2019年8月18日日曜日

今日の新聞を読んで(283):政治にこそシュンペーターの「創造的破壊」が必要なのだが


シュンペーターの言う「創造的破壊」こそこれからの政治には必要ではないか。読売新聞の「経済学×現代」シリーズが面白い。16日のケインズの「美人投票」理論、17日のシュンペーターの「創造的破壊」は、それに関連する専門家のコメントをあわせ経済分野ばがりでなく、政治の分野でも警告を与えている。

シュンペーターの「創造的破壊」は、資本主義経済では新しい商品、生産技術そして新しい市場創出は本質的なものでイノベーションによってもたらされる。そして既存の産業や制度が淘汰されるのだ(読売新聞2019.8.17、「技術革新 ITの大破」)。

経済関連の書籍を読んでいると必ず目にする「創造的破壊」理論だが、久しぶりに目にした。

生産工程のイノベーション、自動化で日本の自動車産業は世界に確固たる地位を確保した。工場見学で安全柵に囲まれた中で台車で動く車の車体に数基の自動溶接機が火花を散らしていた。コンベアーに乗ったまま部品を作業員が取り付けていく。無駄を省くためにトヨタの「かんばん方式」が有名になり他の分野でも採用された。

半導体技術、AI、人工知能は人間に仕事にとって変わる可能性が大になってきたらしいが、では人間はどんな仕事が残されているのか。GAFAと呼ばれる米IT巨大企業に誕生は市場を大きく変えようとしている。半導体にいたっては日本のお家芸だったが日本を代表する大企業が経営不振で海外企業に安くたたかれて身売りになった。

いろんなことがあいまって失業者の増加、収入減による格差拡大、家計への再分配の不備が大きな社会問題になってきた。

法政大学の米倉教授は、これらに関して資本主義の進歩に伴って生じる格差や貧困のような社会課題にもビジネスの手法で取り組む新たなイノベーションで解決していく必要があるという。

さらに世界的に台頭しているポピュリズムに対してもイノベーションには自由な精神が必要で、自由を求める事業家がこのような流れに歯止めをかけてくれないかと期待しているとも言う。

社会的課題ともなると政治の分野でもイノベーションが必要だ。特に長い自民党政権に取って代わるには野党が有権者に何を訴えるかだ。

過去にも村山政権、細川政権、民主党政権で「地方分権化」「政治改革」が訴えられたが実現した例は多くない。

地方分権もなかなか進まないが成功した例もある。村山内閣のとき多くの自治体経験者が権力の中枢に名を連ね、初めて動き出したのが地方分権改革だったという(朝日新聞2019.8.17 書評欄 「野党が政権に就くとき」中野晃一著 宇野東大教授評)。

今日、野党の存在意義や政権交代の必要性が改めて問われているというのだ(同上)。

もう一つ日本新党などによる細川政権の事例でも、「地方分権」「政治改革」を抱え古い政治のルールを変えようとした。公募制で地縁、血縁、資金がなくても政治を目指せる道を探り、女性の登用を掲げた。しかし衆院の選挙制度改革にこぎつけたが内部抗争に明け暮れて対人、地方分権は実を結ばなかった(朝日新聞2019.8.18 日曜に想う「瞠目のブーム 今も昔も後が肝心」)。

その後の民主党政権もそうだったように、高い分だけ民意の期待は容易に失望へと転じた(同上)。

その民主党の失政はなかなか有権者の頭から払拭できない。メデイアの世論調査では「他の内閣よりマシ」だから政権支持だし、安倍総理からは「悪夢のような民主党政権」と揶揄される始末だ。

今も野党の統一会派構想ももたもたしている。野党が合流し再び政権交代する可能性は低い。だとすると自民党内の政権交代になるが、ポスト安倍は誰か

最近のメデイアの見方では、岸田さんは禅譲を狙っているし、安倍さんの岸田さんを念頭に置いた発言をしているというが、どうか。「令和おじさん」として一躍名をはせ、参院選でも活躍した菅さんの存在が大きくなってきた。石破さんは永田町では人気がない。小泉さんの話もあるが若すぎる。年代が一挙に若くなることには自民党内で反対があるだろう。

今の日本では経済も政治も「創造的破壊」は難しい。


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