2015年4月22日水曜日

原発再稼働差し止め仮処分:福井地裁、鹿児島地裁の決定に見るその問題点

原発再稼働差し止め仮処分で、新しい規制基準の同じ基準地震動に基づきながら福井地裁と鹿児島地裁で異なる決定が下され、再稼働差し止めの是非は新しい規制基準をどう考えるかが焦点になっている。この新しい規制基準は原子力村の学者と一部の地震学者により検討された至極合理的な内容なのだろうが地震は人間が考えているとおりには発生しない。

先の福井地裁の高浜原発再稼働差し止めを命じる仮処分では新規制基準の基準地震動を越えた場合は勿論、クリアーしていても炉心損傷などの重大事故の発生になる可能性もあるし、例え基準を超えていなくても重大事故の可能性はあるという論法で新しい規制基準に合理性がないという論法だった。

ところが22日の鹿児島地裁による川内原発の再稼働差し止め仮処分却下の決定では、規制委員会の新規制基準は「最新の調査、研究を踏まえており内容に不合理な点は認められない」と判断を下した。

原子力規制委員会は、福井地裁の差し止めを命じる仮処分では「事実誤認」があると記者会見で反論したが、鹿児島地裁の仮処分申し立て却下の決定では「当事者でないため決定についてコメントする立場にない」とコメントしたという。

私は、どちらも間違ってはいない決定だと思う。

福井地裁の判断では700galという基準地震動に誤解があったと批判されているが、今の原発は新しい地震学を反映していないし想定を越える地震には耐えられないと著名な地震学者は警告を発しているがその通りだろう。

川内原発は昨年9月、規制委員会の新規制基準に始めて合格したが、住民5000人が行政不服審査法で新基準合格に異議の申し立てをしている。

ところで、この九州電力・川内原発の付近は巨大噴火によるカルデラが集中している。姶良カルデラは3万年、阿多カルデラは10万年が経過し火山学者はそろそろ何らかの兆候があっても不思議ではないと警告している地域なのだ。

これに対して「稼働期間中に巨大噴火が起きる可能性は十分に低い」と裁判所も九電の見解を支持しているようだ。でもこれが噴火すると川内原発は火砕流に襲われ燃料棒を処置する暇もなく甚大事故に至る可能性が大だ。火山灰とともに放射能をまき散らすのだ。
規制委員会の規制基準の是非については最新の研究をやっている地震学者、そして今後危険が迫っている火山噴火も加味して火山学者を加えた会議でもっと検討すべきではないか。

原発再稼働推進派は、国の交付金で成り立っている地元自治体、電力事業者、電気代が業績に大きく影響する大量消費者、経済成長を推進する政府なのだろう。今、安倍政権は再稼働へ向けて再稼働反対意見を牽制している。

不安な住民は裁判に訴えるが高裁、最高裁の上級審は新しい規制基準を合理的と判断するだろう。せいぜい戦えるのは地裁段階だ。

そして原発の敷地内に大きな影響を与える地震は震度5,6程度とみていても南海トラフ巨大地震もある。火山噴火だってまだ原発は経験していない。

自然災害は常に想定外、自然災害を回避する技術はない。福井地裁、鹿児島地裁の判決はどちらも間違ってはいないと思うが、福井地裁の判断に説得力がある。


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2015.4.16掲載
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