2019年3月17日日曜日

井戸水の監視:首都直下地震の前兆をとらえられないか

井戸を持っている古い民家が表示している
東京大田区久が原にて

首都直下地震の前兆に「井戸の水位、濁り」などの変化で捉えることが出来ないか。首都直下地震は30年以内にM7クラスの発生確率が70%と言われている。昔の人は巨大地震の経験からいろんな言い伝えを守っているし、古文書でも多くの記録が残っている前兆に上がっているのが「井戸水の水位、濁り」なのだ。

今、新しい観測技術が開発、実施されているが専門家はなかなか認めない。でも「井戸の水位」だけは一様に認めるのだ。

「天災から日本史を読み直す」(磯田道史著 中公新書2014.11)を読んでいると「地震の前兆をとらえよ」の章で「井戸水が涸れたら津波が来る」という記述が有り大きな地震の時の経験が記録されているのだ。

1946年昭和南海地震でも「井戸水が涸れたら津波が来ることを知っていた」事が大事だと指摘している。古文書でも安政南海地震で「井の水へる物也、へらぬ井戸はにごる物なり」「大揺れには井を見るべし」と井戸水の監察もバカにならないという。

昭和南海地震では森繁久弥さんが宿で地震に遭った経験を話している。「引き潮が怖い」「地鳴りがした」というのだ。いずれも今も警告として言われていることだ。

大事な事はこういったことが実際に起こったときに咄嗟に対応出来るかどうかなのだ。

関東地方は陸プレート、フィッリッピン海プレート、太平洋プレートの3つが入り組んで複雑な地下構造を持っているが、東京で震度6以上の揺れは90年間見舞われていない。しかし必ず大地震に見舞われるのは明らかなのだ。

朝日新聞 2013.12.20
内閣府の有識者会議がM7クラスの地震想定19タイプ発表、最悪2.3万人の死者、95兆円の経済損失が想定されている。その19タイプの中での被害想定は今まで東京湾北部地震(M7.3)だったが今回新しく都心南部直下地震(M7.3)に対してなされた。この地震は大田区から品川区を通って都心に伸びる断層が動いた時が都心部などの被害が大きいことが分かったためだ。

私も最初大田区には活断層はないとみていたが、1923年の関東大震災では130km×70kmの広範な相模湾と陸部が震源になった。本震は小田原付近(M7.9)だったがその後余震が6回発生、そのうち1回目の余震が羽田沖(M7.2)、本震の3分後に発生しているのだ。断層は見逃せない。

私の住んでいる町も古い大きな庭付きの民家が壊され、新しく狭い(20m2)家屋が林立し住環境も変わってきたが、古い民家には井戸がある。「緊急時には井戸水供給協力」と標識まで出ている。

比較的新しい家でも雑用水のために井戸を持っている
東京大田区久が原にて
こんな民家が段々失われていくのだ。水道施設では緊急事態には対応出来ないのだ。

それと、巨大地震の前兆として「井戸水」の監視は役立つのだ。何とか利用できないか。

今は、観測技術も開発され、1万箇所の地震計設置、GPS測定、ひずみ計、電磁波、ラドンなどの異常観測、さらには上空からの活断層探査などはやっているし、産業技術総合研究所では数10~数百mの50箇所の井戸で0.1mm単位で精度の良い井戸水観測をやっている。

しかし、その現状も地震が発生した後で数値をチェックしていたら異常が見つかったという報告はあるが事前の予知は難しいようだ。

かなり前になるが京大防災研究所が常時観測していた観測井で水位の動きに異常が見つかり近く地震が発生するかも知れないので注意を喚起したことがある。
学会で発表すると同時にHPで逐一情報を提供したことがあるが、しばらくしてHPから削除された。

この付近は交通の要所でも有り、万一の時は経済活動に大きな支障を来すことを考えて警告に至ったのだ。「外れた」としてもその勇気に拍手したい。

昔は学校で百葉箱を設置し気象観測をしていたものだが、どうだろう学校で観測井戸を掘って子どもに毎日水位、濁りを観測させ異常が出ていないかどうかを役所のどこかでチェックする観測網を築いたらどうか。難しい技術の解析よりも直に直視出来る観測の方が役立つのではないか。

磯田先生の本を読んでそう感じた。

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