2019年3月1日金曜日

米朝会談決裂を考える:共同声明まで用意しながら何故、「席を立ったか」


27,28日の米朝会談は決裂になったが、共同声明まで作成し、昼食会も用意しながら何故、土壇場で決裂に至ったのか。共同声明は実務者会議で詰めた結果だ。実務者会議でも双方の溝は埋まらなかったはずではなかったのか。

実務者会議でも「非核化」「制裁解除」は平行線をたどり不調が伝えられていたのになぜ、両首脳は会談を設定したのか。

金委員長は北の国民生活の疲弊、自らの政権運用のための資金の枯渇から経済制裁の解除は喫緊の課題だった。そのためには「非核化」で寧辺の核施設を廃棄することで「制裁の完全解除」を見返りに要求したのだ。

寧辺核施設を廃棄したとしても完全核廃棄には程遠い。ほかにも施設を分散しているという情報もあるし今まで開発保有している核、ミサイルをどうするのか。北は手放しなどできないはずだ。

一方、トランプ大統領は国内で壁問題、ロシア疑惑事件と難題を抱えているが大統領選に向け外交で点数を稼ぎたかった。それが北朝鮮との非核化だ。

両首脳が政治生命をかけたといってもいいぐらいの米朝会談だったが、うまくいっていると思われた1日目と、おかしくなってきた2日目の間で何があったのか。

考えられることは米国内での側近弁護士だったコーエン氏がロシア疑惑について証言したことか。メデイアのニュースではトランプ大統領は民主党クリントン陣営のメールを把握していたというのだ。人種差別主義者、ペテン師、詐欺師とまで言い放ったようだ。

これは米朝会談よりもトランプ大統領の気を引いたはずだ。中途半端な会談では国内で批判が強まると感じたはずだ。

北は他にも終戦宣言、連絡事務所の設置まで提案したようだ。終戦宣言なんて1日2日ではできないとトランプ大統領は発言している。

会談の前評判ではトランプ大統領は前のめり、譲歩するのではないかとメデイアは報じていた。金委員長もこの情報は知っていて譲歩してくるだろうとみたのだろう。実務者会議では溝が深かったがトップ会談で打開できると踏んでいたかもしれない。

2日目は北、アメリカともに頻繁に打ち合わせ作戦を練っていたはずだがアメリカがハードルを上げたのか。その解決に翻弄したのか。

しかし金委員長も非核化に向けて寧辺核施設廃棄でも肝心なことは明言していなかった。その廃棄の工程、検証をどうするか。ほかにも施設がある。そこを詰めなければ完全な核廃棄はできない。

いつもやることだ。「敵対的古い慣行が我々の道を閉ざしてきた」と当初あいさつで金委員長は発言していたが、自分のことを言ったのか。拉致問題が解決しない要因もここだ。

この決裂を受けてトランプ大統領は非核化の見返りに「完全な制裁解除」を要求してきたがそれはできなかったという。

一方、北のコメントに注目していたが、このトランプ発言に対して北の外相は「国民生活に支障をきたす人道的目的から完全解除ではなく一部解除を要求した」と反論した。

その後の北の発表は決裂とは報じず、「今後も緊密に協議し、ハノイ会談で明らかになった問題解決のために生産的対話を続ける」と言う。

金委員長自ら臨んだ首脳会談だから決裂しても批判はできずこういう表現になったのだろう。注目は実務者のうちで誰が責任を取らされるかだ。突然に表舞台から消える人間が出てくるのではないか。

今回の会談は実務者会議で大きなギャップがあったが、それをトップ会談で打開できるという甘い考えが災いした。

北はトランプ大統領の苦境で今回、大幅な譲歩をするだろうと判断を見間違ったことにある。

それにしてもなんでこんなに大騒ぎするのか。金委員長のハノイ行き特別列車でのイベント、様子を逐一メデイアは報道した。「勝ってくるぞ」という北の意向が見え見えだったのだろう。

金正日前主席が「我々のような小国は何かやっていないと忘れられる運命にある」と言ったことがあるが、それが高じて核開発、ミサイル発射となったのだろう。「どこまでやればアメリカが出てくるか」と考えても不思議ではない。

アメリカ本土まで核ミサイルが飛んでくる事態になりトランプ大統領が動いたのだ。

しばらく静観したらどうか。応じれば応じるほど北は調子に乗ってくる。第3回目の米朝会談があるかどうかは言明しなかったが、米大統領選後のことになるか。

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2019.2.22掲載
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