2015年4月16日木曜日

福井地裁の高浜原発差し止め仮処分:裁判に頼るしかない住民の不安?

福井地裁で申立人側勝訴判決
2015.4.14 テレビ朝日 報道ステーション
福井地裁が関西電力高浜原発3,4号機の差し止め仮処分を決定、再稼働が認められず申立人らの勝訴となったが、原発に対する住民の不安は裁判に頼るしかないのか。申し立てたのは原発から30km、100km離れた福井、京都、大阪、兵庫4府県の9人だという。

原発立地でメリットのある人たちは原発賛成で今回の差し止め判決には異論があるが、メリットのない人たちは原発反対で今回の判決を評価する。メデイアでも立場の違いで賛否両論だが本当のところはどうなのか。東電・福島第一原発の事故を考えると賛成しにくいのではないか。

実際に審理で申立人側と関西電力側がどんな資料に基づいて攻防を繰り広げたか分からないが争点の一つに基準地震動700Galの是非論があったようだ。

判決では、全国の4原発で700Galを越える地震が発生しており基準地震動は信頼に足る根拠はなく、越えれば施設破損、炉心損傷、基準地震動を下回っても冷却機能喪失、炉心損傷にいたる切迫した危険があるとしてこの新しい基準に適合しても原発の安全性を確保できず、住民の人格権を侵害する具体的な危険が認められるとした。

結局は、原子力規制委員会が審査している新基準も「緩やか過ぎて合理性に欠ける」と言うことなのだ。

これに対して、規制委員会の田中委員長が「取り組みが十分に理解されておらず、事実誤認が一杯だ」と反論する(読売新聞 2015.4.16)。福島第一原発事故を踏まえた基準で世界と比較しても最も厳しいレベルと言うのだ。

ところが裁判所は2005年以降、宮城県沖地震での女川原発、能登半島沖地震での志賀原発、新潟県中越沖地震での柏崎刈羽原発、東日本大震災での福島第一原発、女川原発と5回原発で基準地震動を越えた事例を示し、「万が一」に対応できないというのだ。

どう考えれば良いのか。

要は、原子力村に群がる学者と地震学者との考え方の違いがこの判例にも出ているのではないか。原子力村の学者は基準でも「合理性」を重視するが、地震学者は地震考古学からも想定外を回避しようとする。必然的に厳しい見方をするのだ。
それに国民の不信感が乗っかってくる。その要因の一つに新潟県知事が言っているように福島第一原発事故の原因調査の不十分さがある。国会、政府、民間の委員会による事故調査報告書が出ているが、今回の炉心溶融によるメルトダウン、あってはならない原発震災事故の要因は、地震動による機器の損壊か津波による機器損壊か明確にはなっていない。

政府、電力事業者は津波による全電源喪失で冷却装置が機能しなかったことを挙げているが、地震動による機器の損壊となるとことは重大すぎる。

そして、国民の原発に対する不安を裁判で主張するしかないが、原子力規制委員会は関係なく審査を続けると言うし、政府も再稼働に向け何ら変更はないという。

どうして重要なエネルギー政策で原子力発電に対する対応がチグハグなのか。何故か覚束なさを感じる今回の福井地裁の差し止め仮処分だった。


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