたほどではない。賃金もさして上がらず地方経済も必ずしも良くなっていない。

経済政策は本当に有効だったのだろうか、何かもっと重要な事があるのではないかと指摘されている。

国の幸福度をGDP以外の指標で計れないかと言うことは以前から言われていることだが、おカネという尺度で測れない難しさがある。ブータンが世界で1番幸せ度が高いと言われ比較研究されたこともある。

確かに安倍総理になってから世界経済の流れも助けになって経済指標は好転している。

景気は「緩やかな回復」、完全失業率は2.8%で雇用も改善、GDPは550兆円、株価は22000円台、為替は106円台、ゼロ金利で設備投資には良い環境、税収も約60兆円と増えている。

一方で、成長率は伸び悩み、異次元の金融政策で市場におカネを流すが企業の内部留保は400兆円を超える。賃金は伸びず家計では1800兆円の半分が貯蓄で投資などに廻っていない。

消費者物価は0.9%、有効求人倍数も1.6倍であるが正規労働より非正規労働が増え今、新法施行による雇い止めが横行している。賃上げで家計の可処分所得をあげ消費につなげ経済の好循環を目指しているが政府の賃上げ要請に経済界の動きもマチマチだ。

将来の不安を考えると家計は貯蓄に走るし、企業は内部留保に努める。1番の問題は投資を促す需要が不足していることだ。企業が儲かればその儲けを家計にも再分配できるがそういう意識に言っていない。米国の通商年次報告でも貿易障害、不均衡、貿易赤字の解決を日本に要求している。貿易で稼ぐ企業の姿勢の問題をつかれている。

佐伯先生は、財政/金融政策が無効とは言えないが異次元の経済政策でも成長させるのは難しい。ゼロ金利が長期に続いているのも如何に需要がないかという事だ。今後は大きな経済成長は期待出来ないという。

財政出動で景気対策をしようと一般予算では33兆円の赤字国債を発行するらしい。地方、国の借金合計は1050兆円、対GDP比200%を越え、先進国一悪い状況だが、純資産も有り純債務は対GDP比160%(?)で問題はないという専門家もいるが、数字だけ見るとあのギリシャより悪いのだ。

PBの黒字化も先延ばしされた。政府は法人税を下げる一方で、社会保障費などの負担増を国民に強いている。年金なんて維持されるかどうか。新聞で自動車メーカーが今年度の決算で1兆円の追加黒字をニュースにしていたがトランプ大統領が法人税の大幅減税を行った成果らしい。

国民も企業も将来不安を抱えておカネを自分で貯め込んでいるのだ。個人貯蓄は900兆円、企業の内部留保は400兆円を越す。投資に回せと言っても国内需要が不足していてはどうにもならない。

麻生財務相は経済財政諮問会議で「財政出動より民間出動が重要だ」と指摘していたが、中小企業の経営者は「需要があれば借金してでも設備投資する」と言っていた。ゼロ金利が投資で重要なのではない。

少子高齢化が「国難」と言われているが、企業の考え方1つではないか。

男の雇用を確保し、男1人で生活(家計)を維持していける給料を保障することだ。そうすれば待機児童問題も解消するし、消費も上がるのではないか。男の給料が安いので幼児を預けて女性が働きにでて家計を助ける。当然にいろんなところで無理が出ている。

佐伯先生は最後に、GDPでは測定出来ないものを求めている。生活の質の向上、長期的に安定した仕事の場所、文化的な生活、教育、医療、介護それに人々の間の信頼出来る関係、それを可能にする社交の場だと言い、人々が求めているのは公共的で社会的な次元での豊かさだという。経済成長主義はもはや限界だという。

国民の幸せに対する満足度を何に求めるか。いろいろ議論すれば佐伯先生の指摘されている通りだが、その評価法が難しいのだ。

0 件のコメント: