2015年4月9日木曜日

グローバルかローカルか:養老孟司先生曰く「ローカルを本気でやる時」と

グローバル化かローカルか、日本的生き方、日本式経営はどうなったのか。情報が世界を駆け巡る時代にグローバル化は避けて通れない課題になったが、養老孟司さんは「今の日本は、どっしりと落ち着いて、ローカルを本気でやる時期だ」という。同感だ。

あの「Japan as no1」と言われた時、日本人の生き方、日本式経営が評価され日本の力を見せ付けていた時だったと思うが、いつの間にか日本人の生き方、日本式経営はどうしたんだと思っていた時、朝日新聞(2015.4.6)文化・文芸欄で養老孟司先生のインタビュー記事「自分とは 漱石も苦悩」という記事が目に止まった。

それによると養老先生は、春は出合いの季節だが待っているのは喜びだけではないと言い、夏目漱石を通じて現代社会を見つめ警鐘を鳴らす。漱石は49歳で亡くなるまで胃潰瘍に苦しんだそうだが漱石の中で西洋文明の個と日本の文化がぶつかり「自分とは」と悩んだが、最後は日本に戻ってきた。この漱石の悩みは今の日本社会にも重なるのだという。

そしてグローバル基準には矛盾も多い。そんな中でローカルを突き詰めてみたら良い。今の日本は、どっしり落ち着いて、ローカルを本気でやるときだ」と提案する。

グローバル、グローバル化しか日本の生きる道はないとせっつかされるが、ローカルに生きようという提案に賛成だ。

日本式生き方、日本式経営がどこに行ったのか。

情報番組では健康食として和食が見直されていると言うし、シャワーよりもお風呂の方が体も温まり睡眠にも良いと言う。多くの企業が海外へ移転するが、少人数の家内工業的企業では、どこにも負けない技術と従業員の愛社精神で好業績を続けており定年なんてないという。

養老先生は科学者は英語で論文を書き、海外の科学誌に発表するのがグローバル基準になっているが、自分は日本語しか書かないローカルだという。それでも「バカの壁」は600万部売れたベストセラーだ。英語で書いたら売れなかったとも言う。

楽天は経営のグローバル化に照らして会議を英語でやるという。でも通販は日本語ではないか。英語で書いた通販だったらこんなにも繁盛していないのではないか。

アメリカで経営学、経済を学んで帰ってきた人たちがグローバル化を推し進めるが、日本の良き雇用環境、日本式経営の良い面をなくしているのではないか。大企業が国際社会での競争力を付けるにはこれしかないという。

政府は、世界トップレベルの雇用環境作りだとして脱時間給制度など労働基準法の改正をしたり、海外から企業を呼び込むために法人税などの優遇策を進める。

円為替、株価もグローバル化が直撃している。円は本当に日本の経済力を反映しているのか。株価は日本人は長期に保持し企業を育てる意思があったが、今は海外ファンドの意向が大きく、コンピューターによる瞬時の売買で大きな収益を上げる値動きが激しい。

日本の経営も株の配当の大きい企業の経営者はメデイアで高く評価される。だから固定費のしめる割合の大きい人件費をカットするためにアウトソーシングを進める。

安倍政権の進める経済政策も課題が多い。

IMFも指摘しているように経済成長率は芳しくなく、内需拡大もままならない。前川レポート、21世紀版前川レポートでも内需拡大で専門家による提言がされたようだがことごとく失敗したようだ。その要因の一つに企業の儲けを家計に再分配するシステムが出来ていなかったこと、経営者が拒んだことだという。

養老先生はグローバルの世界とローカルな世界では論理が全く違っているともいう。日本でグローバルというのは基準が曖昧だ。もっとローカルを突き詰めたらどうかと提言する。

私には日本的生き方、日本的経営を見直したらどうかと聞こえた。


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